マリア・マルダー『サザン・ウインズ』

マリア・マルダー『サザン・ウインズ』
マリア・マルダー(Maria Muldaur)『サザン・ウィンズ』(Southern Winds)

Maria Muldaur(マリア・マルダー)の1978年発表のアルバム『Southern Winds』(サザン・ウインズ)は、彼女のキャリアにおいて重要な転換点となった作品です。

アルバムのコンセプトと音楽性

『サザン・ウインズ』は、マルダーのキャリアを再活性化させるために制作されました[5]。それまでの2作品『Waitress In A Donut Shop』(1974年)と『Sweet Harmony』(1975年)の売り上げが低迷していたため、レーベルのRepriseはプロデューサーの交代を決定しました[5]。

新たに起用されたのは、ホール&オーツの最新3作品をプロデュースしていたクリス・ボンドでした[5]。ボンドの起用により、『サザン・ウインズ』はより洗練された現代的なサウンドを獲得しました。しかし、マルダーのルーツであるブルースやゴスペルの要素も随所に取り入れられています[5]。

サウンドの特徴

アルバムは全体的にタイトでロック色の強い仕上がりとなっています[7]。特に、レオン・ラッセル作の「Make Love to the Music」ではエレクトリックピアノが印象的に使用され[8]、J.J.ケイル作の「Cajun Moon」ではカッティングギターが効果的に用いられています[8]。

参加ミュージシャン

アルバムには豪華なミュージシャンが参加しています。ギタリストのエイモス・ギャレット、レス・デューデック、キーボーディストのマイク・フィニガンらが演奏に加わっています[11]。また、スティーヴィー・ワンダーが「Birds Fly South (When Winter Comes)」でハーモニカを演奏し[5]、ジュニア・ウォーカーが「Heart Of Fire」でサックスを担当しています[5]。

ギター

  • エイモス・ギャレット(Amos Garrett)、ジョン・ハグ(John Hug)、トム・ロテラ(Thom Rotella)、クリストファー・ボンド(Christopher Bond) – ギターおよびシンセサイザーも担当、レス・デューデック(Les Dudek) – スライドギター

キーボード

  • フィル・アーバーグ(Phil Aaberg) – ピアノ・エレクトリックピアノ、マイケル・フィニガン(Michael Finnigan) – 追加キーボードおよびバッキング・ボーカル

ベース

  • スコット・エドワーズ(Scott Edwards)

ドラム/パーカッション

  • エド・グリーン(Ed Greene) – ドラム・シンドラム(電子ドラム)、ゲイリー・コールマン(Gary Coleman) – パーカッション

ハーモニカ

  • デイブ・バージン(Dave Burgin)

ホーン・セクション(管楽器)

  • チャック・フィンドリー(Chuck Findley)、ドン・メンザ(Don Menza)、アーニー・ワッツ(Ernie Watts)、ジム・ホーン(Jim Horn)、ルー・マクリアリー(Lew McCreary)、ロバート・ブライアント(Robert Bryant)

ストリングス

  • ジェームズ・ゲッツオフ(James Getzoff) – コンサートマスター

バッキング・ボーカル

  • エイモス・ギャレット(Amos Garrett)、グレッグ・プレストピノ(Greg Prestopino)、ジム・アンダーソン(Jim Anderson)、マイケル・フィニガン(Michael Finnigan)、ペッパー・ワトキンス(Pepper Watkins)、ローズマリー・バトラー(Rosemary Butler)、ウェンディ・ウォルドマン(Wendy Waldman)

プロデューサー/アレンジ

  • クリストファー・ボンド(Christopher Bond) – プロデューサー、アレンジ、ギター、シンセサイザー

制作時のエピソード

『サザン・ウインズ』の制作は、ハリウッドのSound Labs Inc.スタジオで行われました[5]。前作までと比べてバンド編成はコンパクトになりましたが、それぞれが経験豊富で才能あふれるミュージシャンたちでした[5]。

アルバムには10曲のカバー曲が収録されており、そのうち3曲がレオン・ラッセルの楽曲です[5]。マルダー自身が楽曲を書いていないことについて、一部の批評家から指摘がありました[5]。

発表時の反響

『サザン・ウインズ』は1978年にリリースされましたが、残念ながら商業的には成功を収めることができませんでした。アルバムは米ビルボードチャートで143位にとどまり、マルダーのソロキャリアで最も低い順位となりました[5]。

批評家の反応は分かれました。多くの批評家はアルバムを好意的に評価しましたが、一部の批評家はプロデューサーの交代による音楽性の変化を批判しました[5]。

特筆すべき点

『サザン・ウインズ』は、マルダーの多才な歌唱力を存分に発揮した作品となっています。AOR、ブルース、フォーク、ゴスペル、ポップ、ロックなど、様々なジャンルの楽曲を彼女は難なくこなしています[5]。

特に、アップテンポな楽曲とバラードの両方で彼女の歌唱の魅力が際立っています。「Fall in Love Again」や「(No More) Dancin' In The Street」などのロッキーな曲では力強いヴォーカルを聴かせる一方、「Finally Made Love to a Man」や「Lover Man (Oh Where Can You Be)」といったバラードでは繊細で情感豊かな歌唱を披露しています[5]。

また、このアルバムは当時のロサンゼルスで制作された中で最も高額な作品の1つとされています[5]。

『サザン・ウインズ』は商業的には成功を収めることができませんでしたが、マリア・マルダーの才能と多様性を示す重要な作品として評価されています。彼女のキャリアの転換点となったこのアルバムは、現在でも多くのファンに愛され続けています。

Citations:
[1] https://en.wikipedia.org/wiki/Maria_Muldaur
[2] https://diskunion.net/latin/ct/list/0/19448
[3] https://www.allmusic.com/album/southern-winds-mw0000689408
[4] https://jp.rarevinyl.com/products/maria-muldaur-southern-winds-us-vinyl-lp-album-record-bsk3162-301590
[5] https://dereksmusicblog.com/2016/07/08/maria-muldaur-sweet-harmony-southern-winds-and-open-your-eyes/
[6] https://jp.rarevinyl.com/en/products/maria-muldaur-southern-winds-uk-vinyl-lp-album-record-k56463-333032
[7] https://narurukato.exblog.jp/28621396/
[8] https://ciruelorecords.com/?pid=172801424
[9] https://www.discogs.com/release/9660012-Maria-Muldaur-Southern-Winds
[10] https://fsgprints.com/products/maria-muldaur-southern-winds-lp-album-win-vg5
[11] https://www.disk-market.com/?pid=115325920
[12] https://www.youtube.com/watch?v=w27bLfk_6s8
[13] https://ticro.com/products/m00000316

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