『ザ・グレイト・ジャズ・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』
『The Great Jazz Trio At The Village Vanguard』（ザ・グレイト・ジャズ・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード）は、1977年2月19日・20日にニューヨークの伝説的ジャズクラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」で録音されたライブ・アルバムです。
『The Great Jazz Trio At The Village Vanguard』（ザ・グレイト・ジャズ・トリオ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード）のコンセプト
ピアノのハンク・ジョーンズ、ベースのロン・カーター、ドラムのトニー・ウィリアムスという、モダン・ジャズ史に名を刻む三人が集結し、ピアノ・トリオという最もシンプルかつ奥深いフォーマットで、即興性と緊張感、そして各人の個性がぶつかり合う「究極のジャズ」を追求しています。
このアルバムの最大のコンセプトは、「伝統的なスウィングと革新的なインタープレイの融合」です。60年代マイルス・デイヴィス・クインテットで共演したカーターとウィリアムスの自由な発想と、ジョーンズのエレガントなバップ・ピアノが、ライブの熱気の中で有機的に絡み合います[1][2]。
音楽性・サウンドの特徴
- 選曲とアレンジ
チャーリー・パーカーの「Moose the Mooche」やジョン・コルトレーンの「Naima」など、バップやモード・ジャズの名曲が並びます。ロン・カーターの「12+12」やクラウス・オガーマンの「Favors」などオリジナルや現代的な楽曲も含まれ、幅広いジャズの表現を網羅しています[1][3]。 - 演奏スタイル
ハンク・ジョーンズは、端正でスウィンギーなタッチと、リリカルなフレージングが特徴。ロン・カーターは重厚かつ流麗なベースラインで全体を包み込み、トニー・ウィリアムスはダイナミックで予測不能なドラムワークで、トリオのサウンドに緊張感と推進力を与えています。
特にこのトリオは、従来の「ピアノ＋リズム隊」という役割分担を超え、三者が対等にインタープレイを繰り広げる点が革新的です。カーターとウィリアムスは、マイルス・デイヴィス・クインテットで培った「自由な会話的演奏」をこのトリオにも持ち込み、ジョーンズのピアノに新たな刺激を与えています[1][4]。 - サウンドの質感
ライブ録音ならではの臨場感があり、ヴィレッジ・ヴァンガード独特の響きや観客の反応も収録されています。ピアノ・トリオの「王道」ともいえるバランスの良いサウンドですが、随所に大胆な即興やスリリングな展開が聴かれます[1][3]。
制作時のエピソード
- 日本のレーベル「イースト・ウィンド」主導
この録音は日本のジャズ・レーベル「イースト・ウィンド」の伊藤潔、伊藤八十八両プロデューサーによる企画で実現しました。日本のリスナーのために「世界最高峰のピアノ・トリオ」を記録しようという意欲的なプロジェクトでした1。 - メンバーの化学反応
もともと1975年のヴィレッジ・ヴァンガードでの共演がきっかけで結成されたトリオであり、三者の間には深い信頼とリスペクトがありました。ライブ当日も、互いのアイデアに即座に反応し合う「ジャズの醍醐味」が存分に発揮されています2。
参加ミュージシャン
- ハンク・ジョーンズ（Hank Jones）：ピアノ（バンド・リーダー）
- ロン・カーター（Ron Carter）：ベース
- トニー・ウィリアムス（Tony Williams）：ドラム
収録曲
Side 1
- Moose the Mooche（ムース・ザ・ムーチ） - 6:06（Charlie Parker）
- Naima（ネイマ） - 11:41（John Coltrane）
Side 2
- Favors（フェイヴァーズ） - 9:35（Claus Ogerman）
- 12+12 - 9:27（Ron Carter）
発表時の反響
- 批評家の評価
Allmusicでは4.5点の高評価を獲得し、「ハンク・ジョーンズはどの編成でも最高の演奏を約束するが、この盤ではロン・カーターとトニー・ウィリアムスのサポートで、まさに花火のような演奏が繰り広げられる」と絶賛されています1。
All About Jazzでも「伝統と自由な解釈が見事に融合している」と高く評価されました[1][4]。 - 日本での受賞歴
スイングジャーナル誌ジャズ・ディスク大賞「銀賞」を受賞し、日本のジャズファンからも熱烈に支持されました[3]。 - リスナーの声
ピアノ・トリオの名盤として、現在も多くのジャズファンに愛されています。
ジャケット・デザイン
このアルバムのジャケットの表紙に写っているのはアトランタ・ブレーブスのピッチャー、ロジャー・モレット（Roger Moret・ジャケットにはチーム名自体が明記されていないため、選手のユニフォームやキャップのロゴなどから特定）です。写真は日本人写真家・内藤忠行によって撮影されました。日本発のレーベルらしい独特のセンスが光るデザインです。
特筆すべきこと
- 日米ジャズ交流の象徴
日本のレーベルが世界的なジャズ・レジェンドを起用し、ニューヨークの名門クラブでライブ録音を敢行したという点は、日米ジャズ交流史においても画期的な出来事でした。 - ピアノ・トリオの新たな地平
それぞれがリーダーを張れる巨匠が集い、従来の役割分担を超えた「三者対等」の音楽的対話を実現した点は、ピアノ・トリオの進化を象徴する重要な記録です[1][4]。 - 後世への影響
このアルバムは、その後の多くのピアノ・トリオやジャズ・ミュージシャンに大きな影響を与えました。ライブ録音の臨場感、即興のスリル、そして三者の個性がぶつかり合う音楽の素晴らしさは、今なお色褪せません。
本作は、ジャズの伝統と革新、ライブならではの緊張感、そして三巨頭のインタープレイが結晶した、ピアノ・トリオの金字塔です。ジャズファンならずとも、そのサウンドと歴史的意義をぜひ味わってみてください[1][2][3][4]。
- https://en.wikipedia.org/wiki/The_Great_Jazz_Trio_at_the_Village_Vanguard
- https://www.youtube.com/watch?v=OHsm6JMHlCk
- https://www.universal-music.co.jp/the-great-jazz-trio/products/uccj-9182/
- https://en.wikipedia.org/wiki/The_Great_Jazz_Trio_at_the_Village_Vanguard_Vol._2
- http://kubo.sblo.jp/article/188097419.html
- https://vmatsuwa.cocolog-nifty.com/piano/2013/06/the-great-jazz-.html
- https://www.allaboutjazz.com/at-the-village-vanguard-1961-revisited-bill-evans-trio-ezz-thetics
- https://www.loc.gov/static/programs/national-recording-preservation-board/documents/Complete-Village-Vanguard-Recordings_Nass.pdf
- https://en.wikipedia.org/wiki/The_Great_Jazz_Trio_at_the_Village_Vanguard_Again
- https://www.waxpend.com/items/24762?page=259
- https://musicbrainz.org/release/150e61a6-dbf5-4aa3-ae50-0d77838a8183/cover-art
- https://www.kcrw.com/music/articles/the-village-vanguard-3-great-live-sets
- https://en.wikipedia.org/wiki/Sunday_at_the_Village_Vanguard
- https://www.waxpend.com/items/9766?page=398
- https://open.spotify.com/album/6o87S68QuaANHNWietsWSC
- https://positive-feedback.com/reviews/music-reviews/bill-evans-trio-sunday-at-the-village-vanguard/
- https://music.apple.com/us/album/the-complete-village-vanguard-recordings-1961-live/1440781974
- https://www.universal-music.co.jp/the-great-jazz-trio/products/uccj-9042/
- https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245772337
- https://musicforecast.org/en/products/the-great-jazz-trio-at-the-village-vanguard
