ボブ・ディラン『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』

ボブ・ディラン『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』
ボブ・ディラン(Bob Dylan)『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』(The Freewheelin' Bob Dylan)

『The Freewheelin' Bob Dylan』(フリーホイーリン・ボブ・ディラン)は、1963年5月27日リリースされたBob Dylan(ボブ・ディラン)のセカンド・アルバムであり、彼のソングライターとしての才能が本格的に花開いた作品です。

『The Freewheelin' Bob Dylan』のコンセプト

前作『Bob Dylan』ではカバー曲が中心でしたが、本作では13曲中11曲がディラン自身のオリジナルとなり、現代的なテーマと個人的な感情が強く打ち出されています[1][6][10]。

このアルバムの最大の特徴は、当時の社会情勢――特に公民権運動や核戦争への不安――を反映したプロテスト・ソングの数々です。「Blowin' in the Wind」や「Masters of War」、「A Hard Rain's a-Gonna Fall」などは、時代の不安や希望を象徴する楽曲として、1960年代のフォーク・シーン、さらにはアメリカ社会全体に大きな影響を与えました[1][11]。一方で、恋愛や喪失、ユーモアを織り交ぜた楽曲も収録されており、社会的メッセージと個人的な感情が絶妙にバランスを取っています[1][3]。

音楽性・サウンドの特徴

本作は「フォーク版ディラン」とも言えるシンプルなサウンドが特徴で、ほとんどの曲はディランがギターとハーモニカだけで弾き語りする形をとっています[2][3]。このミニマルな編成が、歌詞の力強さやメッセージ性をより際立たせています。モノラル・ミックスでは、ディランのボーカルと楽器が一体化し、リスナーに直接語りかけるような親密さと臨場感が生まれています[3]。

また、「Corrina, Corrina」など一部の楽曲ではバンド編成が試みられ、ディラン初のバッキング・バンドとのレコーディングも行われました。これが後のエレクトリック・ディランへの布石となります[1][6]。

制作時のエピソード

アルバム制作は1962年4月から1963年4月にかけてニューヨークのコロンビア・スタジオAで行われました[4]。当初は「Talkin’ John Birch Paranoid Blues」など、より政治色の強い曲も収録予定でしたが、CBSがテレビ出演時の物議を恐れて差し替えを命じ、「Girl from the North Country」などが新たに加えられました[8][10]。

また、当時の恋人でありアルバムジャケットにも登場するスーズ・ロトロがイタリアに留学したことが、ディランの創作意欲に大きな影響を与え、「Down the Highway」や「Don’t Think Twice, It’s All Right」などの楽曲誕生の背景となっています[5][6][8]。

参加ミュージシャン

アルバムの大部分はディラン一人で演奏していますが、「Corrina, Corrina」では以下のミュージシャンが参加しています[1]:

  • ハウィー・コリンズ(Howie Collins):ギター
  • ブルース・ラングホーン(Bruce Langhorne):ギター
  • レナード・ギャスキン(Leonard Gaskin):ベース
  • ジーン・ラミー(Gene Ramey): ダブルベース
  • ハーブ・ローヴェル(Herbie Lovelle):ドラム
  • ディック・ウェルストゥッド(Dick Wellstood):ピアノ

プロデューサー:ジョン・H・ハモンド(John H. Hammond)、トム・ウィルソン(Tom Wilson)[1][6]

ただし、ほとんどの曲はディラン単独で演奏されています[2][3][9]。

トラック・リスト

Side 1

  1. Blowin' in the Wind(風に吹かれて) - 2:47
  2. Girl from the North Country(北国の少女) - 3:18
  3. Masters of War(戦争の親玉) - 4:29
  4. Down the Highway(ダウン・ザ・ハイウェイ) - 3:19
  5. Bob Dylan's Blues(ボブ・ディランのブルース) - 2:19
  6. A Hard Rain's A Gonna Fall(はげしい雨が降る) - 6:47
  7. Don't Think Twice, It's All Right(くよくよするなよ) - 3:37

Side 2

  1. Bob Dylan's Dream(ボブ・ディランの夢) - 4:58
  2. Oxford Town(オックスフォート・タウン) - 1:47
  3. Talkin' World War III Blues(第3次世界大戦を語るブルース) - 6:23
  4. Corrina, Corrina(コリーナ・コリーナ) - 2:40
  5. Honey, Just Allow Me One More Chance(ワン・モア・チャンス) - 1:57
  6. I Shall Be Free(アイ・シャル・ビー・フリー) - 4:45

発表時の反響

リリース直後から『The Freewheelin' Bob Dylan』は高い評価を受け、ディランは「世代の代弁者」として一躍脚光を浴びました[1][6][10]。アメリカでは最高22位、イギリスでは1965年に1位を獲得し、最終的にミリオンセラーとなりました[1][6]。また、「Blowin’ in the Wind」はピーター・ポール&マリーのカバーによって全米2位の大ヒットとなり、ディランの名は一気に広まりました[6][8]。

