サラ・ヴォーン『枯葉』

サラ・ヴォーン『枯葉』
サラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)『枯葉』(Crazy and Mixed Up)

Sarah Vaughan(サラ・ヴォーン)の『Crazy and Mixed Up(クレイジー・アンド・ミックスド・アップ)』(邦題:枯葉)は、1982年に発表されたスタジオ・アルバムで、彼女自身がプロデュースを手がけています。

コンセプト

アルバム全体を通じて、「ジャズ・ヴォーカルの円熟と自由な表現」を追求した作品であり、スタンダードナンバーの新たな解釈や、即興性に富んだパフォーマンスが際立っています[2][3][5]。

特に注目すべきは、「Autumn Leaves(枯葉)」におけるアプローチです。一般的なメロディや歌詞を排し、完全にスキャット(歌詞のない即興的なヴォーカル)で構成されており、原曲の面影すら感じさせない大胆なアレンジがなされています[2][4][5]。このように、既存の楽曲を素材にしながらも、サラ・ヴォーンならではの独自性と即興性を打ち出すことが、本作の大きなコンセプトとなっています。

音楽性・サウンドの特徴

  • 円熟したヴォーカル:サラ・ヴォーンの声は本作でも「奇跡的」と評されており、40年のキャリアを経てもなお力強く、しなやかで、深みのある表現力が際立っています[3][4][5]。
  • スキャットの妙技:「Autumn Leaves」では、ジョー・パスのギターとサラのスキャットが絶妙に絡み合い、ストックフレーズに頼らない即興的なやり取りが展開されています[4][5]。
  • ピアノとのデュオ:「You Are Too Beautiful」では、ローランド・ハナとのデュオで録音されており、ヴォーカルとピアノの緊密な対話が聴きどころです[2]。
  • バンド・サウンドの一体感:全編を通じて、サイドメンの演奏が高クオリティで、予定調和に陥らない緊張感と自由さが保たれています[4]。

参加ミュージシャン

  • サラ・ヴォーン(Sarah Vaughan):ヴォーカル
  • ローランド・ハナ(Roland Hanna):ピアノ
  • ジョー・パス(Joe Pass):ギター、#7, #8を除く全曲
  • アンディ・シンプキンス( Andy Simpkins):ダブル・ベース、#8を除く全曲
  • ハロルド・ジョーンズ(Harold Jones):ドラムス、#8を除く全曲[1][2][5]

このメンバーは、いずれもジャズ界で高い評価を受ける実力派であり、特にジョー・パスのギターとローランド・ハナのピアノは、サラのヴォーカルと対等に渡り合う存在感を発揮しています。

制作時のエピソード

  • サラ・ヴォーン自身がプロデュースを担当し、サウンドだけでなくジャケット写真やアルバムタイトルも自ら決定したと伝えられています[2]。
  • 録音は1982年3月1日・2日にカリフォルニア州ハリウッドで行われました[2]。
  • ノーマン・グランツ(Norman Granz、Pablo Recordsの創設者)によると、サラは本作で自分の芸術性を最大限に発揮し、細部にまでこだわりを持って制作に臨んだとされています[2]。

収録曲

Side 1

  1. I Didn't Know What Time It Was
  2. That's All
  3. Autumn Leaves
  4. Love Dance
  5. The Island
  6. Seasons
  7. In Love in Vain
  8. You Are Too Beautiful

Side 2

  1. I Didn't Know What Time It Was
  2. That's All
  3. Autumn Leaves
  4. Love Dance
  5. The Island
  6. Seasons
  7. In Love in Vain
  8. You Are Too Beautiful

発表時の反響

  • アメリカでは『ビルボード』ジャズ・アルバム・チャートで22位を記録しました[2]。
  • 第26回グラミー賞では「最優秀女性ジャズ・ボーカル・パフォーマンス賞」にノミネートされ、業界内外で高く評価されました[2][3]。
  • AllMusicのスコット・ヤナウは「彼女の歌声はしばしば、ほとんど奇跡と言っていい状態にある」と絶賛し、The Penguin Guide to Jazz Recordingsも「Pabloレーベルでのベスト」と評しています[3]。

特筆すべきこと

  • 晩年の傑作:サラ・ヴォーンのキャリア晩年における代表作であり、ヴォーカリストとしての円熟と即興性の高さが両立したアルバムです[5]。
  • スキャットの名演:「Autumn Leaves」でのスキャットは、ジャズ・ヴォーカル史上でも屈指の名演とされ、多くのリスナーに衝撃を与えました[4][5]。
  • 自由な表現:ヴォーカル・アルバムにありがちな予定調和を打破し、サイドメンとのインタープレイ(即興のやり取り)がアルバム全体を通じて高いレベルで展開されています[4]。
  • 自己プロデュース:サラ自身がプロデュースを手がけたことで、彼女の芸術的意図がダイレクトに反映された作品となっています[2]。

まとめ

『Crazy and Mixed Up』は、サラ・ヴォーンの成熟したヴォーカルと、名手たちによる即興性豊かな演奏が融合した、80年代ジャズ・ヴォーカルの金字塔的作品です。特に「Autumn Leaves」におけるスキャットは、ジャズ・ヴォーカルの自由さと深さを象徴する名演として、今なお高く評価されています[2][3][4][5]。

Citations:

  1. https://www.allmusic.com/album/crazy-and-mixed-up-mw0000649764
  2. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%AF%E8%91%89_(%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%A0)
  3. https://en.wikipedia.org/wiki/Crazy_and_Mixed_Up
  4. https://ameblo.jp/mohzq/entry-12368605040.html
  5. https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/3526
  6. https://www.albumoftheyear.org/album/89076-sarah-vaughan-crazy-and-mixed-up.php
  7. https://www.discogs.com/ja/release/2067234-Sarah-Vaughan-Crazy-And-Mixed-Up
  8. https://www.wikiwand.com/en/articles/Send_In_the_Clowns_(1981_Sarah_Vaughan_album)
  9. https://elusivedisc.com/sarah-vaughan-crazy-and-mixed-up-pablo-series-180g-lp/
  10. https://www.waxpend.com/items/17628?page=260
  11. https://www.discogs.com/ja/release/3462226-Sarah-Vaughan-Crazy-And-Mixed-Up
  12. https://mdb.tower.jp/release/11218904/Crazy-%EF%BC%86-Mixed-Up
  13. https://www.dustygroove.com/item/429606/Sarah-Vaughan:Crazy-Mixed-Up?cat=78&format=vinyl&page=39&alpha=j&sort_order=artist
  14. https://music.apple.com/jp/album/sarah-vaughan-in-hi-fi/164128277
  15. https://www.recordcity.jp/catalog/265315
  16. https://wikipedia.nucleos.com/viewer/wikipedia_en_all/A/The_Explosive_Side_of_Sarah_Vaughan
  17. https://www.discogs.com/master/211483-Sarah-Vaughan-Crazy-And-Mixed-Up
  18. https://www.discogs.com/release/2067234-Sarah-Vaughan-Crazy-And-Mixed-Up
  19. https://www.discogs.com/release/3462226-Sarah-Vaughan-Crazy-And-Mixed-Up
  20. https://www.organissimo.org/forum/topic/32814-sarah-vaughan/

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