ケイト・ブッシュ『エアリアル』を聴く

Kate Bush(ケイト・ブッシュ)のアルバム『Aerial』(エアリアル)は、2005年にリリースされた彼女の8枚目のアルバムで、12年間の沈黙を破った作品です。このアルバムは、音楽的な多様性、詩的なテーマ、そして独特なコンセプトで高く評価されました。
アルバムのコンセプトと構成
『Aerial』は2枚組のアルバムで、それぞれ「A Sea of Honey」と「A Sky of Honey」という副題が付けられています。「A Sea of Honey」は個別の楽曲で構成されており、「A Sky of Honey」は一日の流れを描いた連続した楽曲群(スイート)として構成されています[3][4]。
- 「A Sea of Honey」: このディスクでは、日常の中に潜む美しさや感動をテーマにした楽曲が並びます。例えば、「Pi」では数学定数πへの情熱を歌い、「Bertie」では息子への愛が表現されています。また、「Mrs. Bartolozzi」では洗濯という日常的な行為が詩的に描かれています[1][3]。
- 「A Sky of Honey」: このディスクは、一日を通じた自然の美しさや生命の喜びを描きます。鳥のさえずりや日の出、日の入りなどが音楽的に表現されており、アルバム全体が一つの物語として展開します[3][4]。
音楽性とサウンドの特徴
『Aerial』は、多層的な音楽性とジャンルを超えたアプローチが特徴です。フォーク、クラシック、フラメンコ、ロックなど、多様なスタイルが取り入れられています[3]。
- シンセサイザーとアコースティック楽器: アルバム全体でシンセサイザーやピアノ、ギターなどが巧みに組み合わされており、特に「King of the Mountain」や「Nocturn」ではその豊かなサウンドスケープが際立っています[1][3]。
- 鳥の声や自然音: 「A Sky of Honey」には鳥の声や自然音が多用されており、これがアルバム全体のテーマである自然との調和を強調しています[2][3]。
制作時のエピソード
ケイト・ブッシュは1993年以降、家族と過ごす時間を優先し、公の場から遠ざかっていました。その間に育児や家庭生活を通じて得たインスピレーションが『Aerial』に反映されています[3]。
制作には約9年が費やされ、その間に彼女は多くのミュージシャンとコラボレーションしました。また、このアルバムはアビー・ロード・スタジオで録音されました[3]。
参加ミュージシャン
『Aerial』には、多くの才能あるミュージシャンが参加しています。
- マイケル・ケイメン(ストリングス編曲)
- ピーター・アースキン(ドラム)
- エバーハルト・ウェーバー(エレクトリックアップライトベース)
- ゲイリー・ブルッカー(ハモンドオルガン)
- ロル・クレーム(バックボーカル)など[3]。
また、息子であるアルバート・マッキントッシュ(愛称:バーティ)がいくつかのトラックで声を提供しています[3]。
ジャケットデザイン
ジャケットデザインには鳥の鳴き声を表す波形が使用されています。この波形は夕日に映る山々と海面を模したものにも見えます。このデザインはアルバム全体のテーマである自然と調和した生活への賛歌を象徴しています[3][5]。
トラックリスト
Disk:1(A Sea of Honey)
- King of the Mountain - キング・オブ・ザ・マウンテン(4:53)
- π - パイ(6:09)
- Bertie - バーティ(4:18)
- Mrs. Bartolozzi - ミセス・バルトロッツィ(5:58)
- How to Be Invisible - ハウ・トゥ・ビー・インビジブル(5:32)
- Joanni - ジョアンニ(4:56)
- A Coral Room - コーラル・ルーム(6:12)
Disk:2(A Sky of Honey)
- Prelude - プレリュード(1:26)
- Prologue - プロローグ(5:42)
- An Architect's Dream - アーキテクトの夢(4:50)
- The Painter's Link - ペインターズ・リンク(1:35)
- Sunset - サンセット(5:58)
- Aerial Tal - エアリアル・タル(1:01)
- Somewhere in Between - サムウェア・イン・ビトウィーン(5:00)
- Nocturn - ノクターン(8:34)
- Aerial - エアリアル(7:52)
発表時の反響
『Aerial』は批評家から非常に高い評価を受けました。特にその革新的な構成と詩的な深みが賞賛されました。商業的にも成功し、イギリスではチャート3位を記録しました[3]。
特筆すべきこと
- 「A Sky of Honey」の初期版にはロルフ・ハリスが参加していましたが、後に彼のパートは息子バーティによって置き換えられました[3]。
- 2014年に開催されたコンサートシリーズ「Before the Dawn」では、「King of the Mountain」と「A Sky of Honey」の全曲がライブで初披露されました[3]。
『Aerial』はケイト・ブッシュらしい独創性と詩情豊かな世界観を持つ作品であり、彼女のキャリアにおいても特別な位置を占めるアルバムです。その音楽的冒険心と深い感情表現は、多くのリスナーに感動を与えています。
アルバム・レヴュー
ケイト・ブッシュ(Kate Bush)の新作アルバム『エアリアル』(Aerial)がAmazonから届きました。
ケイト・ブッシュといえば、明石家さんまのTV番組「恋のから騒ぎ」のオープニングで使われている楽曲『嵐が丘(Wuthering Heights)』が有名です。
しかし、その独特の歌声から、一部ではイロモノ的なイメージが先行している感があります。
そのため、彼女の他の楽曲を知らない人も多いのではないでしょうか?
