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サイモン&ガーファンクル『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』

サイモン&ガーファンクル『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』
サイモン&ガーファンクル(Simon & Garfunkel)『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』(Parsley, Sage, Rosemary and Thyme)

『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』(パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム)は、Simon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)が本格的に“アルバム・アーティスト”へと脱皮した、初の完成度の高いスタジオ作品だと言われています。

アルバムのコンセプトと時代背景

本作は1966年10月にコロムビアから発表された3作目のスタジオ・アルバムで、「The Sound of Silence」のヒットで再ブレイクした彼らが、時間をかけて制作に臨んだ最初の作品です。
収録曲はポール・サイモンが前年イギリス滞在中に書いた曲が中心で、フォークの伝統と当時の社会情勢や若者の内面を重ね合わせたような世界観がアルバム全体を貫いています。

タイトルは16世紀から伝わるイングランド民謡「Scarborough Fair」の歌詞から採られており、古いバラッドの幻想性と60年代半ばの現代性とをつなぐ象徴的なフレーズとして機能しています。
社会的な不安と個人的な孤独感が交差する時代に、静かな詩情と知的なアイロニーで応答したアルバムだと評価されています。

『パセリ・セージ…』の音楽性とサウンドの特徴

音楽的にはフォーク・ロックに分類されますが、基本はアコースティックを核にしつつ、曲ごとに表情を変える緻密なアレンジが特徴です。
「Scarborough Fair/Canticle」に代表されるように、古い民謡に反戦歌「The Side of a Hill」の断片をカウンターメロディとして重ねるなど、対位法的でコンセプチュアルな作りが際立っています。

一方で「The 59th Street Bridge Song (Feelin’ Groovy)」の軽やかなリズムや、「The Big Bright Green Pleasure Machine」「A Simple Desultory Philippic」のエレキギターとオルガンを用いたほとんどロック的なサウンドなど、アルバム内の振り幅は意外なほど大きいです。
それらを統一しているのは、ポールとアートの緻密なハーモニーと、詩的でイメージ豊かな歌詞、そして室内楽的ともいえる繊細な音像のコントロールです。

特に「For Emily, Whenever I May Find Her」や「The Dangling Conversation」など、ガーファンクルのリードを活かした曲では、クラシカルな響きのストリングスやハープシコードが用いられ、フォークから一歩踏み出した都会的で知的なサウンドが構築されています。
アルバム終盤の「7 O’Clock News / Silent Night」では、ニュース音声と讃美歌を重ねる大胆なコラージュによって、音としての“現実”を作品内部に引き込んでいます。

制作エピソードと録音面のポイント

前作『Sounds of Silence』がほぼ寄せ集め的に急いで作られたのに対し、本作の制作には約3か月が費やされ、彼らはスタジオワークに強いこだわりを見せました。
ポール・サイモンは録音の多くの側面について完全なコントロールを求め、プロデューサーのボブ・ジョンストンとともに、サウンドの細部まで介入したと言われています。

本作は彼らにとって初めて8トラック・レコーダーを用いたアルバムであり、コロムビアに導入を説得したのも本人たちでした。
ボーカルとギターの分離を良好にするため、オーバーダビングが積極的に用いられ、レーベル側には「レコードを作るのに随分時間をかけるね」と皮肉を言われたというエピソードも残っています。

「Scarborough Fair」のミキシングでは、ふたりがエンジニアのロイ・ハリーの横に付きっきりで作業を見守り、実質的にプロデューサー的な役割を担ったとガーファンクルは回想しています。
また、ニュースと「Silent Night」を重ねたラスト曲は、ベトナム戦争や公民権運動、レニー・ブルース(Lenny Bruce/ユダヤ系アメリカ人のスタンダップ・コメディアンでアメリカにおける言論の自由の象徴となった)の死を伝えるニュースを実際に読み上げさせ、それを録音してコラージュするという、当時としてはかなりコンセプチュアルな試みでした。

参加ミュージシャンとクレジット

デュオ以外の参加ミュージシャンも実力派が揃っており、スタジオ・シーンの厚みを感じさせます。

サイモン&ガーファンクル

  • ポール・サイモン(Paul Simon):ボーカル、ギター、ハーモニカ(「A Simple Desultory Philippic」)
  • アート・ガーファンクル(Art Garfunkel):ボーカル、ピアノ(「7 O’Clock News / Silent Night」)

