アメリカ『風のマジック』

America(アメリカ)の1982年リリースのアルバム『View from the Ground』(邦題:風のマジック)は、バンドにとって10枚目の重要な転換点となった作品です。
音楽性とサウンドの特徴
このアルバムは、Americaの従来のアコースティックなフォークロックサウンドから、より洗練されたポップロックサウンドへの移行を示しています[1][4]。プロデューサーのラス・バラード(Russ Ballard)の影響により、キャッチーなメロディと滑らかな制作が特徴となっています[4]。アルバム全体を通して、美しいハーモニーと爽やかなサウンドが維持されていますが、同時に80年代的な要素も取り入れられています[4]。
制作時のエピソードと参加ミュージシャン
- ダン・ピークの脱退:1977年にダン・ピーク(Dan Peek)がグループを離れ、ゲリー・ベックリーとデューイ・バネルの2人体制となっていました。
- プロデューサーの起用:ラス・バラード(Russ Ballard)とボビー・コロンビー(Bobby Colomby)がプロデューサーとして参加し、特にラス・バラードの貢献が大きかったと言えます。
- カバー曲の採用:オリジナル曲に加え、他のアーティストの楽曲もカバーしています。
『View from the Ground』の制作には、多くの著名ミュージシャンが参加しました[6]。
アメリカ
- ゲリー・ベックリー(Gerry Beckley):ボーカル、ギター、キーボード
- デューイ・バネル(Dewey Bunnell):ボーカル、ギター
主なゲスト・ミュージシャン
- スティーブ・ルカサー(Steve Lukather)、ハドリー・ホッケンスミス(Hadley Hockensmith)、ディーン・パークス(Dean Parks)、ビル・マミー(Bill Mumy):ギター
- ジャイ・ワインディング(Jai Winding):キーボード
- マーク・イシャム(Mark Isham):シンセサイザー
- マイク・ポーカロ(Mike Porcaro)、ブラッド・パーマー(Brad Palmer):ベース
- ジェフ・ポーカロ(Jeff Porcaro)、アルヴィン・テイラー(Alvin Taylor):ドラムス
- クリストファー・クロス(Christopher Cross)、マイケル・マクドナルド(Michael McDonald)、カール・ウィルソン(Carl Wilson)、トム・ケリー(Tom Kelly)、ティモシー・B・シュミット(Timothy B. Schmit):バックグラウンドボーカル
また、俳優でもあるビル・マミーがギター演奏と作曲で貢献しており、「Never Be Lonely」などの曲を共同で書いています[6]。
発表時の反響と特筆すべき点
このアルバムは、ダン・ピークが脱退して5年後のAmericaにとって重要なカムバック作となりました[1][3]。米国のビルボードアルバムチャートで41位を記録し、2つのヒットシングルを生み出しました[1][3]。
特に、ラス・バラード作の「You Can Do Magic」(邦題:風のマジック)は大ヒットとなり、ビルボードシングルチャートで8位、アダルトコンテンポラリーチャートで5位を記録しました[1][3]。この曲は、Americaにとって久々のトップ10ヒットとなりました[4]。
2つ目のシングル「Right Before Your Eyes」(別名「Rudolph Valentino」)も、ビルボードシングルチャートで45位、アダルトコンテンポラリーチャートで16位とヒットしました[1][3]。
- アルバムジャケット:緑の草原が遠くまで広がるデザインが、アルバムの雰囲気を視覚的に表現しています。日本での邦題「風のマジック」は、このジャケットからインスピレーションを得たと考えられます。
- ラス・バラードの貢献:優れたメロディメイカーとして知られるラス・バラードが、「風のマジック」と「Jody」の2曲を提供し、バンドの復活に大きく貢献しました。
- カバー曲の選曲:「Right Before Your Eyes」(イアン・トーマス作)や「Desperate Love」(レニー・ルブランのカバー)など、他のアーティストの楽曲を巧みに取り入れています。
- バンドの復活:ダン・ピークの脱退後、しばらく低迷していたアメリカにとって、このアルバムは復活を告げる重要な作品となりました。
- サウンドの進化:伝統的なアコースティックサウンドを保ちつつ、より現代的なポップロックの要素を取り入れることで、新しいファン層の獲得にも成功しました。
批評と評価
AllMusicの批評では、「風のマジック」と「Right Before Your Eyes」の2曲に高い評価が与えられましたが、アルバム全体としては「例外的にスリックなサウンドながら平凡な作品」と評されています[6]。
一方で、日本の音楽評論家からは、アルバムジャケットの緑の草原が広がる爽やかなイメージと、「風のマジック」という邦題の適切さが評価されています[4]。

まとめ
『View from the Ground』は、Americaの音楽的変遷を示す重要な作品であり、80年代のポップロックサウンドを取り入れつつも、グループの特徴である美しいハーモニーと爽やかなメロディを維持しています。著名ミュージシャンの参加や、ヒットシングルの成功により、Americaの復活を印象づけるアルバムとなりました。
Citations:
[1] https://en.wikipedia.org/wiki/View_from_the_Ground
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/America_(band)
[3] https://www.sessiondays.com/2014/09/1982-america-view-ground/
[4] https://warmbreeze.jp/music/america-view-from-the-ground
[5] https://www.allmusic.com/album/a-view-from-the-ground-mw0000312161
[6] https://www.qobuz.com/nz-en/album/view-from-the-ground-america/0724381849750