サイモン&ガーファンクル『水曜の朝、午前3時』

Simon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)のデビュー・アルバム『Wednesday Morning, 3 A.M.』(水曜の朝、午前3時)は、1964年10月19日にColumbia Recordsからリリースされました[1][6][7]。
『Wednesday Morning, 3 A.M.』のコンセプト
アルバムのカバーには「exciting new sounds in the folk tradition(フォーク伝統における刺激的な新しいサウンド)」というサブタイトルが付されており、当時のアメリカン・フォーク・リバイバルの流れを汲みつつ、二人の新たな音楽的個性を提示することが意図されていました[1][4][6]。
本作のコンセプトは、フォークの伝統的な精神と現代的な感性の融合です。社会的・宗教的なテーマや、個人的な物語、反戦・人権などのメッセージが織り込まれています。特に「He Was My Brother」では、公民権運動で命を落とした友人Andrew Goodmanに捧げられており、社会的な意識が強く反映されています[1][4][7]。
音楽性・サウンドの特徴
『水曜の朝、午前3時』は、全編アコースティック・サウンドで構成されており、ギターのフィンガーピッキングと二人の美しいハーモニーが際立ちます[3][4][6]。本作のサウンドは、後のフォークロック的アプローチとは異なり、純粋なフォーク・サウンドに徹しています[6]。
収録曲はオリジナルとカバーが混在しており、ゴスペル(「You Can Tell The World」「Go Tell It on the Mountain」)、スピリチュアル、ルネサンス音楽のカンティクル(「Benedictus」)、反戦歌(「Last Night I Had the Strangest Dream」「The Sun Is Burning」)、ボブ・ディランのカバー(「The Times They Are a-Changin'」)など、多彩なフォーク・ソングが並びます[4][7]。
アルバムのタイトル曲「Wednesday Morning, 3 A.M.」は、静謐でメランコリックな雰囲気を持ち、夜明け前の不安と静けさが繊細に表現されています[3][4]。また、「The Sound of Silence」のオリジナル・アコースティック・バージョンも収録されており、後のエレクトリック・バージョンとは異なる素朴な魅力があります[6]。
制作時のエピソード
プロデューサーはトム・ウィルソン(Tom Wilson)、エンジニアはロイ・ハリー(Roy Halee)が担当しました[1][7]。二人は元々「Tom and Jerry」という名義で活動していましたが、1963年に再結成し、グリニッジ・ヴィレッジのクラブで演奏していたところをウィルソンに見出され、Columbiaと契約しました[5][7]。
レコーディングは1964年3月10日から31日にかけて、ニューヨークのColumbia 30th Street Studioで行われました[1][7]。当初はほぼ全曲を二人だけで録音し、シンプルなアコースティック・アレンジに徹しています[6]。
アルバム発表後、商業的には全く成功せず、発売から8か月でわずか1,000枚しか売れませんでした[1][4][5]。この失敗により、ポール・サイモンは単身ロンドンへ渡りソロ活動を開始、アート・ガーファンクルは大学に戻ることとなります[1][5]。
参加ミュージシャン
本作の演奏はほぼサイモン&ガーファンクルの二人によるものですが、プロデューサーのトム・ウィルソンが後に「The Sound of Silence」のエレクトリック・バージョン制作時にセッション・ミュージシャンを起用しています(ただし、オリジナル・アルバムには関与していません)[1][4]。

発表時の反響
アルバムはリリース当初、批評的にも商業的にも芳しい評価を得られませんでした[1][4][5]。当時はビートルズを筆頭とするブリティッシュ・インヴェイジョンの時代であり、アメリカン・フォークの人気は下火になっていました[4]。
しかし、1965年にプロデューサーのトム・ウィルソンが「The Sound of Silence」にエレクトリック楽器をオーバーダビングし、シングルとしてリリースしたことで状況が一変します。この新バージョンが大ヒットし、アルバムも1966年に再発売されて全米ビルボード200で30位まで上昇しました[1][7]。
特筆すべきこと
- 「He Was My Brother」は実際にサイモンの友人で公民権運動で殺害されたアンドリュー・グッドマン(Andrew Goodman)に捧げられている[1][4][7]。
- 宗教的・聖書的なモチーフが多く、特に「Benedictus」や「Sparrow」などは聖書の引用や寓話的表現が目立ちます[4]。
- 「The Sound of Silence」のアコースティック・バージョンが初収録されている点は、後のフォークロック時代への橋渡しとして重要です[6]。
- アルバム全体を通して、社会問題への関心と詩的なリリシズムが同居しており、ポール・サイモンのソングライターとしての資質が既に明確に現れています[2][3][4]。

まとめ
『水曜の朝、午前3時』は、サイモン&ガーファンクルの原点であり、フォークの伝統に根ざしつつも、現代的な感性と社会的メッセージを内包した意欲作です。商業的には失敗作とされがちですが、その後の二人の飛躍や、アメリカ音楽史における意義を考える上で、再評価に値するアルバムです[4][6][7]。

Citations:
- https://en.wikipedia.org/wiki/Wednesday_Morning,_3_A.M.
- http://paulsimonsongs.blogspot.com/2009/10/wednesday-morning-3-am.html
- https://wqhs.upenn.edu/the-reworking-of-wednesday-morning-3-a-m-a-forgotten-mistake/
- https://artandtheology.org/2017/10/17/wednesday-morning-3-a-m-by-simon-and-garfunkel-album-review/
- https://abchandorkar.wordpress.com/2023/06/22/how-it-all-began-wednesday-morning-3-a-m/
- https://simonandgarfunkel.com/music/wednesday-morning-3-am/
- https://www.flowerpowerrecords.com/product-page/simon-garfunkel-wednesday-morning-3am-1964-uk
- https://www.discogs.com/master/27849-Simon-Garfunkel-Wednesday-Morning-3-AM
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E6%9B%9C%E3%81%AE%E6%9C%9D%E3%80%81%E5%8D%88%E5%89%8D3%E6%99%82
- https://aroundandaroundcom.wordpress.com/reviled-albums-they-love-to-hate/wednesday-morning-3-a-m/