『嵐が丘』以外の彼女の楽曲を知らないのは、非常にもったいないことです。
本作のリリースは、2005年11月7。
このアルバムは、1993年の『レッド・シューズ』以来、12年ぶりの新作として大きな注目を集めました。
『Aerial』は、ケイト・ブッシュの音楽キャリアにおいて重要な作品であり、その多彩な音楽スタイルと深いテーマ性で高く評価されています。

本作は2枚組のアルバムで、ディスク1は『A Sea of Honey』、ディスク2は『A Sky of Honey』というサブタイトルが付けられています。
「A Sea of Honey」には独立した楽曲が収録されており、「A Sky of Honey」には一日の移り変わりを描いた連続した楽曲が収められています。
これにより、自然の美しさと人間の感情が見事に織り交ぜられています。
アルバムのジャケットは、はちみつ色の空と海を模したデザイン。
夕日に照らされた山脈が海に映る様子が描かれていますが、実際にはこれは黒鳥の歌声の波形を重ねたものです。
この独創的なカバーアートは、アルバムのテーマである空、海、鳥の歌を象徴しています。
ジャケットを開くと、美しい少女のイラストがこちらを見つめており、心を射抜くような眼差しが印象的です。
1曲目を聴き「相変わらず孤高の人だなぁ」と思うと同時に「やっぱり、天才だな」との印象。
デビュー当時から持つ彼女独特のゴシック小説のような幻想的で神秘的な世界観と、精巧に計算されたサウンドは健在です。
しかし、その世界は以前に比べて明るくなったように感じます。
ポップとトラッドの融合、聴く者に不安を覚えさせるような音使いと歌い方、緊張感を生むリズムが特徴的です。
それでも、妙に癒されるのが不思議です。
『Aerial』は、フォーク、ルネサンス、クラシック、レゲエ、フラメンコ、ロックなど、さまざまな音楽スタイルを融合させた多層的な作品です。
特に「A Coral Room」は、そのシンプルさと深い感動で批評家から絶賛されました。
また、アルバム全体としても、ケイト・ブッシュの音楽的な才能と創造性が存分に発揮された作品として高く評価されています。
本作は、ロックというカテゴリで語るにはもったいないほどの傑作です。
日本ではあまり売れないかもしれませんが、今年聞いた洋楽の中では間違いなくNo.1。
音楽が好きな人なら、ぜひ一度聴いてみてください。
損はさせません。
久しぶりに素晴らしい音楽に巡り合えたせいか、思わず興奮してしまいました。
そう言えば、関係ないけど今日はジョン・レノンの命日なんだよね…。
Citations:
[1] https://www.the-solute.com/the-solute-record-club-kate-bush-aerial/
[2] https://hauntedjukebox.com/2018/07/08/kate-bush-aerial/
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/Aerial_(album)
[4] https://www.katebushencyclopedia.com/newsite/aerial-album/
[5] https://www.kempa.com/coded-cover-kate-bush/
[6] https://www.britannica.com/topic/Aerial
[7] http://fripp21.blogspot.com/2022/11/kate-bush-aerial-2005.html
[8] https://www.progarchives.com/album.asp?id=9800
[9] https://www.reddit.com/r/katebush/comments/1edggcv/what_is_your_opinion_on_aerial/
[10] http://www.noripcord.com/reviews/music/kate-bush/aerial
[11] https://soundcloud.com/noeluk/talking-with-kate-the-making
[12] https://zacharylipez.substack.com/p/a-rough-guide-to-kate-bush-collaborations
[13] https://www.musicmusingsandsuch.com/musicmusingsandsuch/2025/3/22/feature-behind-the-scenes-and-critics-reviews-kate-bushs-directors-cut-at-fourteen
[14] https://www.pauldunoyer.com/aerial-by-kate-bush/
[15] https://www.reddit.com/r/katebush/comments/oiw628/all_the_meanings_behind_the_cover_of_aerial/
[16] https://open.spotify.com/album/5hAtR86rztwrKh83zUokGu
[17] https://www.youtube.com/@kate_Bush
[18] https://www.discogs.com/release/1842564-Kate-Bush-Aerial
[19] https://www.musicmusingsandsuch.com/musicmusingsandsuch/2024/10/13/feature-kate-bushs-aerial-at-nineteen-a-glorious-return-reaction-and-reception
