ニック・デカロ『イタリアン・グラフィティ』
ニック・デカロ(Nick De Caro)『イタリアン・グラフィティ』(Italian Graffiti)
スポンサーリンク

Nick DeCaro(ニック・デカロ)のアルバム『Italian Graffiti』(イタリアン・グラフィティ)は、1974年にリリースされた記念碑的な作品で、AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)の誕生に大きく寄与したと評価されています[1]。

コンセプトと音楽性

このアルバムのコンセプトは、当時流行していたカーペンターズやビーチ・ボーイズのようなポップ・ミュージックに、より大人っぽいサウンド、具体的にはジャズやソウル・ミュージックのエッセンスを加えることでした[1]。ニック・デカロ自身の言葉によると、「70年代前半に流行していたポップ・ミュージックに、もっと大人っぽいサウンド、つまりジャズやソウル・ミュージックのエッセンスを加えてみたら……というコンセプトで出来上がった」とのことです[1]。

サウンドの特徴

『イタリアン・グラフィティ』は、50年代と60年代のロック、ジャズ、ポップの要素を融合させた、軽やかで幸せな雰囲気のアルバムとして描写されています[2]。アルバム全体を通して、洗練された演奏とアレンジが特徴的です。

具体的な特徴として以下が挙げられます:

  1. ボサノヴァやジャズのリズムを基調としたトラック
  2. 幻想的なヴィブラフォンやストリングスの使用
  3. 多重コーラスによる美しいハーモニー
  4. ジャジーでクールなギターワーク
  5. フルートやサックスのソロによる洗練された演奏

例えば、オープニング曲「Under The Jamaican Moon」では、クワイエットなボサノヴァのリズムに、ジャジーで神秘的なギター、幻想的なヴィブラフォン、そしてストリングスが絶妙に組み合わされています[4]。

制作と参加ミュージシャン

アルバムはトミー・リピューマ(Tommy LiPuma)とニック・デカロの共同プロデュースで、エンジニアにはアル・サミット(Al Schmitt)が起用されました[1][4]。参加ミュージシャンには、当時の一流プレイヤーが名を連ねています:

  • デイヴィッド・T・ウォーカー(David T. Walker)、アーサー・アダムス(Arthur Adams):ギター
  • ウィルトン・フェルダー(Wilton Felder)、マックス・ベネット(Max Bennett):ベース
  • ポール・ハンフリー(Paul Humphrey)、ハーヴィー・メイソン(Harvey Mason):ドラムス
  • バド・シャンク(Bud Shank):フルート、アルトサックス
  • プラス・ジョンソン(Plas Johnson):アルトサックス

これらのミュージシャンによる演奏は、ジャズやフュージョンの要素を巧みに取り入れた洗練されたものとなっています[1][4]。

楽曲選択とアレンジ

収録曲とその特徴

アルバムには、スティーヴィー・ワンダー、ジョニ・ミッチェル、トッド・ラングレンなど、多様なアーティストの楽曲がカバーされています。ニック・デカロのアレンジの才能は、これらの楽曲を違和感なく同居させる点で光っています。

アルバムには全10曲が収録されており、それぞれが異なる魅力を持っています。以下にいくつかの注目すべき曲を紹介します。

Side 1

  1. Under The Jamaican Moon(ジャマイカの月の下で) - 4:47
  2. Happier Than The Morning Sun(輝く太陽) - 4:22
  3. Tea For Two(二人でお茶を) - 3:57
  4. All I Want(オール・アイ・ウォント) - 3:24
  5. Wailing Wall(ウェイリング・ウォール) - 4:37

Side 2

  1. Angie Girl(アンジー・ガール) - 3:53
  2. Getting Mighty Crowded(ゲッティング・マイティ・クラウデッド) - 2:25
  3. While The City Sleeps(町はねむっているのに) - 3:49
  4. Canned Music(キャンド・ミュージック) - 3:05
  5. Tapestry(タペストリィ) - 5:00
  • Under the Jamaican Moon: この曲は、リラックスしたリズムと美しいメロディが特徴で、リスナーを心地よい気分にさせます。ニック・デカロの柔らかいボーカルと洗練されたアレンジが絶妙にマッチしています。

発表時の反響と評価

『イタリアン・グラフィティ』は、アメリカでは当初あまり注目されませんでしたが、国際的にはニック・デカロをポップ・アイコンとして確立する重要な作品となりました[3]。

現在では、このアルバムは「砂漠の島の1枚」と呼ばれるほどの名盤として高く評価されています[6]。音楽評論家Dave Marshは、このアルバムを1001枚の最高のシングルの中で11位にランク付けし、「ロックンロールが無から何かを生み出す能力の最も深遠で崇高な表現」と評しています[7]。

特筆すべき点

  1. AORの先駆け:このアルバムは、後のAORシーンを形作る重要な作品として認識されています[1][11]。
  2. プロデューサーとしての転機:『イタリアン・グラフィティ』は、ニック・デカロのレコーディング・アーティストとしてのキャリアを確立させた作品でした[1]。
  3. アレンジャーとしての評価:このアルバムを通じて、ニック・デカロはアレンジャーとしての評価を高めていきました[12]。
  4. 音楽的多様性:ジャズ、ソウル、ポップ、ロックなど、様々なジャンルの要素を巧みに融合させた点が特徴的です[2][6]。
  5. 洗練された制作:一流のミュージシャンと制作陣による高品質な音楽制作が、アルバムの魅力を高めています[1][4]。

『イタリアン・グラフィティ』は、70年代のポップミュージックに大人の洗練さを加えた革新的な作品として、今もなお多くの音楽ファンに愛され続けています[1][6][14]。

Citations:
[1] https://warmbreeze.jp/music/nick-decaro-italian-graffiti
[2] https://www.discogs.com/release/883801-Nick-DeCaro-Italian-Graffiti
[3] https://spectropop.com/NickDeCaro/
[4] https://sound.jp/uni_pho/top_page/home/menu/genre/n_dcr.html
[5] https://www.recordcity.jp/en/catalog/3242987
[6] https://westcoastsoul.de/the-five-west-coast-classics-of-the-month-june-2021
[7] https://en.wikipedia.org/wiki/Louie_louie
[8] https://www.hmv.co.jp/en/artist_Nick-Decaro_000000000009340/item_Italian-Graffiti-Limited-Papersleeve_4095619
[9] https://ciruelorecords.com/?pid=183689011
[10] https://note.com/mizoko/n/n86b54a2b61f6
[11] https://tower.jp/item/3095200
[12] https://eastzono.seesaa.net/article/474443406.html
[13] https://www.discogs.com/ja/release/883801-Nick-DeCaro-Italian-Graffiti
[14] https://www.hmv.co.jp/en/artist_Nick-Decaro_000000000009340/item_Italian-Graffiti_5037675

スポンサーリンク

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事