
Chick Corea(チック・コリア)のアルバム『Return to Forever』(リターン・トゥ・フォーエヴァー)は、1972年にECMレーベルからリリースされた画期的なジャズフュージョン作品です。このアルバムは、同名のバンド「Return to Forever」のデビュー作としても機能しました。
コンセプトと音楽性
『Return to Forever』は、ジャズ、ラテン音楽、フュージョンを融合させた革新的なサウンドを特徴としています。コリアは、より幅広い聴衆に受け入れられる音楽を作ることを目指し、このアルバムを通じてその vision を実現しました[1][6]。
アルバムの音楽性は以下の特徴を持っています:
- Fender Rhodesエレクトリックピアノを中心とした独特のサウンド
- ブラジルやラテンの影響を受けたリズム
- ジャズとフュージョンの要素の融合
- エアリーで神秘的な雰囲気
サウンドの特徴
『Return to Forever』のサウンドは、各楽器が小さな合唱団の声のように機能する独特のメッシュを形成しています[10]。具体的には:
- チック・コリアのエレクトリックピアノによるアクロバティックな演奏
- スタンリー・クラークのスムーズなベースライン
- フローラ・プリムの印象的な(時に歌詞のない)ボーカル
- アイアイート・モレイラ(フローラ・プリムの夫)のリズミカルなパーカッション
- ジョー・ファレルのサックスとフルートによる風のような演奏
参加ミュージシャン
アルバムには以下のミュージシャンが参加しています[1][3]:
- チック・コリア(Chick Corea) - エレクトリックピアノ(Fender Rhodes)
- スタンリー・クラーク(Stanley Clarke) - ウッドベース(4)、エレクトリックベース(1-3)
- ジョー・ファレル(Joe Farrell) - ピッコロ、フルート、ソプラノ・サクソフォーン
- アイアート・モレイラ(Airto Moreira) - ドラムス
- フローラ・プリム(Flora Purim) - ボーカル、パーカッション
制作エピソード
アルバムは1972年2月2日と3日にニューヨークのA&Rスタジオで録音されました[1][3]。コリアは、Miles Davisのフュージョン時代を経て、より大衆に受け入れられる音楽を目指してこのプロジェクトを立ち上げました[6]。
発表時の反響
『Return to Forever』は、クラシックとジャズファンから熱狂的に迎えられました[8]。アルバムは、ジャズフュージョンの古典的作品として広く認められ、コリアのキャリアにおける重要な転換点となりました。
ジャケットデザイン
アルバムのカバー写真はMichael Manoogianが担当しました[3]。
特筆すべき点
- アルバムのタイトル曲「Return to Forever」は、Fender Rhodesのヴァンプで始まり、幽玄なメロディーが加わり、歌詞のないボーカルで強調されています[1]。
- 「Crystal Silence」は、アルバムの中でも特に印象的な曲で、瞑想的なピアノワークとチベタンベルの効果が特徴です[1]。
- 「Sometime Ago – La Fiesta」は23分を超える野心的な楽曲で、スペイン風のメロディーから始まり、フラメンコスタイルで締めくくられます[1]。
- このアルバムは、Chick Coreaの後のキャリアに大きな影響を与え、Return to Foreverバンドの方向性を決定づけました[6][9]。
- 『Return to Forever』は、ジャズとラテン音楽を融合させた芸術的完成度の高い作品として評価されています[1]。
このアルバムは、チック・コリアの創造性と音楽的ビジョンを示す重要な作品であり、ジャズフュージョンの歴史に残る名盤として今も多くのリスナーに愛されています。
トラックリスト
Side 1
- Return to Forever - 12:06
- Crystal Silence - 6:59
- What Game Shall We Play Today(Corea, Neville Porter) - 4:30
Side 2
- Sometime Ago - La Fiesta(Corea, Porter, Stanley Clarke, Joe Farrell) - 23:13
アルバムレビュー
チック・コリア(Chick Corea)の『リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return to Forever)』です。
歴史に残る名盤ですね。
十代の頃に買った、ジャズ? のレコードは数少ないですが、本作はそうした中の1枚。
全編を通してチック・コリアのエレクトリック・ピアノがフューチャーされ「エレピもいいんじゃないの」と思わせてくれます。
高校生の頃はジャズの何たるかもよく知らず、自分にとってはクラシックより遠い存在でした。
当時のジャズに対してのイメージは、大人のための音楽、そしてジャズイコールカッコイイなと。
でも、聴いてもつまんないなと。
フリージャズなんかのせいもあったかもしれません。
そんな、自分にとってのジャズという音楽に風穴を開けたのが本作でした。
自分だけではなく、これまで、ゴリゴリのジャズに疲れたジャズファンやジャズを聴いたこともないという音楽好きをも取り込んだ作品だったと思います。

初めて聴いたときは、衝撃的だったなぁ。
「これが、ジャズなのか?」と…。
正確にいうなら、ジャズではなく、後に「クロスオーバー」や「フュージョン」といわれるようになった作品ですが…。
アルバム1曲目の「Return to Forever」は長尺かつ複雑な構成でとらえどころがなく、決して聴きやすい曲とはいえません。
そんな訳で普通の人には、あまり、おススメしません。
しかし、ピンク・フロイドで耐性のあった自分は「こういうのも悪くないなぁ」と。
緊張と緩和、そしてフローラ・プリムのスキャットや叫び声にも聞こえる楽器のような声が効いています。
おススメは3曲目の「What Game Shall We Play Today」でしょう。
この曲なら、誰にでもおススメできます。
南国の楽園を思わせるような軽やかで明るい楽曲。
ジャズというより、ポップスといっていいような感じすらします。
ヴォーカルのフローラ・プリムの歌声とジョー・ファレルのフルートの軽やかなこと。
この曲は、むかし日産のクルマのCMでも使われました。
カモメが海上を滑空するジャケットは、通称「カモメのチック」といわれデザインも印象的ですね。
(本当はカモメではなくカツオドリらしい…)
そんな訳で、ジャズはちょっと敷居が高いなという人は、試しに聴いてみてください。
追記:2021年2月12日
2021年2月9日、チック・コリアはがんで亡くなりました。
79歳だったそうです。
合掌。
Citations:
[1] https://www.narrativepathsjournal.com/chick-corea-return-to-forever/
[2] https://www.progarchives.com/album.asp?id=5306
[3] https://www.discogs.com/release/2271038-Chick-Corea-Return-To-Forever
[4] https://thevogue.com/artists/return-to-forever/
[5] https://en.wikipedia.org/wiki/Return_to_Forever_(Chick_Corea_album)
[6] https://jazztimes.com/features/profiles/return-to-forever-where-have-i-known-you-before/
[7] https://www.allaboutjazz.com/news/return-to-forever-the-complete-columbia-albums-collection/
[8] https://www.udiscovermusic.com/stories/chick-corea-return-to-forever-light-as-a-feather-review/
[9] https://chickcorea.com/bio/1972-78/
[10] https://insheepsclothinghifi.com/album/chick-corea-return-to-forever/