ビル・エヴァンス、ジム・ホール『アンダーカレント』
ビル・エヴァンス、ジム・ホール『アンダーカレント』
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『Undercurrent』(アンダーカレント)は、ジャズピアニストのBill Evans(ビル・エヴァンス)とジャズギタリストのJim Hall(ジム・ホール)による1962年のデュオアルバムです。このアルバムは、両者の初めての本格的な共演作品として知られています。

音楽性とサウンドの特徴

このアルバムの最大の特徴は、ピアノとギターのみという編成にあります。通常のジャズ編成にはベースやドラムスが含まれますが、『Undercurrent』ではそれらを排除し、2つの和音楽器だけで音楽を構築しています[1][4]。

この特殊な編成により、エヴァンスとホールは自由に音楽的アイデアを交換し、独自のリズムとスウィング感を生み出すことができました[13]。両者の演奏は緻密に絡み合い、時に1人の演奏者のように聞こえるほど一体感があります[7]。

サウンドは全体的に内省的で静謐な雰囲気に包まれていますが、その中に「静かな炎」のような緊張感が潜んでいます[11]。エヴァンスのピアノとホールのギターは、まるで私的な会話を交わすかのように、繊細かつ知的に対話を重ねています[2]。

制作背景とエピソード

このアルバムは1962年4月と5月の2回のセッションで録音されました[16]。当時、エヴァンスは前年に亡くなったベーシストのスコット・ラファロ(Scott LaFaro)の死を乗り越え、音楽活動に復帰したばかりでした[8]。

エヴァンスとホールは、ジョージ・ラッセル(George Russell)を中心とするニューヨークのミュージシャンサークルに属しており、ジミー・ジェフリー(Jimmy Giuffre)やギル・エヴァンス(Gil Evans)らと共通の美学を持っていました[7]。両者は特に室内楽的なジャズへの愛着を共有していました。

しかし、ピアノとギターという2つの和音楽器によるデュオ演奏には、音が重なり合って混乱するリスクがありました。そのため、このアルバムでは余白を詩的に活用することで、独特のリラックスした雰囲気を生み出すことに成功しています[7]。

収録曲と演奏の特徴

アルバムには「My Funny Valentine」「I Hear a Rhapsody」「Dream Gypsy」などの楽曲が収録されています[5]。

「My Funny Valentine」では、ホールの下降するギターフレーズが印象的で、エヴァンスのピアノが巧みにコメントを添えています[7]。「I Hear a Rhapsody」は、2人の演奏が完全に一体化した素晴らしい例です[7]。

「Dream Gypsy」では、2人が曲の断片を散りばめ、リスナーがそれらを組み立てるような斬新な構成になっています[7]。

トラックリスト

Side A

  1. My Funny Valentine - マイ・ファニー・ヴァレンタイン(6:59)
  2. I Hear a Rhapsody - アイ・ヒア・ア・ラプソディ(4:34)
  3. Dream Gypsy - ドリーム・ジプシー(5:26)

Side B

  1. Romain - ロメイン(5:19)
  2. Skating in Central Park - セントラル・パークでスケート(5:20)
  3. Darn That Dream - ダーン・ザット・ドリーム(5:01)

ジャケットデザイン

アルバムのジャケットは、アメリカの写真家Toni Frissellが1947年に撮影した「Weeki Wachee spring, Florida」という写真を使用しています[3]。長い白いドレスを着た女性が水中に浮かんでいる幻想的な画像で、音楽の雰囲気を視覚的に表現しています。

この写真は、夢のような雰囲気と同時に不穏な印象も与えており、アルバムの音楽性を象徴的に表現しています[14]。

評価と影響

『Undercurrent』は発表当時から高い評価を受け、ジャズ史に残る名盤の1つとなりました。ピアノとギターによるデュオアルバムの先駆的存在として、後のミュージシャンたちに大きな影響を与えています[1][2]。