参加ミュージシャン

  • ハル・ブレイン(Hal Blaine):ドラムス
  • ジョー・サウス(Joe South):エレキギター(「Flowers Never Bend with the Rainfall」)
  • キャロル・ケイ(Carol Kaye):ベース(「Scarborough Fair/Canticle」「Homeward Bound」)
  • ジョン・メサー(John Meszar):ハープシコード(「Scarborough Fair/Canticle」)
  • ラリー・ネクテル(Larry Knechtel):オルガン(「Homeward Bound」)
  • ジョー・モレロ(Joe Morello):ドラムス(「The 59th Street Bridge Song」)
  • ユージン・ライト(Eugene Wright):ダブルベース(同曲)

ニュース読み上げはアナウンサーのチャーリー・オドネル(Charlie O'Donnell/アメリカのラジオおよびテレビの
アナウンサー)が担当し、「The Dangling Conversation」には匿名のストリングス奏者、「The 59th Street Bridge Song」にはリコーダー奏者が参加しています。

主なクレジット一覧

  • ボブ・ジョンストン(Bob Johnston):プロデューサー
  • ロイ・ヘイリー(Roy Halee):エンジニア
  • ボブ・カトー(Bob Cato):カバー写真

トラック・リスト

Side 1

  1. スカボロー・フェア/詠唱(Scarborough Fair / Canticle) - 3:10
  2. パターン(Patterns) - 2:45
  3. クラウディ(Cloudy) - 2:21
  4. 早く家へ帰りたい(Homeward Bound) - 2:29
  5. プレジャー・マシーン(The Big Bright Green Pleasure Machine) - 2:44
  6. 59番街橋の歌[フィーリン・グルーヴィー](The 59th Street Bridge Song [Feelin' Groovy]) - 1:54

Side 2

  1. 夢の中の世界(The Dangling Conversation) - 2:37
  2. 雨に負けぬ花(Flowers Never Bend with the Rainfall) - 2:10
  3. 簡単で散漫な演説(A Simple Desultory Philippic (Or How I Was Robert McNamara'd into Submission)) - 2:19
  4. エミリー・エミリー(For Emily, Whenever I May Find Her) - 2:04
  5. 地下鉄の壁の詩(A Poem on the Underground Wall) - 1:53
  6. 7時のニュース/きよしこの夜(7 O'Clock News/Silent Night) - 2:01

発表時の反響と評価、特筆すべき点

『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』は、発表当時から好意的に受け止められ、後年になるほど評価が高まったアルバムです。
AllMusicのブルース・エダーはこの作品をデュオの「最初の傑作」と位置づけ、高校生から大学生に至る知的な若いリスナーたちに長く愛されてきたと述べています。

BBCのレビューでは、本作が60年代半ばの社会的動揺を映し出しつつ、フォーク・ロックの進化においてボブ・ディランの『Highway 61 Revisited』『Blonde on Blonde』に並ぶ重要作であると評価されています。
『ローリング・ストーン』誌の「史上最高のアルバム500」では200位台にランクインし、時代を越えた“タイムレス”な作品として位置づけられています。

特筆すべきは、アルバム全体の統一感がいわゆるコンセプト・アルバムのように物語的に構成されているわけではないのに、テーマや音色のリフレインによって“ひとつの世界”として感じられる点です。
オープニングの「Scarborough Fair/Canticle」とエンディングの「7 O’Clock News / Silent Night」が、伝統曲と現代社会の雑音を対照させることで円環を成し、フォークの過去と当時の現在、静謐と不安が共存する60年代的感性を見事に封じ込めています。

Citations:

  • https://en.wikipedia.org/wiki/Parsley,_Sage,_Rosemary_and_Thyme
  • https://1001albumsgenerator.com/albums/5dqFVDJ9lPRBCqEzufd8sF/parsley-sage-rosemary-and-thyme
  • https://www.classicrockreview.com/2011/09/1966-simon-garfunkel-psrt/
  • https://culture.fandom.com/wiki/Parsley,_Sage,_Rosemary_and_Thyme
  • https://www.allmusic.com/album/parsley-sage-rosemary-and-thyme-mw0000191849
  • https://www.bbc.co.uk/music/reviews/b2n8/
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