マッコイ・タイナー『フライ・ウィズ・ザ・ウインド』を聴く

マッコイ・タイナー『フライ・ウィズ・ザ・ウインド』を聴く
マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)『フライ・ウィズ・ザ・ウインド』(Fly With The Wind)

『Fly With The Wind』(フライ・ウィズ・ザ・ウインド)は、ジャズ・ピアニスト、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)が1976年にミルストーン・レーベルからリリースした9作目のアルバムです。

アルバムのコンセプト

最大の特徴は、ピアノ・トリオに加えてウッドウィンズやフルストリングス(弦楽セクション)を大胆に導入し、ジャズとクラシック音楽の融合=「サード・ストリーム」を志向した点にあります[1][2]。タイナーはこの作品で、従来のジャズの枠組みを超えた壮大なサウンドスケープを追求しました[2][3]。

音楽性とサウンドの特徴

  • オーケストレーション
    タイナーのピアノを中心に、ストリングスや木管楽器が重厚に重なり合うアレンジが特徴です。特に冒頭曲「Fly With The Wind」では、チェロの静かなソロから始まり、やがてダイナミックなリズムとともに壮大な展開を見せます[2]。
  • リズムとハーモニー
    ビリー・コブハムのポリリズミックなドラミング、ロン・カーターの堅実なベースが、タイナーのスパイラル状のアルペジオや厚みのあるハーモニーを支えています[1][2]。
  • フルートとラテン要素
    ヒューバート・ロウズのフルートが随所でフィーチャーされ、ドリーミーでメロディックなラインを奏でると同時に、ラテン的なリズムやサンバの要素も楽曲に溶け込んでいます[2][3]。
  • サウンドの印象
    全体としては「重くて太くてホット」なサウンドで、疾走感と爽快感、そしてクラシカルな荘厳さが共存しています[5]。

トラック・リスト

Side 1

  1. Fly With The Wind - 8:30
  2. Salvadore De Samba - 12:13

Side 2

  1. Beyond The Sun - 5:33
  2. You Stepped Out Of A Dream - 6:55
  3. Rolem - 5:43

参加ミュージシャン

  • McCoy Tyner(ピアノ)
  • Ron Carter(ベース)
  • Billy Cobham(ドラムス)
  • Hubert Laws(フルート、アルトフルート)
  • Paul Renzi(ピッコロ、フルート)
  • Raymond Duste(オーボエ)
  • Linda Wood(ハープ)
  • Guilherme Franco(タンバリン)
  • 弦楽セクション:Stuart Canin, Franklin Foster, Daniel Kobialka, Peter Schaffer, Edmund Weingart, Myra Bucky, Mark Volkert(ヴァイオリン)、Selwart Clarke, Daniel Yale(ヴィオラ)、Sally Kell, Kermit Moore(チェロ)[1][2][6]。

制作時のエピソード

本作は1976年1月、カリフォルニア州バークレーのファンタジー・スタジオで録音されました。プロデューサーは名匠オリン・キープニュース。ストリングスや管楽器を含む十数名のミュージシャンが一つのスタジオに詰め込まれ、オーバーダビングなしで一発録りされたという逸話が残っています。この規模のアンサンブルを同時に録音したこと自体が驚異的で、録音現場は熱気に包まれていたと伝えられています[3]。

発表時の反響

発表当時から「ジャズとクラシックの融合」という野心的な試みが高く評価されました。AllMusicのスコット・ヤノウは「タイナーのオーケストラルなピアノとストリングスの融合は見事で、驚きと論理的な成功を両立している」と評しています。Jazz Journalでは「厚みのあるテクスチャとメロディ、リズムの複雑さ、そして大胆さと生命力に満ちている」と絶賛されました[1]。一方で、ストリングスのアレンジがやや時代を感じさせるという指摘もありましたが、繰り返し聴くことでその効果の高さが理解できるとされています[3]。

ジャケットデザイン

ジャケットに使われている山の写真は、著名な風景写真家ガレン・ロウェル(Galen Rowell)によるものですが、しかし、信頼できる英語サイトや公式な情報源において、この写真が具体的にどの山であるかは明記されていません[4]。

