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ロキシー・ミュージック『アヴァロン』
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Roxy Music(ロキシー・ミュージック)の8枚目にして最後のスタジオアルバム『Avalon』(アヴァロン)は、1982年5月に発表された傑作です。このアルバムは、バンドの音楽的進化の集大成とも言える洗練された作品となりました。

コンセプトと音楽性

『Avalon』のコンセプトは、アーサー王伝説に登場する理想郷「アヴァロン」にちなんでいます。ブライアン・フェリーは「アヴァロンは究極のロマンティックなファンタジーの場所」と語っています[1]。アルバム全体を通して、夢のような雰囲気と洗練された大人のロマンスが表現されています。

音楽的には、アートロック、ポップ、シンセ主導のニューウェイブサウンドが見事に融合しています[28]。初期のロキシー・ミュージックに見られた実験的で荒々しい要素は影を潜め、代わりに成熟した優雅さと洗練された雰囲気が全面に出ています。豊かなシンセサイザーのテクスチャー、フェリーの魅惑的な歌声、そしてフィル・マンザネラの効果的なギターサウンドが特徴的です[23]。

制作プロセスとエピソード

アルバムの制作は、マンザネラのギャラリースタジオ、バハマのコンパスポイント、ニューヨークのパワーステーションで行われました[1]。プロデューサーのレット・デイヴィスは、ブライアン・イーノとの仕事から着想を得た新しい制作方法を導入しました。曲は、ドラムマシンのグルーヴから始めて、その上に即興で曲を作り上げていくという手法が取られました[17]。

タイトル曲「Avalon」は、最後の最後で生まれ変わりました。ミキシング前日、フェリーとデイヴィスは隣のスタジオでハイチ人歌手ヤニック・エティエンヌの歌声を耳にし、彼女をバッキングボーカルとして起用。エティエンヌの歌声が曲に魔法のような雰囲気を加えました[1][18]。

パーソネル

Roxy Musi

  • ブライアン・フェリー(Bryan Ferry):vocals, keyboards
  • アンディ・マッケイ(Andy Mackay):sax, oboe
  • フィル・マンザネラ(Phil Manzanera):guitars

Additional personnel

  • ニール・ハバード(Neil Hubbard):guitar
  • アラン・スペナー(Alan Spenner):bass
  • ニール・ジェイソン(Neil Jason):bass
  • アンディー・ニューマーク(Andy Newmark):drums
  • リック・マロッタ(Rick Marotta):drums
  • ポール・キャラック(Paul Carrack):keyboards
  • ジミー・メイレン(Jimmy Maelen):percussion
  • カーミット・ムーア(Kermit Moore):cello
  • フォンジ・ソーントン(Fonzi Thornton):background vocals
  • ヤニック・エティエンヌ(Yanick Etienne):background vocals

反響と評価

『アヴァロン』は、ロキシー・ミュージックの最も商業的に成功したアルバムとなりました。イギリスではチャート1位を獲得し、アメリカでもプラチナディスクを記録しています[1]。

批評家からも高い評価を受け、洗練された大人のメイクアウトミュージックとして、また80年代シンセポップの成熟形として称賛されました[23]。一方で、初期の実験性や荒々しさが失われたことを惜しむ声もありました[29]。

ジャケットデザイン

アルバムカバーは、フェリーの当時の恋人(後に妻となる)ルーシー・ヘルモアが、中世の兜をかぶり鷹を手に持った姿で写っています。撮影は、ヘルモアの両親の家にある湖畔で夜明けに行われました。アーサー王のアヴァロンへの旅を想起させるデザインとなっています[24]。

特筆すべき点

『アヴァロン』は、ロキシー・ミュージックの最後のアルバムとして完璧な締めくくりとなりました。80年代のポップサウンドの先駆けとなり、その後の多くのアーティストに影響を与えました[29]。

また、このアルバムには「India」と「Tara」という2つのインストゥルメンタル曲が収録されており、これはRoxy Musicのアルバムとしては初めてのことでした[1]。

『アヴァロン』は、その洗練された音楽性と夢のような雰囲気で、40年以上経った今でも多くのリスナーを魅了し続けている名盤です。

[1][3][17][18][23][24][28][29]

アルバムレヴュー

ロキシー・ミュージック(Roxy Music)の『アヴァロン(Avalon)』です。
これまでのロキシー・ミュージックとは一線を画す作品であり、彼らの最後のオリジナルアルバム。
当時、ロキシー・ミュージックのメンバーはリーダーでヴォーカルを担当するブライアン・フェリーのほかにはギターのフィル・マンザネラ、サックス担当のアンディ・マッケイの三人となっていた。
本作はリーダーのブライアン・フェリーの美学と価値観で彩られた唯一無二の音楽である。
そういう意味では、はたして、これをブライアン・フェリーでなくロキシーミュージックの作品と言っていいのだろうか? と躊躇してしまうが傑作であるのは間違いない。
この後に発表されるブライアン・フェリーのソロアルバムの初期のいくつかは、明らかにこのアルバムの延長線上にある。

