リッチー・フューレイ『リッチー・フューレイ・バンド・デビュー!!』

『I've Got A Reason』(リッチー・フューレイ・バンド・デビュー!!)は、Richie Furay(リッチー・フューレイ)がPocoやSouther-Hillman-Furay Band(サウザー・ヒルマン・フューレイ・バンド)を経て1976年にリリースした初のソロ名義アルバムです。
コンセプト
この作品は、フューレイがキリスト教信仰に目覚めたことを強く反映しており、彼自身が「プロフェッショナルで商業的、純粋に音楽的にも楽しめる作品だが、深く見ればさらなる意味が込められている」と語っています[6]。ただし、あからさまな布教ではなく、内省的なメッセージが中心となっており、新たな信仰の表現と個人的な再生をテーマにしています[1][2][4]。
音楽性とサウンドの特徴
本作は、フューレイがそれまでのカントリー・ロック色を徐々に脱し、より洗練されたポップ志向のロックサウンドへと移行したことが特徴です[1][2]。プロデュースはマイケル・オマーティアンとビル・シュニーが担当し、AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)的な滑らかさと、時に重厚なストリングスやシンセサイザーが加えられています[1][2]。一方で、過剰なアレンジが楽曲の良さを損なう場面も指摘されており、特に「Mighty Maker」や「Over and Over Again」ではプロダクションの重さが批評の対象となりました[1][2]。
フューレイの透明感あるテナー・ヴォーカルと、メロディアスな楽曲構成はアルバム全体を通して際立っており、彼のソウルフルな歌唱はカントリー・ロックの枠を超えた魅力を放っています[3]。
収録曲とメンバー
アルバムには以下の9曲が収録されています(全曲フューレイまたは共作):
- Look at the Sun
- We'll See
- Starlight
- Gettin' Through
- I've Got a Reason
- Mighty Maker
- You're the One I Love
- Still Rolling Stones
- Over and Over Again
主な参加メンバー:
- リッチー・フューレイ(Richie Furay):ヴォーカル、ギター
- トム・スタイプ(Tom Stipe):キーボード、バックヴォーカル
- ジェイ・トゥルアックス(Jay Truax):ベース、バックヴォーカル
- ジョン・メーラー(John Mehler):ドラムス
- マイケル・オマーティアン(Michael Omartian):キーボード、パーカッション、バックヴォーカル、プロデューサー
- ビル・シュネー(Bill Schnee):プロデューサー
- アル・パーキンス(Al Perkins):ギター
- スティーヴ・クロッパー(Steve Cropper):ギター
- ドン・ガーバー(Don Gerber):バンジョー
- アレックス・マクドゥーガル(Alex McDougall):パーカッション
- ストーミー・オマーティアン(Stormie Omartian)、マーナ・マシューズ(Myrna Matthews)、アン・ホワイト(Ann White)、キャロリン・ウィリス(Carolyn Willis):バックヴォーカル[1][5][8]
このうち、トム・スタイプ、ジェイ・トゥルアックス、ジョン・メーラーは、当時のクリスチャン・ロック・バンド「Love Song」や「The Way」出身で、いわゆる“Jesus Movement”の流れを汲むミュージシャンでした[6]。
制作エピソード
アルバム制作の背景には、フューレイがSouther-Hillman-Furay Band時代にペダルスティール奏者アル・パーキンスを介してキリスト教に触れたことが大きく影響しています[2][4][6]。録音にはクリスチャン・ロック界の有力ミュージシャンが集結し、プロデューサーのオマーティアンも信仰を持つ人物でした[6]。
また、パーカッションのアレックス・マクドゥーガルは、フューレイと旧知の仲で、録音後にはツアーメンバーとしても参加しています[6]。楽曲「Mighty Maker」や「You're the One I Love」には、フューレイの妻ナンシーとの関係修復や家族への思いが込められており、個人的な体験が色濃く反映されています[6]。
発表時の反響
リリース当時、アルバムはビルボードのポップ・アルバム・チャートで130位に留まり、商業的には大きな成功を収めたとは言えませんでした[1][2]。しかし、批評家からは「信仰をテーマにしつつも押し付けがましさのない誠実な作品」「フューレイの個人的な声明」として一定の評価を受けています[1][2]。
特にAllMusicのレビューでは、「新たな信仰を表現しつつも、内省的でありプロセリタイズ(布教)的ではない」「カントリー・ロックからよりポップなロックへの移行が見られる」と評されました[1]。
特筆すべきこと
- 本作はリッチー・フューレイがクリスチャン・ロックのパイオニア的存在となったきっかけの一枚とされており、以降の彼の音楽活動や人生観に大きな影響を与えました[4]。
- 1981年にはMyrrh Recordsから、2003年にはWounded BirdレーベルからCD再発もされています[1]。
- アートワークにはリック・グリフィン(Rick Griffin)がレタリング、ボブ・サイデマン(Bob Seidemann)がフロントカバー写真、メアリー・エレン・マーク(Mary Ellen Mark)がバックカバー写真を撮影するなど著名なアーティストが参加しています[5]。
- 1970年代後半にアサイラム・レーベルで2回のツアーとさらに2枚のリリースを行った後、音楽活動を休止し牧師になりました[1]。しかし、1980年代に入り、牧師としての活動を行いながら音楽活動も再開しています。

まとめ
『I've Got A Reason』は、リッチー・フューレイの音楽的転換点であり、信仰と個人の再生をテーマにした内省的な作品です。カントリー・ロックからポップ・ロックへの移行、豪華なミュージシャン陣、そして誠実なメッセージ性が融合した本作は、商業的成功には至らなかったものの、アーティストとしての新たな一歩を刻んだ重要なアルバムと評価されています[1][2][6]。
