リターン・トゥ・フォーエヴァー『ライト・アズ・ア・フェザー』

『Light as a Feather』(ライト・アズ・ア・フェザー)は、チック・コリア率いるリターン・トゥ・フォーエヴァー(Return to Forever)の2作目のアルバムであり、グループ名義としては初の作品です。1972年10月にロンドンのIBCスタジオで録音され、1973年にリリースされました[2][7]。
『Light as a Feather』のコンセプト
前作『Return to Forever』で提示されたリリカルでメロディアスなクロスオーバー・ジャズ路線をさらに発展させ、タイトル通り「羽のように軽い」サウンドと親しみやすさ、そしてバンドとしての一体感を強調した作品となっています[1][5]。
アルバムのコンセプトは、ジャズの即興性と技術的な高度さを保ちつつ、ブラジル音楽やラテンリズム、ポップス的なメロディを融合させることで、聴き手に新しいジャズの楽しさや美しさを届けることにありました[2][5]。
音楽性・サウンドの特徴
- クロスオーバー/ジャズ・フュージョンの金字塔
本作は、ジャズとブラジル・サンバのリズムを融合し、メロディアスでリリカルなサウンドスケープを創出しています。全体を通してフェンダー・ローズ・エレクトリックピアノの柔らかく温かい音色が中心に据えられ、そこにフローラ・プリムの透明感あるヴォーカル、ジョー・ファレルのフルートやサックス、スタンリー・クラークのうねるダブルベース、アイアート・モレイラのラテンパーカッションが重なります[2][3][7]。 - リズムの多様性とグルーヴ
サンバやボサノヴァ、ラテンジャズのグルーヴが全編を貫き、特にモレイラのパーカッションとクラークのベースが生み出すリズムセクションは極上のうねりを持っています[6]。 - 親しみやすさと複雑さの両立
技術的な難易度の高い演奏と、ポップで耳馴染みの良い旋律が共存しており、ジャズファンだけでなく幅広いリスナーにアピールする内容です[1][2]。 - 代表曲「Spain」
アルバムのラストを飾る「Spain」は、ホアキン・ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」のイントロを引用し、スペイン的情熱と現代ジャズの融合を果たした名曲。以降、世界中のジャズ・ミュージシャンによって演奏されるスタンダードとなりました[1][2][7]。
参加ミュージシャン
- チック・コリア(Chick Corea):Fender Rhodesエレクトリックピアノ、プロデューサー
- スタンリー・クラーク(Stanley Clarke):ダブルベース
- フローラ・プリム(Flora Purim):ヴォーカル、パーカッション
- ジョー・ファレル(Joe Farrell):フルート、ソプラノサックス、テナーサックス
- アイアート・モレイラ(Airto Moreira):ドラム、パーカッション[2][3][6][7]
このオリジナル・ラインナップは本作を最後に解散し、以降はよりエレクトリックかつロック色の強い新編成へと移行します[2][7]。
トラック・リスト
Side 1
- ユーア・エヴリシング(You're Everything) - 5:10
- ライト・アズ・ア・フェザー(Light as a Feather) - 10:54
- キャプテン・マーヴェル(Captain Marvel) - 4:52
Side 2
- 500マイルズ・ハイ(500 Miles High) - 9:05
- チルドレンズ・ソング(Children's Song) - 2:48
- スペイン(Spain) - 9:48
制作時のエピソード
- 本作は、ロンドンでのライブ・レジデンシー中に録音されました[5]。
- スタンリー・クラークにとっては、初めて本格的な作曲に挑戦したアルバムでもあり、タイトル曲「Light as a Feather」は彼の代表的な作品となりました[3]。
- フローラ・プリムのヴォーカルは、歌詞のある曲とスキャットが巧みに織り交ぜられ、独特の浮遊感と神秘性を演出しています[3][9]。
発表時の反響
- 『ライト・アズ・ア・フェザー』は米ビルボード・ジャズ・アルバム・チャートで6位を記録し、幅広い人気を獲得しました[2][7]。
- 1972年の『Playboy』誌ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞し、多くの音楽誌や評論家から「ジャズ史に残る名盤」として高く評価されています[7]。
- 『The Penguin Guide to Jazz Recordings』や『1,000 Albums to Hear Before You Die』など、数多くのガイドブックにも掲載されています[2][7]。
- 「Spain」は現在でも世界中のジャズ教育現場やプロの演奏家によって愛奏されており、ジャズ・スタンダードとしての地位を確立しています[2]。
特筆すべきこと
- ジャンルを超えた影響力
ジャズ・フュージョン、ラテンジャズ、クロスオーバーの発展に大きな影響を与え、後のフュージョン・バンドや現代ジャズにも多大なインスピレーションを与えました[2][5]。 - バンドの転機
本作を最後にオリジナル・メンバーが離脱し、コリアとクラークが中心となってよりエレクトリックなサウンドへと舵を切ることになります[2][7]。 - エレクトリック・ピアノの革新
チック・コリアのフェンダー・ローズ演奏は、エレピの新たな可能性を切り開き、以降のジャズ・フュージョンにおける標準となりました[1][8]。

まとめ
『ライト・アズ・ア・フェザー』は、リターン・トゥ・フォーエヴァーの初期の集大成であり、ジャズ・フュージョン史に燦然と輝く金字塔です。ブラジル音楽のリズム、リリカルなメロディ、革新的なエレクトリック・ピアノ、そしてバンド全体の卓越したアンサンブルが融合し、「羽のように軽い」サウンドの中に深い芸術性と喜びを宿しています。50年以上経った今も色褪せることなく、多くのリスナーやミュージシャンに影響を与え続けています[1][2][7]。



Citations:
- https://v-matsuwa.cocolog-nifty.com/blog/2024/01/post-cec9a3.html
- https://jazzdaily.blog/2024/12/20/light-as-a-feather-a-landmark-in-jazz-fusion/
- https://chickcorea.com/discography/light-as-a-feather/
- https://jazztimes.com/features/profiles/return-to-forever-where-have-i-known-you-before/
- https://www.udiscovermusic.com/stories/chick-corea-return-to-forever-light-as-a-feather-review/
- https://ameblo.jp/mohzq/entry-12121535214.html
- https://en.wikipedia.org/wiki/Light_as_a_Feather
- https://jazzjournal.co.uk/2023/05/28/jj-05-73-chick-corea-return-to-forever-light-as-a-feather/
- https://note.com/mizoko/n/nd035f425a39b
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%B6%E3%83%BC
- https://www.groovenutrecords.net/products/detail/12850
- https://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2024/04/post-da7e63.html
- https://la-belle-epoque.blog.jp/archives/2140820.html
- https://www.discogs.com/release/8538153-Chick-Corea-And-Return-To-Forever-Light-As-A-Feather
- https://fontsinuse.com/uses/33519/chick-corea-and-return-to-forever-light-as-a-
- https://ticro.com/products/c00001486
- https://www.youtube.com/watch?v=lPfOFZLHYTs
- https://www.youtube.com/watch?v=4EMpg8BQ6xM
- https://wfuv.org/blog/080818/return-return-forever