ベック・ボガート & アピス『ベック・ボガート & アピス・ライヴ』

ベック・ボガート & アピス『ベック・ボガート & アピス・ライヴ』
ベック・ボガート&アピス(Beck, Bogert & Appice)『ベック・ボガート&アピス・ライヴ・イン・ジャパン』(Beck, Bogert & Appice Live)

Beck, Bogert & Appice(ベック・ボガート & アピス、BBA)のライブアルバム『Beck, Bogert & Appice Live 』(ベック・ボガート & アピス・ライヴ・イン・ジャパン)は、1973年5月18日・19日に大阪厚生年金会館で録音され、同年10月に日本限定でリリースされた伝説的ライブ・アルバムです。スーパーグループとしての短命さにもかかわらず、彼らの圧倒的な演奏力とライブならではの即興性が詰まった作品として、今なお高い評価を受けています。

『Beck, Bogert & Appice Live』のコンセプトと制作背景

BBAは、ジェフ・ベック(ギター)、ティム・ボガート(ベース/ボーカル)、カーマイン・アピス(ドラム/ボーカル)という、イギリスとアメリカのロック界を代表するミュージシャンが結集したパワートリオです。バニラ・ファッジやカクタスで活躍したボガート&アピスと、ヤードバーズやジェフ・ベック・グループで名を馳せたベックが、長年の構想といくつかの障害(契約問題やベックの交通事故による療養)を乗り越えて1972年に結成。1973年2月にスタジオ・デビュー作を発表し、その直後に日本ツアーを敢行しました[2][6][14]。

『ベック・ボガート & アピス・ライヴ・イン・ジャパン』は、その日本ツアーの大阪公演を記録したもので、バンドのデビュー直後の生々しいエネルギーと、即興性に満ちた演奏が収められています。日本でのみ限定リリースされ、長らく入手困難だったため、コレクターズ・アイテムとしても知られています[7][8][10]。

音楽性・サウンドの特徴

1. 圧倒的なパワーと即興性

  • BBAの音楽性は、ブルースロック、ハードロックを基調に、ジャズやファンクの要素も内包しています。ライブでは、スタジオ盤以上にラウドで荒々しく、即興ジャムや長尺のソロが随所に展開されます[2][3][13]。
  • ベックはこの時期、トーキング・モジュレーター(トークボックス)を多用しており、これはピーター・フランプトンの『Frampton Comes Alive!』(1976年)より2年も早い試みでした[8][10]。

2. セットリストとアレンジ

  • セットリストは、スタジオ盤の楽曲(「Superstition」「Lady」「Livin’ Alone」など)に加え、ヤードバーズ時代の「Jeff’s Boogie」、ジェフ・ベック・グループ時代の「Morning Dew」「Going Down」など、ベックのキャリアを総括する内容[1][4][12]。
  • スティーヴィー・ワンダーの「Superstition」は、ベック自身がワンダーのオリジナル録音に参加していた縁もあり、ライブでも圧巻のパフォーマンスを披露[11][13]。
  • 各楽曲で大胆なアドリブや展開の変化があり、特に「Morning Dew」や「Jeff’s Boogie」ではベックの超絶技巧が炸裂します[3][8]。

3. サウンドの個性

  • ベックのギターは、ブルースを基調としながらも独自のフレーズや音色変化が多彩で、1曲の中で何度もサウンドが変化します。
  • ボガートのベースは攻撃的かつダイナミック、アピスのドラムはジャズの影響も感じさせるパワフルなプレイで、時にボーカルも担当[2][3][14]。
  • ボーカル面は弱点ともされ、専任シンガー不在のためボガートとアピスが分担し、時にベックも歌う(「Black Cat Moan」など)[3][9][13]。

制作時のエピソード

  • 録音は8トラックで行われ、曲順が実際の演奏順と異なる点についてアピスは不満を述べています[7]。
  • バンドは元々2作目のスタジオアルバムも録音していましたが、ベックが納得せず、結局未発表に終わりました[2][14]。
  • 日本公演の音源はベックの意向で長らく廃盤状態となり、1989年のCD化まで入手困難でした[7][8]。
  • 2023年にはベックとアピスがオリジナル・マルチトラックからミキシングし直し、ロンドン公演と共にボックスセットとして世界発売されました[4][5][14]。

参加ミュージシャン

  • ジェフ・ベック(Jeff Beck):ギター、コーラス(一部ボーカル:Black Cat Moan)
  • ティム・ボガート(Tim Bogert):ベース、ボーカル
  • カーマイン・アピス(Carmine Appice):ドラムス、ボーカル