このアルバムは2002年にアメリカ議会図書館の「National Recording Registry」にも登録され、その文化的・歴史的・芸術的意義が認められています[1][6]。

ジャケット・デザイン

ジャケット写真は、ディランと当時のガールフレンドだったスーズ・ロトロ(Suze Rotolo)がニューヨーク・ウエストヴィレッジの冬の街を寄り添い歩く姿を、写真家ドン・ハンスタイン(Don Hunstein)が撮影したものです[5][7][8]。この自然体で親密なイメージは、当時の他のアルバムカバーとは一線を画し、若者の希望や自由、そして時代の空気感を象徴するアイコンとなりました[7][11]。

裏ジャケットには、ディラン自身や評論家ナット・ヘントフ(Nat Hentoff)による詳細なライナーノーツが掲載され、各曲の背景や意図が解説されています[11]。

特筆すべきこと

  • 社会的・文化的インパクト:本作は公民権運動や反戦運動の象徴となり、後世に多大な影響を与えました[1][11]。
  • ソングライターとしての飛躍:11曲のオリジナル曲によって、ディランは現代フォークの旗手、そして詩的な表現者としての地位を確立しました[1][10]。
  • カバー曲のヒット:「Blowin’ in the Wind」は他アーティストのカバーによっても広く知られ、ディランの作家としての評価を決定づけました[6][8]。
  • アルバム制作の裏話:政治的な理由で収録曲が差し替えられるなど、時代背景が色濃く反映されています[8][10]。
  • 音楽的なシンプルさと力強さ:シンプルなアコースティック編成が、歌詞とメッセージの力を最大限に引き出しています[2][3]。

『The Freewheelin' Bob Dylan』は、個人的な物語と社会的メッセージが融合した、20世紀音楽史における金字塔です。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/The_Freewheelin'_Bob_Dylan
  2. https://altrockchick.com/2020/09/02/bob-dylan-the-freewheelin-bob-dylan-classic-music-review/
  3. https://www.musicdirect.com/music/optical-disc/bob-dylan-the-freewheelin-bob-dylan-limited-to-3-000-numbered-hybrid-mono-sacd/
  4. https://www.interferenza.net/bcs/freew_1.htm
  5. https://vinylstories.ca/bob-dylan-the-freewheelin-bob-dylan-1963/
  6. https://www.siriusxm.com/blog/music-versary-bob-dylan-released-the-freewheelin-bob-dylan-on-may-27-1963
  7. https://bob-dylan.org.uk/archives/11359
  8. https://www.thatericalper.com/2024/10/08/5-fun-facts-about-the-freewheelin-bob-dylan/
  9. https://www.bobdylan.com/albums/freewheelin-bob-dylan/
  10. https://ultimateclassicrock.com/the-freewheelin-bob-dylan/
  11. https://musicpolitics.as.ua.edu/timeline-articles/the-freewheelin-bob-dylan-2/
  12. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9B%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%83%B3
  13. https://tune-sight.com/the-freewheelin-bob-dylan-by-bob-dylan/
  14. https://www.reddit.com/r/bobdylan/comments/xvdv03/what_are_dylans_concept_albums/
  15. https://note.com/ngoakr/n/nb50c167569ef
  16. https://www.navyblue-sound.jp/product/6593
  17. https://www.discogs.com/release/8013007-Bob-Dylan-The-Freewheelin-Session-Tapes
  18. https://en.wikipedia.org/wiki/Bob_Dylan's_recording_sessions
  19. https://www.loc.gov/static/programs/national-recording-preservation-board/documents/FreewheelinBobDylan.pdf
  20. https://www.reddit.com/r/bobdylan/comments/1fijv5n/the_cover_of_the_freewheelin_bob_dylan_the_album/
  21. https://voicemap.me/tour/new-york-city/bleeker-street-art-beat-a-pop-culture-journey-from-east-to-west-village/sites/bob-dylan-s-freewheelin-album-cover
  22. https://www.villagepreservation.org/2011/03/21/it-happened-here-album-covers/
  23. https://songsfromsodeep.wordpress.com/2013/06/01/the-freewheelin-bob-dylan-is-fifty-years-old/
  24. https://www.reddit.com/r/bobdylan/comments/1uk4ij/question_what_setup_did_bob_dylan_use_to_record/
  25. https://faroutmagazine.co.uk/bob-dylan-the-freewheelin-bob-dylan-album-ranked/
  26. https://www.reddit.com/r/bobdylan/comments/pugh4d/personal_album_rankings_1139_the_freewheelin_bob/

SHARE:
この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
あなたへのおすすめ