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ニール・ヤング『ハーヴェスト・ムーン』を聴く

ニール・ヤング『ハーヴェスト・ムーン』を聴く
ニール・ヤング『ハーヴェスト・ムーン』

Neil Young(ニール・ヤング)のアルバム『Harvest Moon』(ハーヴェスト・ムーン)は、1992年11月2日にリリースされた彼の21枚目のスタジオ・アルバムです。この作品は1972年の名盤『Harvest』の「精神的続編」として広く認識されており、同じバンド(ストレイ・ゲイターズ)やゲスト・ミュージシャンを多数再集結させました[1][2]。

コンセプトと音楽性

アルバム全体のコンセプトは「成熟した愛と人生への穏やかなまなざし」。ヤング自身は「長年続くパートナーシップと歳月についての視点」が歌詞や楽曲に反映されていると述べています[2]。前作『Harvest』同様、温かみあるカントリー・フォークを基調としつつ、アコースティックギター、ハーモニカ、ピアノ、そしてペダル・スティール・ギターが穏やかなサウンドスケープを形作ります[3][4][5]。

“Harvest Moon”という楽曲自体が象徴的で、「愛が長く続くこと」「時間を経ても色あせない気持ち」を祝福し、アルバム全体にもそのモチーフが反映されています(“今でも君に恋している この収穫の月の下で踊るのを見たい”と歌われます)[1][6][7]。

サウンドの特徴

ヤングは耳の疾患(トーン・ダウン現象)に悩まされ、その回復もあって本作では極力生音に近い、優しい音作りを志向しました。ドラム、ベース、ピアノ、スティールギターが有機的に絡み合い、ヴォーカルとハーモニー(特にリンダ・ロンシュタットやジェームス・テイラーのコーラス)が楽曲をさらに高みに導きます[3][5][8]。

また、本作の録音はカリフォルニアのヤングの自宅バーン(納屋)内スタジオでライブ感を重視しながら進められ、「温かさ」と「空間的な広がり」を再現しています[2]。

主要参加ミュージシャン

  • ニール・ヤング(ヴォーカル、ギター、ハーモニカ、ピアノほか)
  • ベン・キース(ペダル・スティール・ギター、ドブロほか)
  • ティム・ドラモンド(ベース)
  • ケニー・バトリー(ドラム)
  • スプーナー・オールドハム(ピアノ、オルガン)
  • リンダ・ロンシュタット、ニコレット・ラーソン、ジェームス・テイラー、アストリッド・ヤング(コーラス)[2][8][9]

収録曲とその特徴

  • “Unknown Legend”は、ヤングの妻ペギーをモデルにした楽曲で、人生の現実と夢を織り交ぜて描写します。
  • “From Hank to Hendrix”は、長年連れ添ったカップルの時間の流れをメタファーとともに扱っています。
  • “Dreamin’ Man”は不穏なストーカー話を軽やかなメロディに乗せて描くなど、淡さとリアルさが交錯する曲が並びます[1][2]。
  • “Old King”はヤングの亡き犬へのさりげないオマージュです[5]。

トラックリスト

  • Unknown Legend(4:32)
  • From Hank to Hendrix(5:12)
  • You and Me(3:45)
  • Harvest Moon(5:03)
  • War of Man(5:41)
  • One of These Days(4:55)
  • Such a Woman(4:36)
  • Old King(2:57)
  • Dreamin' Man(4:36)
  • Natural Beauty[recorded live at The Civic Auditorium, Portland, Oregon, January 23, 1992](10:22)

制作時のエピソード

ヤングは本作の多くの楽曲をツアーで先行披露してからレコーディングに臨みました。収録曲は70年代から書きためていたものや家族旅行で生まれた新曲まで幅広く、本人が「17、18曲候補があり、選ばれなかった曲もいずれ発表するだろう」と語っています[1][2]。

また、一部の楽曲(特に“Natural Beauty”)の収録にはライブ録音が使われています[10]。

発表時の反響

『Harvest Moon』は商業的にも批評面でも大きな成功を収めました。全米ビルボード16位、ダブル・プラチナに認定され、カナダのジュノー賞も受賞。タイトル曲“Harvest Moon”はシニア世代のアンセムとしても長く愛され、YouTubeでもヤング楽曲で最も人気を誇ります[1][2][6]。

批評家は「ノスタルジーではなく人生の成熟を美しく描いた傑作」「感傷的になりすぎず誠実な名盤」と絶賛し、『Harvest』と比較して「同等かそれ以上の完成度」とする意見もみられます[4][11][12]。