[20] https://www.reddit.com/r/katebush/comments/187okgu/is_aerial_kates_best_album_why_or_why_not/
[21] https://devonrecordclub.com/2015/12/08/kate-bush-aerial-a-sky-of-honey-round-86-nicks-choice/
[22] https://pocketmags.com/us/classic-pop-presents-magazine/cpp-issue-3-2022/articles/1205489/album-aerial
[23] https://gaffa.org/reaching/rev_aer_ca.html
[24] https://theafterword.co.uk/10ish-bush-albums-in-about-a-year-aerial-a-sea-of-honey/
[25] http://gaffa.org/reaching/rev_aer_UK1.html
[26] https://www.katebush.com/aerial/
[27] https://katebush.shopnylonmerch.com/products/aerial-print
[28] https://www.albumartexchange.com/covers/525723-aerial
[29] https://music.katebush.com/buy/aerial/
[30] http://gcworks.web.fc2.com/collabolations/katebush_aerial.html
[31] https://www.bbc.co.uk/music/reviews/fprg/
[32] https://ayearinthecountry.co.uk/kill-list-puffball-in-the-dark-half-and-butter-on-the-latch-folk-horror-descendants-by-way-of-the-kitchen-sink-chapter-16-book-images/kate-bush-aerial-album-cover-art/
[33] https://www.discogs.com/release/559101-Kate-Bush-Aerial
[34] https://en.wikipedia.org/wiki/Kate_Bush
[35] https://www.christopherleecomposer.com/kate-bush-a-deeper-understanding
[36] http://www.secretmeeting.co.uk/kate-bush-aerial-review
[37] https://en.apoplife.nl/kate-bush-makes-her-comeback-with-the-beautiful-aerial/
[38] https://www.bbc.co.uk/programmes/articles/4f2MnwX3ktVdj1TkCRnDqYB/10-years-with-kate-bush-rare-photographs-of-the-singer-at-the-height-of-her-career
[39] https://www.katebushnews.com/2005/10/08/kate-speaks-about-aerial-us-press-release/
[40] http://gaffa.org/reaching/rev_aer_UK2.html
[41] https://superdeluxeedition.com/news/kate-bush-removes-rolf-harris-from-the-2018-remaster-of-her-album-aerial/
[42] https://www.albumoftheyear.org/album/2562-kate-bush-aerial.php
[43] https://www.katebushnews.com/2005/10/29/aerial-massive-album-news-round-up/
[44] https://www.musicmusingsandsuch.com/musicmusingsandsuch/2021/10/28/feature-a-sea-of-honey-for-the-mind-and-soul-the-emotional-impact-of-kate-bushs-aerial
[45] https://www.musicmusingsandsuch.com/musicmusingsandsuch/2021/5/18/feature-ranking-tracks-from-kate-bushs-albums-aerial-a-sea-of-honey
[46] https://www.theatreofnoise.com/2005/12/review-of-aerial-by-kate-bush.html
[47] https://a1000mistakes.wordpress.com/2016/11/08/classic-albums-aerial-by-kate-bush/