発表時の反響と評価

  • 日本国内ではライブの熱気と演奏力が高く評価され、BBAの名を決定づける作品となりました[7][8]。
  • 海外では日本限定リリースのため希少性が高く、コレクターズ・アイテムとして扱われてきました[8][10]。
  • 批評家は「クリームの後継者」「比類なきスーパーグループ」と称賛しつつも、ボーカルの弱さやバンドとしての一体感の希薄さを指摘する声もありました[9][14]。
  • 一方で、ステージでの即興性や爆発的なパワーは伝説的とされ、特に「Superstition」や「Jeff’s Boogie」はライブバンドとしてのBBAの真骨頂と評されています[1][3][8]。
ベック・ボガート&アピス(Beck, Bogert & Appice)『ベック・ボガート&アピス・ライヴ・イン・ジャパン』(Beck, Bogert & Appice Live):ジャケットの裏面
ジャケットの裏面

特筆すべきこと

  • ベックのトーキング・モジュレーターの使用は、後のロック史にも影響を与えました[8][10]。
  • スタジオ盤では味わえない、ライブならではのアドリブやダイナミックな展開が魅力。
  • バンドの短命さ、幻の2ndアルバム、そして日本限定リリースという背景が、アルバムの伝説性を高めています[6][14]。
  • 2023年のボックスセット再発で、長らく日の目を見なかったロンドン公演音源も公式化され、BBAの全貌が再評価されています[4][5][12][13]。

『ベック・ボガート & アピス・ライヴ・イン・ジャパン』は、BBAというスーパーグループの“瞬間最大風速”を捉えた歴史的記録であり、ジェフ・ベックを中心としたロックの進化と即興性の極致を体感できる一枚です。

  1. https://jeffbeckfan.net/official-album/beck-bogart-appice-live-in-japan/
  2. https://www.allaboutjazz.com/beck-bogert-and-appice-live-in-japan-1973-live-in-london-1974-jeff-beck-rhino-records
  3. http://rockcollector.blog31.fc2.com/blog-entry-6334.html
  4. https://www.jeffbeck.com/beck-bogert-appice-live-in-japan-1973-live-in-london-1974/
  5. https://elusivedisc.com/beck-bogert-appice-live-in-japan-1973-live-in-london-1974-4cd-box-set/
  6. https://classicrockreview.wordpress.com/category/beck-bogert-appice-live-in-japan/
  7. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%88_&_%E3%82%A2%E3%83%94%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3
  8. https://classicrockreview.wordpress.com/tag/beck-bogert-appice/
  9. https://glidemagazine.com/295966/original-supergroup-featuring-jeff-beck-tim-bogert-and-carmine-appice-gets-box-set-treatment-on-live-in-japan-1973live-in-london-1974-album-review/
  10. https://en.wikipedia.org/wiki/Live_in_Japan_(Beck,_Bogert_&_Appice_album)
  11. https://nowspinning.co.uk/beck-bogart-appice-live-in-japan-1973-and-london-1974/
  12. https://www.guitarplayer.com/news/beck-bogert-appice-live-in-japan-live-in-london
  13. https://relix.com/reviews/detail/beck-bogert-appice-live-in-japan-1973-live-in-london-1974/
  14. https://www.sonicperspectives.com/news/beck-bogert-appice-box-set-live-in-japan-1973-live-in-london-1974-due-in-september/
  15. https://tower.jp/item/1618436
  16. https://www.amazon.com/Beck-Bogert-Appice-Live/dp/B000006ZAU
  17. https://forums.stevehoffman.tv/threads/beck-bogert-appice-live-in-japan-1973-london-1974-released-sept-2023.1093936/page-3
  18. https://www.wikiwand.com/en/articles/Live_in_Japan_(Beck,_Bogert_&_Appice_album)
  19. https://wmg.jp/beck-bogert-appice/discography/28086/
  20. https://business.walmart.com/ip/Beck-Bogert-Appice-Beck-Bogert-Appice-Blu-Spec-CD2-Music-Performance-CD/130675886
  21. https://kenta45rpm.com/2023/09/15/live-in-japan-1973-live-in-london-1974-beckbogert-appice/
  22. https://tower.jp/article/feature_item/2018/09/21/0111
  23. https://shop.jeffbeck.com/products/beck-bogert-appice-live-in-japan-1973-live-in-london-1974-4cd
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