ゴージャスで退廃的なサウンド

アメリカのミュージシャンには、これは作れないだろうなと思わせるブルースの匂いを感じさせない幻想的で優雅なサウンド。
全体的にエコーが多用され、様々な楽器の音が効果音的に使われているゴージャスで退廃的なサウンドが、決してうまいとはいえないブライアン・フェリーのふわふわとした浮遊感のあるヴォーカルとマッチしている。

こうした、こねくり回された作品で忘れてはならないのはプロデューサーのレット・デイヴィスとエンジニアのボブ・クリアマウンテンの存在だ。
レット・デイヴィスは初期にロキシー・ミュージックに参加していたブライアン・イーノやキング・クリムゾンなどのアルバムも手掛けている。
また、ボブ・クリアマウンテンはミックス・エンジニアとして数えきれないぐらいのロックの名盤に関わっている。

他のメンバーも存在感を発揮

フィル・マンザネラのギターも全曲にわたり味噌汁のだし、いや、スープのブイヨンのように利いている。
特筆すべきは最後に収められているタラ(TARA)という2分弱のインストゥルメンタル。
愁いのあるアンディー・マッケイのオーボエ(ソプラノサックスにも聴こえるが、クレジットにはオーボエとあるので、そうなのでしょう)の音色とメロディー。
そして最後は波の音がフェードアウトしていく。

アーサー王伝説がモチーフ

アヴァロンとは古代ウェールズ語で「林檎」を意味しアーサー王伝説に登場する楽園の島。
自身の血筋であるモルドレッドの謀反により重傷を負ったアーサー王が傷を癒すために、この地にわたり最期を迎えたという。
そうした世界観はイギリス、あるいはケルト的。

ジャケットに写った甲冑を着た後姿の人物は、後にブライアン・フェリーの奥さんになる女性だとか…。

トラックリスト

  1. 夜に抱かれて(More Than This) - 4:30
  2. ザ・スペース・ビトウィーン(The Space Between) - 4:30
  3. アヴァロン(Avalon) - 4:16
  4. インディア(India) - 1:44
  5. 我が胸のときめきを(While My Heart Is Still Beating) - 3:26
  6. ザ・メイン・シング(The Main Thing) - 3:54
  7. テイク・ア・チャンス・ウィズ・ミー(Take A Chance With Me) - 4:42
  8. トゥ・ターン・ユー・オン(To Turn You On) - 4:16
  9. トゥルー・トゥ・ライフ(True To Life) - 4:25
  10. タラ(Tara) - 1:43

Citations:
[1] https://www.popmatters.com/the-grace-and-beauty-of-roxy-musics-avalon-2495392241.html
[2] https://immersiveaudioalbum.com/roxy-music-avalon-dolby-atmos/
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/Avalon_(Roxy_Music_album)
[4] https://producelikeapro.com/blog/roxy-music-avalon/
[5] https://pure-music.co.uk/avalon-album-cover/
[6] https://www.analogplanet.com/content/roxy-music-box-set-rest-box
[7] https://www.68to05.com/essays/1982-avalon-roxy-music
[8] https://albumism.com/features/roxy-music-avalon-turns-40-anniversary-retrospective
[9] https://www.subjectivesounds.com/musicblog/roxy-music-avalon-album-review
[10] https://www.soundonsound.com/techniques/recording-remixing-roxy-musics-avalon
[11] https://www.mixonline.com/recording/roxy-musics-avalon-365419
[12] https://www.soundandvision.com/content/remaster-class-roxy-music-avalon
[13] https://www.classicpopmag.com/2022/04/roxy-music-avalon/
[14] https://www.progarchives.com/album.asp?id=7101
[15] https://vocal.media/beat/avalon-by-roxy-music-a-beautiful-soundscape
[16] https://classicalbumsundays.com/roxy-musics-avalon-presented-by-colleen-cosmo-murphy/
[17] https://producelikeapro.com/blog/roxy-music-avalon/
[18] https://en.wikipedia.org/wiki/Avalon_(Roxy_Music_song)
[19] https://www.youtube.com/watch?v=c3ROPzQPHrE
[20] https://spaceecho.chromewaves.net/2022/04/13/the-making-of-roxy-musics-avalon/
[21] http://www.vivaroxymusic.com/articles_473.php
[22] https://www.discogs.com/ja/release/332617-Roxy-Music-Avalon
[23] https://albumism.com/features/roxy-music-avalon-turns-40-anniversary-retrospective
[24] https://www.udiscovermusic.com/stories/beauty-queens-behind-roxy-musics-artwork/
[25] https://www.discogs.com/release/1989150-Roxy-Music-Avalon
[26] https://www.albumoftheyear.org/album/17192-roxy-music-avalon/user-reviews/
[27] https://musicboard.app/album/avalon/roxy-music/
[28] https://www.subjectivesounds.com/musicblog/roxy-music-avalon-album-review
[29] https://spectrumculture.com/2022/07/14/roxy-music-flesh-blood-avalon-review/

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