ブラッド・スウェット&ティアーズ『血と汗と涙』

ブラッド・スウェット&ティアーズ『血と汗と涙』
ブラッド・スウェット&ティアーズ(Blood, Sweat & Tears)『血と汗と涙』(Blood, Sweat & Tears)

『Blood, Sweat & Tears』(邦題:血と汗と涙)は、アメリカのバンドBlood, Sweat & Tears(ブラッド・スウェット&ティアーズ)による2枚目のアルバムで、1968年12月11日にリリースされました。

『Blood, Sweat & Tears』のコンセプトと背景

このアルバムは、バンドの商業的成功を決定づけただけでなく、ロックとジャズ、ブルースを大胆に融合したサウンドで、ジャンルの垣根を越えた革新的な作品として高く評価されています[1][2][8]。

本作の最大の特徴は、「ブラス・ロック」(ジャズ・ロック)という新しいサブジャンルを確立した点にあります。ブラス・セクションを全面に押し出しつつ、ロックのエネルギーとポップの親しみやすさ、さらにはブルースやソウルの要素まで取り込んだサウンドは、当時としては非常に斬新でした[2][7][8]。

音楽性・サウンドの特徴

  • ジャンルの融合
    本作はロック、ジャズ、ブルース、R&B、ポップス、クラシック音楽までをも自在にミックスしています。特にブラス・セクション(トランペット、トロンボーン、サックスなど)が主役級の存在感を放ち、従来のロックバンドとは一線を画すサウンドを実現しました[2][7][8][9]。
  • 多彩なアレンジ
    オープニングはエリック・サティの「ジムノペディ」を引用したインストゥルメンタルで始まり、ビリー・ホリデイの「God Bless the Child」やトラフィックの「Smiling Phases」など、ジャンルや時代を超えた楽曲のカバーも収録。自作曲と外部作家による楽曲がバランスよく配置され、アルバム全体に幅広い音楽性が感じられます[1][8][9]。
  • リズムと展開の妙
    代表曲「Spinning Wheel」や「You’ve Made Me So Very Happy」、「And When I Die」などは、複雑なリズムや大胆な転調、即興的なソロなど、ジャズの要素が随所に盛り込まれています。一方で、キャッチーなメロディやポップなコーラスもあり、幅広いリスナーに受け入れられるバランス感覚も特徴です[6][7][8]。
  • 録音技術の革新
    本作はCBSの最先端スタジオで、当時最新鋭だった16トラック・レコーダー(Ampex MM-1000)を使用して録音されました。これにより、オーバーダビングやミキシングの自由度が飛躍的に向上し、緻密かつダイナミックなサウンドが実現されています[1]。

参加ミュージシャン

アルバム制作時のメンバーは以下の通りです[5][1]。

  • デビッド・クレイトン・トーマス(David Clayton-Thomas):ヴォーカル、ギター(新たに加入したカナダ出身のヴォーカリストで、パワフルかつソウルフルな歌声がバンドの新しい顔となりました。)
  • スティーブ・カッツ(Steve Katz):ギター、ハーモニカ、ヴォーカル
  • ディック・ハリガン(Dick Halligan):キーボード、トロンボーン、フルート
  • ジェリー・ハイマン(Jerry Hyman):トロンボーン
  • フレッド・リプシウス(Fred Lipsius):アルトサックス、ピアノ
  • ルー・ソロフ(Lew Soloff):トランペット、フリューゲルホルン
  • チャック・ウィンフィールド(Chuck Winfield):トランペット、フリューゲルホルン
  • ジム・フィールダー(Jim Fielder):ベース
  • ボビー・コロンビー(Bobby Colomby):ドラムス

プロデューサーは後にシカゴのプロデューサーとして名を馳せるジェームズ・ウィリアム・ゲルシオ(James William Guercio)で、彼の手腕も成功の大きな要因となりました[1][4][8]。

制作時のエピソード

  • メンバーチェンジと再出発
    デビュー作後、中心人物だったアル・クーパー(Al Kooper)やランディ・ブレッカー(Randy Brecker)らが脱退。残ったメンバーは新たなリードシンガーとしてデビッド・クレイトン・トーマスを迎え、バンドは9人編成となりました[1][8][10]。
  • 選曲の変化
    前作はオリジナル曲中心でしたが、本作では外部作家の楽曲やカバー曲が増加。よりポップ志向になり、商業的成功を狙ったアプローチが見られます[1][8]。
  • 録音環境の進化
    30th Street Studioの16トラック録音機材導入により、従来の4〜8トラックよりも格段に複雑なアレンジや重ね録りが可能となりました[1]。

