チャーリー・ヘイデン『クロースネス』

チャーリー・ヘイデン『クロースネス』
チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden)『クロースネス』(Closeness)

『Closeness』(クロースネス)は、Charlie Haden(チャーリー・ヘイデン)が1976年に発表した、全曲がデュオ形式で構成されたアルバムです。

『Closeness』のコンセプト

ヘイデンはこの作品で、自身が深くリスペクトし、長い交流を持つ4人のミュージシャン――キース・ジャレット(ピアノ)、オーネット・コールマン(アルトサックス)、アリス・コルトレーン(ハープ)、ポール・モチアン(パーカッション)――と、それぞれ1曲ずつデュオを披露しています[1][4][5]。

「Closeness(親密さ)」というタイトルが示す通り、本作の核となるのは“音楽的な対話”と“互いへの深い共感”です。ヘイデン自身が語るように、音楽を通じて人生や感情を表現し、共演者と密接に結びつくことが創造の原動力となっています[4]。

音楽性・サウンドの特徴

本作は、ジャズの即興性とデュオならではの親密な空間を最大限に活かした作品です。収録された4曲はいずれもヘイデンのオリジナルで、各共演者の個性が色濃く反映されています。

Side 1

  • 「Ellen David」(ピアノ:キース・ジャレット)
    • ヘイデンの元妻に捧げられた叙情的なバラード。ベースのトレモロから始まり、ジャレットの抒情的なピアノが美しく絡み合います。互いのメロディの応酬や即興のやりとりが、まるで会話のように展開されます[5][6]。
  • 「O.C.」(アルトサックス:オーネット・コールマン)
    • コールマンのイニシャルを冠したナンバー。彼の自由奔放なフレージングとヘイデンの柔軟なベースが、アップテンポのスイングの中で緊密な対話を繰り広げます[5]。

Side 2

  • 「For Turiya」(ハープ:アリス・コルトレーン)
    • アリスのサンスクリット名「Turiya」に由来する曲。ハープとベースという珍しい組み合わせが、神秘的かつ幻想的なサウンドスケープを生み出しています。ヘイデンが彼女のハープ演奏に感銘を受けて書いた楽曲です[5]。
  • 「For a Free Portugal」(パーカッション:ポール・モチアン)
    • 政治的メッセージを込めた曲で、ヘイデンの社会的関心が反映されています。モチアンの繊細なパーカッションとヘイデンのベースが、自由な即興を展開します[1][5]。

全体を通して、ヘイデン特有の温かくウッディなベース音と、各共演者の個性がぶつかり合うのではなく、親密に溶け合うサウンドが特徴です。複雑でありながら自然体の演奏、そして各曲ごとに異なる空間と色彩が感じられます[4][7]。

制作時のエピソード

このアルバムは、ヘイデンのプライベートや精神的な浮き沈みが色濃く影響しています。1970年代半ば、彼は父親の死や離婚、薬物依存など困難な時期を過ごしていましたが、友人であるジョン・スナイダー(プロデューサー)とエド・ミシェル(プロデューサー)のサポートにより、よりリラックスした環境で制作できるよう“デュオ形式”が提案されました[2]。

録音は1976年1月と3月に、カリフォルニアとニューヨークのスタジオで行われています。共演者はいずれもヘイデンと長い交流があり、信頼関係のもとで自由な即興が可能となりました[1][2]。

参加ミュージシャン

  • チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden):ベース/全曲
  • キース・ジャレット(Keith Jarrett):ピアノ/1曲目「Ellen David」
  • オーネット・コールマン(Ornette Coleman):アルトサックス/2曲目「O.C.」
  • アリス・コルトレーン(Alice Coltrane):ハープ/3曲目「For Turiya」
  • ポール・モチアン(Paul Motian):パーカッション/4曲目「For a Free Portugal」

発表時の反響

『Closeness』はリリース当時から高い評価を受けました。AllMusicでは「特にコールマンとジャレットとのコラボレーションが必聴」と評され、ジャズファンや批評家からもデュオならではの親密な空間、ヘイデンの深い音楽性が称賛されました[1][4]。また、各曲の多様性と即興性、そしてヘイデンのベースが主役となる構成は、ジャズ・デュオ作品の中でも特に重要な位置を占めています[4]。

特筆すべきこと

  • デュオ形式の先駆性
    ジャズにおけるデュオ作品は当時まだ珍しく、ベースが主導するデュオという点でも画期的でした。ヘイデンは、共演者の個性を最大限に引き出しつつ、自身の音楽的アイデンティティも強く打ち出しています[4][7]。
  • 多様な音楽的背景の融合
    4人の共演者はいずれも異なる音楽的背景を持ち、各曲ごとにサウンドやアプローチが大きく異なります。ヘイデンのフォークやブルース、フリージャズ、スピリチュアルな要素など、多彩な音楽性が一枚のアルバムに凝縮されています[5][7]。
  • 社会的・政治的メッセージ
    「For a Free Portugal」など、ヘイデンの社会的関心や政治的メッセージも本作の特徴です。彼の音楽は単なる芸術表現に留まらず、時代や社会への問いかけも含んでいます[1][7]。
  • 録音・音質へのこだわり
    ヘイデンのベースの豊かな響きや、各楽器の生々しい音色が高音質で収録されており、録音・ミキシングにも細心の注意が払われています[6]。
チャーリー・ヘイデン(Charlie Haden)『クロースネス』(Closeness):ジャケットの裏面
ジャケットの裏面

まとめ

『Closeness』は、チャーリー・ヘイデンの音楽的成熟と人間的な深みが結実した作品であり、彼のキャリアの中でも特に重要なアルバムです。デュオならではの親密な対話、即興性、多様な音楽的バックグラウンド、そして社会的メッセージが一体となった本作は、現代ジャズの名盤として今なお高く評価されています[1][4][5]。

Citations:

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Closeness_(album)
  2. https://www.youtube.com/watch?v=fzdALx0v6HM
  3. https://www.onamrecords.com/artists/charlie-haden/discography/japan/horizon-records/uccm-9227/closeness-duets
  4. https://insheepsclothinghifi.com/album/charlie-haden-closeness/
  5. https://note.com/tatsuyasato/n/n75b3d1ef44cc
  6. https://downbeat.com/microsites/ecm-jarrett/post_10-rare-collaborators.html
  7. https://en.wikipedia.org/wiki/Charlie_Haden
  8. https://www.youtube.com/watch?v=oAwlnIRndk4
  9. https://kubo.sakuraweb.com/wp/archives/1774
  10. https://vektorshop.com/products/vsr23-292
  11. https://music.apple.com/ca/album/closeness/1734300723
  12. https://www.allmusic.com/album/closeness-mw0000197561
  13. https://www.discogs.com/release/1973226-Charlie-Haden-Closeness-Duets
  14. https://wikipedia.nucleos.com/viewer/wikipedia_en_all/A/Closeness_(album)
  15. https://silenciamusicstore.net/?pid=178618450
  16. https://www.discogs.com/release/2533206-Charlie-Haden-Closeness
  17. https://open.spotify.com/intl-id/album/4PxEHgnB3K5kpoiLe9GvcQ
  18. https://www.albumoftheyear.org/album/191693-charlie-haden-closeness-duets.php
  19. https://open.spotify.com/intl-id/album/09FLnwSYibbVf6XPWZqBqY
  20. https://nasjonaljazzscene.no/arrangement/oslo-jazzfestival-ellen-andrea-wang-closeness/
SHARE:
この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
あなたへのおすすめ