特筆すべきこと

  • 『Harvest Moon』は、ヤングにとって自身の音楽的ルーツの再確認でありつつも、彼の新たな成熟の境地を示しています。
  • 長年のファンには強いノスタルジーを、初めて聴く世代には普遍的な感動を、両方に提供するアルバムです。
  • 収録曲は多くのライブやリクエストで愛され続けており、ヤング自身のキャリアの中でもひときわ特別な意味を持っています[7][10][12]。

このアルバムは、「時を超えて愛が持続することの輝き」を伝える名作として、今も多くのリスナーにとって宝物となっています。

アルバム・レヴュー

ニール・ヤング(Neil Young)の『ハーヴェスト・ムーン(Harvest Moon)』である。
ニール・ヤングには秋がよく似合う。
空気の透明度が増し、風は清冽さを深め、陽の光は朱を帯びてくる。
稲が黄金色に輝き、畑の芋や豆も実り、木になる果物も赤く熟し始める。
収穫の季節。

ニール・ヤングには収穫、そのものずばりをタイトルにした『ハーヴェスト(Harvest)』という超名盤もあるが、その続編とも言われる本作も悪くない。
悪くないというより、より、よいような気すらする。

1972年に発表された『ハーヴェスト』はニール・ヤングが27歳の時の作品、一方の『ハーヴェスト・ムーン』は1992年、彼が47歳の時に発表された。
『ハーヴェスト』にはリンダ・ロンシュタッドやジェームス・テイラー、ジャック・ニッチェなどが参加していたが、このアルバムでもこの3人が参加し、他にニコレット・ラーソンなどもヴォーカルで参加している。

サウンドはいたってシンプル。
穏やかなアコースティックの楽器の音が土の匂いを感じさせる。
年齢を重ね円熟味を増したと言えるのかもしれないが、叙情的で力の抜けた感じが、ゆったりとした気持ちにさせてくれる。

全体に佳曲ぞろいだが、中でも、アルバムタイトルの『ハーヴェスト・ムーン』はギターのハーモニクスが印象的なリフとブルースハープやスライドギター、何よりリンダ・ロンシュタッドのバックグラウンドコーラスが効いた傑作。

ところで、Harvest Moonに該当する日本語があるのだろうかと、ネットで「収穫月」とググってみた。
すると、レストランやお菓子屋さんに「収穫月」というところがありました。
しかも「みのりづき」と読ませるらしい。
ほんまかいなと思って辞書を調べたら、どうやら、そういう言葉はないらしい。
少なくても、小学館の大辞泉には載っていなかった。

それはさておき、秋の月の光に照らされながら冷や酒でも一杯やるのに、これほどしっくりくる曲を他に知らない。

  1. https://oldgreycat.blog/2019/09/14/the-essentials-neil-youngs-harvest-moon/
  2. https://en.wikipedia.org/wiki/Harvest_Moon_(album)
  3. https://ultimateclassicrock.com/neil-young-harvest-moon-album-released/
  4. https://www.angelfire.com/rock2/traces/pages/HMreview.html
  5. https://happymag.tv/harvest-moon-the-album-which-saved-neil-youngs-hearing/
  6. https://www.classicrockreview.com/2012/06/1992-neil-young-harvest-moon/
  7. https://www.thisisdig.com/feature/harvest-moon-neil-young-album/
  8. https://neilyoung.warnerrecords.com/en/neil-young/harvest-moon-cd/093624505723.html
  9. https://thrasherswheat.org/tnfy/harvestmoon_album.htm
  10. http://neilyoungnews.thrasherswheat.org/2023/03/the-joy-and-heartbreak-of-neil-youngs.html
  11. https://en.apoplife.nl/neil-young-harvest-moon/
  12. https://ontherecord.co/2025/07/16/neil-young-harvest-moon/
  13. http://tel1400.blog.fc2.com/blog-entry-5525.html
  14. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%83%B3_(%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%A0)
  15. https://en.wikipedia.org/wiki/Harvest_(Neil_Young_album)
  16. https://www.bmi.com/news/entry/Tips_from_the_Top_The_Making_of_Neil_Youngs_Harvest
  17. https://www.discogs.com/release/7932645-Neil-Young-Harvest-Moon
  18. https://happymag.tv/engineering-the-sound-neil-youngs-harvest/
  19. https://www.justfortherecord.co.nz/albums/neil-young-harvest-moon/
  20. https://thrasherswheat.org/tnfy/hmoon.html
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