発表時の反響と評価

  • 商業的成功
    アルバムは全米チャートで通算7週間1位、カナダでも8週間1位を記録。シングル「You’ve Made Me So Very Happy」「Spinning Wheel」「And When I Die」はいずれも全米トップ5入りを果たしました[1][6][7][8]。
  • 批評家・業界からの評価
    1970年のグラミー賞「最優秀アルバム賞」を受賞し、ビートルズの『Abbey Road』など強豪を抑えての快挙となりました[1][7][8]。
  • 文化的影響
    ジャズ・ロックという新ジャンルの確立、ブラス・セクションを主軸としたバンド・サウンドは、同時期に登場したChicagoなど後続バンドにも大きな影響を与えました[2][8][9]。

特筆すべきこと・エピソード

  • バンド内の緊張と変化
    メンバー交代や音楽的方向性を巡る意見の対立が絶えず、成功の裏でバンド内には常に緊張感が漂っていました。特に商業的成功後は、各メンバーの自我や周囲の影響もあり、内部対立が深刻化したといわれます[8][10]。
  • アルバムの多様性と挑戦
    クラシックの引用や長尺のジャム(「Blues: Part II」など)、複雑な楽曲構成など、商業性と芸術性の両立を目指した意欲作です[6][8]。
  • その後の展開
    本作の大成功により一時代を築いたものの、以降のアルバムではオリジナル曲の不足やメンバーの離脱もあり、徐々に勢いを失っていきます。しかし、今なお本作は“ジャズ・ロックの金字塔”として語り継がれています[7][8][10]。

まとめ

『Blood, Sweat & Tears』は、ジャンルを超越したサウンドと高い演奏力、そして新たな録音技術の導入によって、音楽史に大きな足跡を残したアルバムです。デビッド・クレイトン・トーマスの加入によるヴォーカルの刷新、ジェームズ・ウィリアム・ゲルシオのプロデュース、そしてバンド全体のアンサンブルの妙が、唯一無二の作品を生み出しました。商業的にも批評的にも大成功を収め、今なお多くのミュージシャンやリスナーに影響を与え続けています[1][2][8][9]。

Citations:

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Blood,_Sweat_&_Tears_(Blood,_Sweat_&_Tears_album)
  2. https://kentamplinvocalacademy.com/artists-bands/lead/blood-sweat-and-tears/
  3. https://www.analogplanet.com/content/blood-sweat-tears-bloodlines-box-set-analogue-productions
  4. https://lefsetz.com/wordpress/2023/02/24/re-blood-sweat-tears/
  5. https://www.bethelwoodscenter.org/news/detail/blood-sweat-tears-50-years-of-peace-music
  6. https://1001albumsgenerator.com/albums/7qFad1a6Q3kUJ1oAz6fT9m/blood-sweat-and-tears
  7. https://ontherecords.net/2023/04/blood-sweat-tearswhat-happened/
  8. https://ultimateclassicrock.com/blood-sweat-tears-second-album/
  9. https://en.wikipedia.org/wiki/Blood,_Sweat_&_Tears
  10. https://floatingworldrecords.co.uk/blogs/discover/blood-sweat-tears
  11. https://musicaficionado.blog/2017/06/28/and-when-i-die-by-blood-sweat-and-tears/
  12. https://note.com/tamaike1962/n/na9a3fae350a4
  13. https://blog.goo.ne.jp/ikenaijoni/e/fe7ebeb25f2f95c709c84938d2999095
  14. https://www.analogplanet.com/content/bobby-colomby-tells-us-exactly-what-happened-blood-sweat-tears-and-why-groundbreaking-band%E2%80%99s
  15. https://www.discogs.com/release/1456515-Blood-Sweat-And-Tears-Blood-Sweat-And-Tears
  16. https://www.progarchives.com/album.asp?id=15688
  17. https://www.discogs.com/release/409654-Blood-Sweat-Tears-2nd-Album
  18. https://ibighit.com/bts/eng/discography/detail/wings.html
  19. https://www.thevinyldistrict.com/storefront/graded-on-a-curve-blood-sweat-tears-st/
  20. https://glidemagazine.com/288812/55-years-later-revisiting-blood-sweat-tears-rock-meets-jazz-debut-child-is-father-to-the-man/
  21. https://pastdaily.com/2025/01/16/blood-sweat-tears-live-1968/
  22. https://www.thebrokenrecord.net/blood-sweat-tears-how-do-mofis-2-disc-45-rpms-stack-up/
  23. https://www.thevinyldistrict.com/storefront/graded-on-a-curve-blood-sweat-tears-blood-sweat-tears-3/
  24. https://lightmellow.livedoor.biz/archives/50502310.html

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