Citations:
- https://en.wikipedia.org/wiki/I've_Got_a_Reason
- https://historicalalbumsdatabase.wordpress.com/2022/08/22/the-richie-furay-band-ive-got-a-reason-1976/
- https://sandiegotroubadour.com/richie-furay-through-it-all/
- https://www.last.fm/music/Richie+Furay/+wiki
- https://www.disk-market.com/?pid=178397991
- http://greatest70salbums.blogspot.com/2023/03/20-ive-got-reason-by-richie-furay-band.html
- https://rockcellarmagazine.com/richie-furay-a-mans-claim-to-fame-interview/
- https://www.dailymotion.com/video/x8i6fqz
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- https://mion.tokyo/products/2669739714
- https://www.discogs.com/ja/release/1692219-The-Richie-Furay-Band-Ive-Got-A-Reason
- https://www.discogs.com/release/2537304-The-Richie-Furay-Band-Ive-Got-A-Reason
- https://www.soundfinder.jp/products/view/2144813/The_Richie_Furay_Band___I'VE_GOT_A_REASON
- https://www.jetsetrecords.net/richie-furay-ive-got-a-reason/i/122517567001/
- https://diskunion.net/jazz/ct/list/0/714238
- https://www.westcoast.dk/artists/f/richie-furay/
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- https://www.youtube.com/watch?v=dceRbXz7OS8
- https://www.degruyter.com/document/doi/10.1515/9780271096322-013/pdf?licenseType=restricted
- https://www.toppermost.co.uk/richie-furay/
- https://colomusic.org/podcast/richie-furay-2/
- https://nodepression.com/interview/buffalo-springfield-poco-founder-richie-furay-the-interview/
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- https://www.allmusic.com/album/ive-got-a-reason-mw0000021341
- https://kimsloans.wordpress.com/colorado-local/colorado-1960s/colo-musicians-eld-hand/richie-furay/
- https://www.sessiondays.com/2019/05/1976-the-richie-furay-band-ive-got-a-reason/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Richie_Furay
- https://www.anchorrecord.com/product-page/the-richie-furay-band-i-ve-got-a-reason
- https://www.ebay.co.uk/itm/135574182414
- https://rocknrolldentist.wordpress.com/tag/richie-furay/
- https://www.youtube.com/watch?v=G9PU5Akr1_o
- https://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/19401159.2024.2338957
- http://www.classicbands.com/RichieFurayInterview.html
- https://www.allmusic.com/artist/richie-furay-mn0000352444
- https://www.discogs.com/ja/release/2821716-Richie-Furay-Ive-Got-A-Reason
- https://tower.jp/item/965703
- https://ontherecord.co/2022/05/12/the-richie-furay-band-ive-got-a-reason-super-hot-stamper-quiet-vinyl/
- https://diskunion.net/rock/ct/detail/TT-DS11-230915-1005537282
- https://sandiegotroubadour.com/richie-furay-through-it-all/
- https://www.bgo-records.com/product/bgocd1310-i-ve-got-a-reason-dance-a-little-light-i-still-have-dreams/