クイーン『ライヴ・キラーズ』
Queen（クイーン）の『Live Killers』（ライヴ・キラーズ）は、1979年6月にリリースされたバンド初のライブアルバムで、彼らの絶頂期のステージパフォーマンスを余すところなく記録した歴史的な作品です。1979年1月から3月にかけて行われた「Jazz Tour」の欧州公演（ドイツ・フランクフルト、フランス・パリ、リヨンなど計28公演）から収録され、当時のライブセットリストをほぼ網羅する2枚組構成が特徴です[4][7][36]。
コンセプトと音楽性
「生のエネルギーをそのまま伝える」という理念のもと、スタジオ版とは異なるアレンジが多数採用されました。オープニングの「We Will Rock You (Fast)」はハイテンポのハードロック調に再構築され、観客の熱狂を即座に引き込む演出が施されています[3][6]。メドレー形式で組まれた「Death On Two Legs」「Killer Queen」「Bicycle Race」「I'm In Love With My Car」では、スタジオ版のポップさを保ちつつ、ライブならではの即興的要素が加えられています[3][39]。
サウンド面では、ブライアン・メイのギターソロが際立つ12分超の「Brighton Rock」や、観客と一体となった「Love of My Life」のアコースティック・バージョンがハイライト[6][38]。特に「Bohemian Rhapsody」では、ライブ再現の難しさを逆手に取り、事前録音したオペラ部分と生演奏をシームレスに融合させる技術的革新が見られます[3][40]。
制作の舞台裏
最大の特徴は複数公演の編集を駆使した構成にあります。1曲の中で異なる会場の音源を繋ぎ合わせる編集が20カ所以上確認されており[1][39]、例えば「Get Down, Make Love」ではフランクフルト、リヨン、バルセロナ、パリの4公演が使用されています[39]。ボーカルトラックのオーバーダビングも頻繁に行われ、ロジャー・テイラーは「唯一本物なのはバスドラムだけ」と冗談交じりに語るほどでした[5][38]。
ミキシングはバンド初の自主作業となりましたが、完成品に対しメンバーは不満を表明。ブライアン・メイは「ライブ録音の音質限界に悩まされた」と回想し[4][5]、特に観客ノイズと楽器音のバランス調整に苦労したと述べています[5][38]。
参加メンバーとサウンド設計
Qeen
- フレディ・マーキュリー（Freddie Mercury）：リードボーカル、ピアノ
- ブライアン・メイ（Brian May）：ギター、バックボーカル
- ロジャー・テイラー（Roger Taylor）：ドラム、タンバリン、ティンパニ、バックボーカル、「I'm in Love with My Car」のリードボーカル、「Sheer Heart Attack」の共同リードボーカル
- ジョン・ディーコン（John Deacon）：ベースギター、バックボーカル、トライアングル
- プロデューサー・マスタリング：ジョージ・マリノ（George Marino）
通常編成の4人に加え、ツアー・クルー約20名がステージ設営を担当[36]。照明デザインには「ピザオーブン」と呼ばれる巨大回転式ライトを採用し、視覚的スペクタクルを追求[7]。音響面ではマルチトラック録音機材を駆使し、ギターアンプのフィードバック音など「生」の瑕疵も意図的に残すことで臨場感を演出しました[1][39]。
トラック・リスト
Side A
- ウィ・ウィル・ロック・ユー（We Will Rock You （Fast Version）） - 3：29
- レット・ミー・エンターテイン・ユー（Let Me Entertain You） - 3：05
- デス・オン・トゥー・レッグス（Death on Two Legs） - 3：32
- キラー・クイーン（Killer Queen） - 1：59
- バイシクル・レース（Bicycle Race） - 1：29
- アイム・イン・ラヴ・ウィズ・マイ・カー（I'm in Love with My Car） - 2：02
- ゲット・ダウン・メイク・ラヴ（Get Down, Make Love） - 4：31
- マイ・ベスト・フレンド（You're My Best Friend） - 2：07
Side B
- ナウ・アイム・ヒア（Now I'm Here） - 8：43
- ドリーマーズ・ボール（Dreamer's Ball） - 3：42
- ラヴ・オブ・マイ・ライフ（Love of My Life） - 4：59
- '39（ '39） - 3：26
- 炎のロックンロール（Keep Yourself Alive） - 4：02
Side C
- ドント・ストップ・ミー・ナウ（Don't Stop Me Now） - 4：28
- 永遠の翼（Spread Your Wings） - 5：15
- ブライトン・ロック（Brighton Rock） - 12：14
Side D
- ボヘミアン・ラプソディ（Bohemian Rhapsody） - 5：52
- タイ・ユア・マザー・ダウン（Tie Your Mother Down） - 3：42
- シアー・ハート・アタック（Sheer Heart Attack） - 3：35
- ウィ・ウィル・ロック・ユー（We Will Rock You） - 2：49
- 伝説のチャンピオン（We are the Champions） - 3：28
- ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン（God Save the Queen） - 1：32
発表時の反響と評価
批評家からの評価は二分され、『Rolling Stone』は「スタジオ版の輝きを欠く」と酷評[34][38]。『Smash Hits』は10点満中3.5点と低評価をつけました[4]。これに対し、『Record Mirror』は「シャンパンとバラを持ち出すべき勝利」と絶賛[7]。商業的には英国3位・全米16位を記録し、各国でゴールドディスクを獲得するヒットとなりました[4][8]。
時を経た現在では「1970年代クイーンを体感する最重要資料」との再評価が定着[3][17]。プログレッシブ・ロック系メディア『Prog Archives』は「録音技術の限界を凌駕するエネルギー」と評し[11]、『AllMusic』は「当時のクイーンの頂点を示す傑作」と位置付けています[13]。
特筆すべき点
- 歴史的資料価値：1979年2月パリ公演の映像化が検討されていたが実現せず、現存する数少ない音源として貴重[7][36]。
- 編集技術の先駆性：デジタル編集が普及する前夜に、アナログテープを切り貼りして「理想のライブ」を構築[1][40]。
- 隠れた名演：日本公演で人気の「Spread Your Wings」が公式ライブ初収録[6][38]。
