スティーヴ・ミラー・バンド『ペガサスの祈り』

スティーヴ・ミラー・バンド『ペガサスの祈り』
スティーヴ・ミラー・バンド(Steve Miller Band)『ペガサスの祈り』(Book of Dreams)

コンセプトと制作背景

Steve Miller Band(スティーヴ・ミラー・バンド)の10作目となるアルバム『Book of Dreams』(ペガサスの祈り)は、1977年5月10日に発表されました。このアルバムは、前作『Fly Like an Eagle』(1976年)とほぼ同時期、1975年から1976年にかけてサンフランシスコのCBSスタジオで録音された作品です[1][4]。両作は同じセッションから生まれた楽曲群で構成されており、バンドの音楽的成熟とスタイルの完成を象徴しています。

アルバムタイトルやジャケットのペガサスのイラスト(Alton KelleyとStanley Mouseによる)は、夢や幻想、自由な飛翔といったイメージを強く打ち出しており、以降バンドのトレードマークとなりました[4]。

音楽性・サウンドの特徴

『Book of Dreams』は、前作で確立された洗練されたブルース・ロックとポップの融合をさらに推し進め、FMラジオ時代の「スペース・カウボーイ」としてのSteve Millerの地位を確立しました[3]。

  • ギターとキーボードの融合:未来的なシンセサイザーと緻密に重ねられたギターサウンドが特徴で、ポップでありながらもロックの力強さを失わない楽曲が並びます[3]。
  • 多彩な楽曲構成:アップテンポなロックンロール(「Jet Airliner」「Jungle Love」)、ダンサブルな「Swingtown」、叙情的なバラード「Winter Time」や「Wish Upon a Star」、シンセサイザーを用いたインタールード(「Threshold」「Electro Lux Imbroglio」)など、バラエティ豊かな構成です[3][4]。
  • キャッチーなメロディとグルーヴ:シングルカットされた楽曲はどれもキャッチーで、ラジオヒットとしての完成度が高いのが特徴です[3][4]。

参加ミュージシャン

主要メンバーは以下の通りです[4]。

  • スティーヴ・ミラー(Steve Miller):ボーカル、ギター、シンセサイザー、シタール、プロデュース
  • ロニー・ターナー(Lonnie Turner):ベース
  • ゲイリー・マラバー(Gary Mallaber):ドラムス、パーカッション
  • デヴィッド・デニー(David Denny):ギター
  • グレッグ・ダグラス(Greg Douglas):スライドギター
  • バイロン・オールレッド(Byron Allred):ピアノ、シンセサイザー

また、楽曲によってはノートン・バッファロー(Norton Buffalo):ハーモニカ、ボブ・グラウブ(Bob Glaub):ベース、スティーヴン・ムーア(Steven Moore):ドラムス、バックボーカル、レス・デューデック(Les Dudek):リードギターなど、ゲストミュージシャンも参加しています[4]。

制作時のエピソード

「Jungle Love」は、バンドのベーシスト、ロニー・ターナーが友人であるギタリスト、グレッグ・ダグラスを紹介し、ミキシングとマスタリングの最終日に急遽録音された楽曲です。45分ほどでレコーディングされ、その後、グレッグ・ダグラスはバンドに正式加入することになりました[2]。このように、アルバム制作の終盤で重要な楽曲が加わるという、偶然性と即興性のあるエピソードが残されています。

発表時の反響

  • チャート成績:アメリカ、カナダ、日本、ヨーロッパなどでリリースされ、カナダではRPM誌のアルバムチャートで1位を獲得、アメリカでもトップ10入りするなど、バンド最大級のヒット作となりました[1][4]。
  • シングルヒット:「Jet Airliner」(全米8位)、「Jungle Love」(全米23位)、「Swingtown」(全米17位)など、複数のシングルがヒットし、FMラジオで頻繁にオンエアされました[4]。
  • 日本での人気:前作『Fly Like an Eagle』のヒットの余韻もあり、日本でも大きな人気を獲得。邦題「ペガサスの祈り」として発売され、ジャケットのペガサスが象徴的な存在となりました[4]。

特筆すべきこと

  • バンドの象徴的存在へ:本作と前作『Fly Like an Eagle』、そして『The Joker』の3作によって、スティーヴ・ミラー・バンドは世界的なビッグネームとなり、アメリカン・ロックの代表的バンドとしての地位を確立しました[4]。
  • サウンドの進化:シンセサイザーやエレクトロニクスの導入により、従来のブルース・ロックからより洗練されたサウンドへと進化。1970年代後半のアメリカン・ロックの潮流を象徴するアルバムとなりました[3][4]。
  • メンバーの拡充と多様性:新たなメンバーやゲストミュージシャンの参加により、バンドサウンドの幅が広がり、各楽曲ごとに異なる個性が際立っています[4]。
  • アルバムの持続的評価:発表から数十年を経ても、アルバム全体の完成度の高さ、ヒット曲の多さ、そして時代を超えた普遍的な魅力が評価され続けています[3][4]。

まとめ

『Book of Dreams』は、スティーヴ・ミラー・バンドの音楽的ピークを象徴する作品であり、商業的成功と芸術的完成度を両立させた名盤です。洗練されたサウンド、キャッチーなメロディ、バラエティ豊かな楽曲群、そしてバンドの新たな進化を感じさせるアルバムとして、今なお多くのリスナーに愛されています[1][3][4]。

Citations:

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Book_of_Dreams
  2. https://people.com/music/steve-miller-ultimate-hits-commentary/
  3. https://music.apple.com/us/album/book-of-dreams/1440843310
  4. https://ameblo.jp/take-1097-da/entry-12506221003.html
  5. https://www.reddit.com/r/vinyl/comments/10imdwr/how_do_we_feel_about_steve_miller/
  6. https://www.discogs.com/release/5090972-Steve-Miller-Band-Book-Of-Dreams
  7. https://www.vulture.com/2022/11/steve-miller-best-and-worst-music-superlatives.html
  8. https://www.inthestudio.net/online-only-interviews/steve-miller-early-best/
  9. https://www.washingtonpost.com/entertainment/music/steve-miller-cracked-the-code-of-1970s-radio-but-hes-still-raging-against-the-music-industry/2019/10/03/094022f8-d891-11e9-ac63-3016711543fe_story.html
  10. https://rockcellarmagazine.com/steve-miller-playing-for-change-2025-fly-like-an-eagle/
  11. https://www.discogs.com/release/6739286-The-Steve-Miller-Band-Book-Of-Dreams
  12. https://open.spotify.com/album/36G9sqbDXXbE7Mv9GTDMXd
  13. https://www.discogs.com/release/2085432-Steve-Miller-Band-Book-Of-Dreams
  14. https://popdose.com/the-popdose-guide-to-the-steve-miller-band-part-1/
  15. https://www.jwcreates.com/post/judged-by-the-cover-book-of-dreams-ep-5
  16. https://www.davegott.com/music/artist/steve_miller_band/index.html
  17. https://en.wikipedia.org/wiki/Steve_Miller_Band
  18. https://stanleyameyerdesignllc.com/stories/steve-miller-band

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