このアルバムは、エヴァンスとホールの音楽的共感と高度な即興能力を示す傑作として、今もなおジャズファンから愛され続けています[7][13]。

アルバムレヴュー

ビル・エヴァンス(Bill Evans)とジム・ホール(Jim Hall)の『アンダーカレント(Undercurrent)』です。
『スイングジャーナル』というジャズの雑誌を立ち読みしていたら、このアルバムの紹介をやっていたので、ちょっと一言。
『アンダーカレント』はギターのジム・ホールとピアノのビル・エヴァンスによる作品なのだが何が素晴らしいといって、そのジャケットのアートワークが素晴らしい。
もちろん、ギターとピアノで会話しているような音楽も素晴らしいのですが…。

このレコードを初めて見たときはジョン・エヴァレット・ミレイという19世紀のイギリスの画家の「オフィーリア」という絵画が思い浮かんだ。
「オフィーリア」はシェイクスピアの『ハムレット』のヒロインを題材に描いたもので、こちらも川を流れる美女を描いたものだ。

もともとジャズのレコードジャケットには優れたデザインのものが多いが、なかでもこのジャケットのデザインは際立っている。
ジャケットは川の流れの下からロングドレスの女性が顔を水面に出しているところを撮ったモノクロの写真で文字通り「undercurrent(流れの下)」である。
ジャケットにタイトルなどの文字が入っていないところにデザイナーの意思が感じられる。
何となく合成っぽく見えないこともないが、撮影も大変だったことだろう。

ジャケットのアートワークの話ばかりでは何なので、その音楽についても感想を述べてみる。
本作の最大の魅力は、おそらくビル・エヴァンスとジム・ホールの緻密なインタープレイだろう。
A面の一曲目はジャズのスタンダード「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」。
エヴァンスのピアノは繊細でありながらも力強く、ホールのギターはその音色とリズム感でエヴァンスの演奏を引き立てている。
二人の演奏は、まるで会話をしているかのように自然で、聴く者を引き込む力を感じる。

『Undercurrent』は、リリース当初から高い評価を受け、現在でもジャズの名盤として多くのファンに愛されている。

ちなみに立ち読みで仕入れた情報によると、このアルバムは今すごく売れているらしい。
なぜ今なのだろう?

Citations:
[1] https://www.davegott.com/music/artist/bill_evans/index.html
[2] https://www.hmv.co.jp/en/artist_Bill-Evans-Jim-Hall_000000000002111/item_Undercurrent-Rmt_275426
[3] https://le0pard13.com/2014/04/22/best-album-covers-undercurrent/
[4] https://en.wikipedia.org/wiki/Undercurrent_(Bill_Evans_and_Jim_Hall_album)
[5] https://londonjazzcollector.wordpress.com/2012/07/26/bill-evans-jim-hall-undercurrent-1962-united-artists/
[6] https://www.discogs.com/release/30500152-Bill-Evans-Jim-Hall-%E3%83%93%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%B9-%E3%81%A8-%E3%82%B8%E3%83%A0%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB-Undercurrent-%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%88
[7] https://londonjazznews.com/2016/03/14/lp-review-bill-evans-and-jim-hall-undercurrent/
[8] https://lightintheattic.net/products/undercurrent-1962
[9] https://www.etsy.com/listing/1513419298/bill-evans-and-jim-hall-undercurrent
[10] https://londonjazzcollector.wordpress.com/2017/05/10/bill-evans-jim-hall-undercurrent-1962-emi-toshiba/
[11] https://en.wikipedia.org/wiki/Bill_Evans
[12] https://www.discogs.com/release/11239039-Bill-Evans-Undercurrent-
[13] https://insheepsclothinghifi.com/album/billl-evans-jim-hall-undercurrent/
[14] https://musictoeat.com/2018/03/28/mysterious-and-iconic-the-cover-art-of-undercurrent/
[15] https://musicboard.app/album/undercurrent/bill-evans/
[16] https://propermusic.com/products/billevansjimhall-undercurrent
[17] https://www.reddit.com/r/vinyl/comments/7b2z6r/the_album_that_hooked_me_to_jazz/

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