
Cheap Trick(チープ・トリック)のライブアルバム『Cheap Trick at Budokan』(チープ・トリック at 武道館)は、バンドのキャリアを決定づけた記念碑的な作品です。日本ではアメリカに先駆け1978年にリリースされました。
コンセプトと背景
『チープ・トリック at 武道館』は、1978年4月28日と30日に東京の日本武道館で行われたチープ・トリックのライブ録音をもとに制作されました[1][3]。当初は日本市場限定のリリースとして企画されたものでしたが、予想外の展開を見せることになります[2][5]。
バンドは当時、アメリカ本国では苦戦していましたが、日本では既に人気を博していました。日本での成功を受けて、現地ファンへの感謝の意を込めてこのライブアルバムが企画されたのです[6]。
音楽性とサウンドの特徴
『チープ・トリック at 武道館』の最大の特徴は、スタジオ録音とは一線を画す生々しいライブ感です。バンドのエネルギッシュなパフォーマンスと、熱狂的な観客の歓声が一体となって、独特の臨場感を生み出しています[1][4]。
アルバムには「I Want You to Want Me」「Surrender」「Ain't That a Shame」といったヒット曲が収録されており、これらの楽曲がライブならではの迫力で演奏されています[1][3]。特に「I Want You to Want Me」のライブバージョンは、スタジオ録音を大きく上回る人気を獲得しました[2]。
制作時のエピソード
興味深いことに、プロデューサーのジャック・ダグラスによると、実際にアルバムに使用された音源は武道館ではなく、大阪での公演のものだったそうです[3]。これは、武道館での録音が使用に適さないと判断されたためでした。
また、バンドメンバーは当初、録音を聴いて「ひどい音だ」と思ったそうですが、結果的にはこの生々しさが魅力となりました[2]。

参加ミュージシャン
アルバムに参加したのは、チープ・トリックのオリジナルメンバー4人です:
- ロビン・ザンダー(Robin Zander):ボーカル、リズムギター
- リック・ニールセン(Rick Nielsen):リードギター
- トム・ピーターソン(Tom Petersson):ベース
- バン・E・カルロス(Bun E. Carlos):ドラムス
発表時の反響と影響
『チープ・トリック at 武道館』は、予想を大きく上回る成功を収めました。アメリカでは輸入盤が約3万枚売れ、1979年2月に正式リリースされると、ビルボードチャートで4位まで上昇。300万枚以上を売り上げ、バンド最大のヒット作となりました[2][3]。
このアルバムの成功により、チープ・トリックは一躍スターダムに躍り出ました。オープニングアクトからヘッドライナーへと地位を上げ、バンドの知名度は大きく向上しました[6]。

特筆すべき点
- 日本での人気が逆輸入される形で、アメリカでブレイクするという珍しいパターンを示しました[5][6]。
- 70年代のライブアルバムブームの中で、コンパクトな1枚組の形式を採用し、成功を収めました[1]。
- ハードロックとポップの要素を巧みに融合させた音楽性は、後のロックバンドに大きな影響を与えました[3]。
- 2011年に米国議会図書館の国家録音登録簿に登録され、文化的・歴史的に重要な録音として認められました[3]。
『チープ・トリック at 武道館』は、偶然と才能が重なって生まれた奇跡的なアルバムと言えるでしょう。バンドの真骨頂であるライブパフォーマンスを見事に捉え、彼らの音楽性を世界に知らしめた記念碑的な作品として、今もなお高く評価されています。
Citations:
[1] https://eddiesrockmusic.wordpress.com/2017/09/13/c-is-forcheap-trick-at-the-budokan/
[2] https://ultimateclassicrock.com/cheap-trick-at-budokan/
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/Cheap_Trick_at_Budokan
[4] https://www.popmatters.com/184486-counterbalance-cheap-trick-at-budokan-2495630879.html
[5] https://www.inthestudio.net/online-on-demand/cheap-trick-at-budokan/
[6] https://www.loudersound.com/features/cheap-trick-at-budokan
[7] https://ifmyrecordscouldtalk.com/2018/07/19/classic-album-cheap-trick-at-budokan/
[8] https://consequence.net/2021/05/cheap-trick-at-budokan-round-table-discussion/
[9] https://progrography.com/cheap-trick/review-cheap-trick-at-budokan-1978/
[10] https://www.popmatters.com/cheaptrick-atbudokan-2495855845.html