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ジョニ・ミッチェル『ワイルド・シングス・ラン・ファースト』

ジョニ・ミッチェル『ワイルド・シングス・ラン・ファースト』
ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)『ワイルド・シングス・ラン・ファスト』(Wild Things Run Fast)

『Wild Things Run Fast』(ワイルド・シングス・ラン・ファースト)は、カナダ出身のシンガーソングライター、Joni Mitchell(ジョニ・ミッチェル)の11枚目のスタジオアルバムで、1982年10月にリリースされました[4]。このアルバムは、ミッチェルのキャリアにおいて重要な転換点となりました。

『ワイルド・シングス・ラン・ファースト』のコンセプトと音楽性

このアルバムは、ミッチェルの1980年代のポップサウンドへの移行を象徴しています[4]。彼女は、カリブ海旅行中にディスコで聴いたスティーリー・ダン、トーキング・ヘッズ、そしてザ・ポリスなどの人気バンドの音楽からインスピレーションを得たと語っています[4]。特にザ・ポリスの影響が大きく、「彼らのリズムのハイブリッド、ドラムの配置、ドラムのサウンドが、よりリズミックなアルバムを作るきっかけとなった」と述べています[1][3][4]。

アルバムのサウンドは、ロック、ファンク、ニューウェーブ、AORなどの要素が混在しており、時に混乱しているようにも感じられますが、奇妙な満足感も与えています[3]。ジャズのイントネーションは、カクテルチェリーのようなアクセントでアクセントを添えている。ソウルは冷たく、ロックは脆く高音で、歯切れの良い輝きを放っている[1]。

制作エピソード

ミッチェルは当初、ザ・ポリスをバッキングバンドとして起用することを考えていましたが、実現しませんでした[1]。代わりに、新しい夫となるラリー・クライン(Larry Klein)との出会いが、アルバムの方向性を決定づけました[6]。クラインはトランペット奏者のフレディ・ハバードとの経験からジャズの要素を取り入れつつ、ヴィニー・カリウタのドラムサウンドと完璧にマッチする現代的なロックの感覚を持ち込みました[6]。

参加ミュージシャン

本作には当時の西海岸を代表する一流ミュージシャンが多数参加しています。

  • Joni Mitchell(ジョニ・ミッチェル):ヴォーカル、アコースティック/エレクトリックギター、ピアノ
  • Larry Klein(ラリー・クライン):ベース、リズムアレンジ
  • Vinnie Colaiuta(ヴィニー・カリウタ):ドラム
  • John Guerin(ジョン・ゲラン):ドラム
  • Steve Lukather(スティーヴ・ルカサー):ギター
  • Michael Landau(マイケル・ランドウ):ギター
  • Larry Carlton(ラリー・カールトン):ギター
  • Wayne Shorter(ウェイン・ショータ):ソプラノサックス
  • Russell Ferrante(ラッセル・フェランテ):シンセサイザー
  • Larry Williams(ラリー・ウィリアムズ):シンセサイザー、サックス
  • Victor Feldman(ヴィクター・フェルドマン):パーカッション
  • James Taylor(ジェームス・テイラー):バックヴォーカル
  • Lionel Richie(ライオネル・リッチー):バックヴォーカル

このほかにもKenny Rankin(ケニー・ランキン)やCharles Valentino(チャールズ・ヴァレンティノ)などがコーラスで参加し、豪華な布陣がミッチェルの新たな音楽的挑戦をサポートしました[2][7][5]。

反響と評価

『Wild Things Run Fast』は、ミッチェルのキャリアの中で最も商業的な作品の一つとなりました。アルバムはイギリスで32位、アメリカで25位にランクインし、シングル「You're So Square」はアメリカで47位を記録しました[8]。

批評家の反応は概ね好意的でした。『The Boston Phoenix』のケン・エマーソンは、このアルバムを「『Hejira』以来の最高傑作であり、『Court and Spark』以来最も商業的な作品」と評しました[4]。『Rolling Stone』誌も、『For the Roses』や『Clouds』に匹敵する素晴らしい作品だと評価しています[7]。

特筆すべき点

  1. このアルバムは、ミッチェルの個人的な幸福と新しい恋愛を反映しています。ラリー・クラインとの関係が、アルバム全体に明るさと喜びをもたらしています[6]。
  2. オープニング曲「Chinese Cafe/Unchained Melody」は、ミッチェルの過去の経験(娘の養子縁組)を暗示する告白的な歌詞と、ライチャス・ブラザーズの「Unchained Melody」のカバーを巧みに組み合わせています[3]。
  3. タイトル曲「Wild Things Run Fast」は、ザ・ポリスを思わせる力強いリズムと、ミッチェルのダイナミックなコードを特徴としています[3]。
  4. 「Moon At The Window」は、アルバム中最も強い楽曲の一つとされ、ヴィニー・カリウタの繊細なブラシワークとクラインの美しいフレットレス・ベースが際立っています[6]。
  5. ベーシストのラリー・クラインの貢献が大きく、このアルバムは1980年代の優れたベース・レコードの一つとも評されています[8]。

『ワイルド・シングス・ラン・ファースト』は、ジョニ・ミッチェルの音楽的冒険心と、1980年代の音楽シーンへの適応力を示す重要な作品として、彼女のディスコグラフィーに刻まれています。

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Citations:
[1] https://jonimitchell.com/music/album.cfm?id=14
[2] https://www.youtube.com/watch?v=HF9bPLgA3aw
[3] https://jonimitchell.com/library/view.cfm?id=5842
[4] https://en.wikipedia.org/wiki/Wild_Things_Run_Fast
[5] https://www.theabsolutesound.com/articles/joni-mitchell-wild-things-run-fast/
[6] https://somethingelsereviews.com/2014/04/08/on-second-thought-joni-mitchell-wild-things-run-fast-1982/
[7] https://www.rollingstone.com/music/music-album-reviews/wild-things-run-fast-111244/
[8] https://movingtheriver.com/2022/10/18/joni-mitchell-wild-things-run-fast-40-years-on/
[9] https://www.reddit.com/r/JoniMitchell/comments/ldgay8/wild_things_run_fast_appreciation_thread/
[10] https://www.discogs.com/release/3216839-Joni-Mitchell-Wild-Things-Run-Fast
[11] https://open.spotify.com/track/35qsoHv4pt4YEmhEd0IOQZ

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