特筆すべきこと

  • ジャンル越境の成功例
    ジャズ・ピアニストによるストリングスとの融合は失敗例も多い中、本作はそのバランス感覚と完成度の高さで異彩を放っています[2][3]。
  • タイナーの作編曲家としての力量
    自身のピアノだけでなく、アンサンブル全体をコントロールする作編曲能力が高く評価されています[2]。
  • コルトレーン以後のキャリアの頂点
    タイナーの「ポスト・コルトレーン期」の代表作の一つとされ、彼の音楽的探究心の結晶です[2][3]。

『Fly With The Wind』は、マッコイ・タイナーが持つスピリチュアルなピアノ、リズミカルな推進力、そしてクラシック音楽的な壮大さが見事に融合した傑作であり、ジャズ史における重要なマイルストーンといえるでしょう。[1][2][3]

レビュー

マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)の『フライ・ウィズ・ザ・ウインド(Fly with the Wind)』のです。
ジャズにしては珍しくストリングスが入った1枚。
ジャケットもジャズらしからぬ、アルプス山脈かロッキー山脈、それともヒマラヤかといった雄大で荘厳な風景。

最初にチェロのソロによる静かな入りを聴いたときは「これってクラシック?」と一瞬、思ったが、その後に待っていたのはビリー・コブハブのドラムとタイナーのピアノがガンガン引っ張る熱い演奏です。
なんといっても楽曲がカッコイイ。

音もストリングスや管楽器が幾重にもかさなって重厚。
70年台の半ばの作品のせいかフュージョンのテイストも感じます。
ヒュバート・ロウズのフルートが結構、フューチャーされており、なんとなくチック・コリアのリタン・トゥー・フォーエバーが頭に浮かびました。
でもリタン・トゥー・フォーエバーとは対極にあるようなアルバムです。

リタン・トゥー・フォーエバーが軽くて細やかでクールなら、このアルバムは重くて太くてホット。
1曲目のタイトル曲はアマチュアのビッグバンドがストリングスのパートをホーンに編曲してライブで取り上げそうな感じがします。

『フライ・ウイズ・ザ・ウインド』というタイトルも、なんとなくアマチュアがつけそうなタイトルだと思いませんか?
本当のところは、よく知りませんが…。
タイナーがコルトレーンのアルバムで弾くクールなピアノも好きですが、どっか吹っ切れたように弾きまくるこのアルバムも結構、好きです。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Fly_with_the_Wind
  2. https://www.allaboutjazz.com/fly-with-the-wind-mccoy-tyner-concord-music-group-review-by-glenn-astarita
  3. https://www.allaboutjazz.com/fly-with-the-wind-mccoy-tyner-concord-music-group-review-by-graham-l-flanagan
  4. https://www.newdirectionsinmusic.com/mccoy-tyner-fly-with-the-wind/
  5. https://note.com/fueobake0509/n/n2cdafe19cdaa
  6. https://www.youtube.com/watch?v=UZIXDTH-sLA
  7. https://www.youtube.com/watch?v=_lt-zfSX_xw
  8. https://www.allmusic.com/album/fly-with-the-wind-mw0000188866
  9. https://www.reddit.com/r/LetsTalkMusic/comments/xwl0dw/album_art_that_perfectly_captures_the_sound_of/
  10. https://www.pickledpriest.com/single-post/album-cover-story-5-do-the-scorpions-shock-you-like-a-hurricane-or-merit-a-total-blackout
  11. https://www.npr.org/2008/09/12/94547798/mccoy-tyner-on-piano-jazz
  12. https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mA_eZJSXynfZewHJFRRMBcK9-f5068Alw
  13. https://note.com/tatsuyasato/n/n22f0f83f6cd7
  14. https://masque-musik.tea-nifty.com/progre/2008/02/fly_with_the_wi.html
  15. https://albumartexchange.com/covers/250918-fly-with-the-wind-12?q=jdundas3&fltr=UPLOADER&sort=ARTIST&status=RDY&size=any&page=38
  16. https://www.discogs.com/release/6008153-McCoy-Tyner-Fly-With-The-Wind
  17. https://www.dustygroove.com/item/45395/McCoy-Tyner:Fly-With-The-Wind
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