『Live Killers』は技術的制約と芸術的野心の狭間で生まれた矛盾体でありながら、クイーンのライブ本質を伝えるタイムカプセルとして機能しています[3][38]。完璧さより熱量を優先した編集方針が、逆にバンドの生々しい魅力を現代に伝え続ける結果となったのです[17][40]。
Citations:
[1] https://www.queenlive.ca/lkanalysis.htm
[2] https://en.apoplife.nl/subarticle/queen-live-killers-liner-notes/
[3] https://www.loudersound.com/features/why-its-time-to-add-queens-live-killers-to-the-pantheon-of-truly-great-live-albums
[4] https://en.wikipedia.org/wiki/Live_Killers
[5] https://en.apoplife.nl/live-killers-goodbye-to-my-childhood-heroes-queen/
[6] https://ultimateclassicrock.com/queen-live-killers/
[7] https://www.queenonline.com/news/live-killers-45-years-on
[8] https://www.udiscovermusic.com/stories/queen-live-killers-album/
[9] https://www.discogs.com/release/900381-Queen-Live-Killers
[10] https://forums.stevehoffman.tv/threads/why-is-the-sound-quality-on-queen-live-killers-so-bad.241896/page-2
[11] https://www.progarchives.com/album.asp?id=8213
[12] http://www.queenvault.com/livekillers.html
[13] https://www.allmusic.com/album/live-killers-mw0000676426
[14] https://www.queenlive.ca/livekillers.htm
[15] https://www.reddit.com/r/queen/comments/1ejt1v7/are_live_killers_and_live_magic_the_worst_live/
[16] https://en.wikipedia.org/wiki/Live_Killers
[17] https://www.sputnikmusic.com/review/57148/Queen-Live-Killers/
[18] http://www.ultimatequeen.co.uk/queen/songs/live-killers.htm
[19] https://www.udiscovermusic.com/stories/queen-live-killers-album/
[20] https://www.discogs.com/release/31771532-Queen-Live-Killers
[21] https://www.facebook.com/allthingmusicplus/photos/on-this-date-45-years-agojune-26-1979-queen-live-killers-is-released-all-things-/872102831611502/
[22] https://www.udiscovermusic.jp/stories/queen-became-live-killers
[23] https://www.discogs.com/release/4106098-Queen-Live-Killers
[24] https://brianmay.com/queen-news/2024/06/live-killers-45-years-on/
[25] https://mera-record.stores.jp/items/6673d742471cb3083920dfbe
[26] https://www.queenconcerts.com/official-releases/1979-queen-live-killers.html
[27] https://www.discogs.com/ja/master/7434-Queen-Live-Killers
[28] https://www.discogs.com/master/7434-Queen-Live-Killers
[29] https://www.etsy.com/listing/1238873129/queen-live-killers-vinyl
[30] https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%BA
[31] https://www.facebook.com/Queen/posts/released-otd-1979-queen-live-killers-the-bands-first-live-album-more-on-the-albu/1064150828402225/
[32] https://open.spotify.com/album/4c5Olye77P5ii9DEG7UlZX
[33] https://forums.stevehoffman.tv/threads/queen-live-killers.629588/
[34] https://www.rollingstone.com/music/music-album-reviews/live-killers-191639/
[35] https://www.facebook.com/story.php/?story_fbid=1106850128115714&id=100063722104879
[36] https://www.queenpedia.com/index.php?title=Live_Killers
[37] https://en.apoplife.nl/subarticle/queen-live-killers-liner-notes/
[38] https://diogenescommunications.co.uk/queen-live-killers-forty-ish-years-on
[39] https://www.queenlive.ca/lkanalysis.htm
[40] https://www.youtube.com/watch?v=W2FE30SNjEA
[41] https://www.sputnikmusic.com/review/27355/Queen-Live-Killers/
