
クリストファー・クロス(Christopher Cross)のデビューアルバム『南から来た男』(Christopher Cross)は、1979年12月27日にリリースされた、ソフトロック史に残る記念碑的な作品です。
コンセプトと音楽性
このアルバムは、洗練されたソフトロックサウンドと巧みなポップミュージックの職人技を融合させた作品として知られています[1][2]。クロスの優れたソングライティング能力と、彼の過小評価されがちなギタースキルが見事に調和しています[3]。
アルバムの特徴的なサウンドは、以下の要素によって形作られています:
- クロスの柔らかく表現力豊かなボーカル
- 緻密に構築されたハーモニーとバッキングボーカル
- 洗練されたストリングスアレンジメント
- 巧みに織り交ぜられたアコースティックギターとエレクトリックギター
- シンセサイザーと伝統的な楽器のバランスの取れた使用
制作エピソード
アルバムは1979年7月、カリフォルニア州ノースハリウッドのWarner Bros. Recording Studiosとテキサス州オースティンのPecan Street Studiosで録音されました[2]。注目すべきは、このアルバムがポピュラー音楽において初期のデジタル録音作品の一つであり、3Mデジタル録音システムを使用していることです[1][2]。
プロデューサーのマイケル・オマーティアンは、クロスのデモテープに魅了され、彼のタレントを引き出すことに尽力しました[9]。録音セッションには、ラリー・カールトンやジェイ・グレイドンなどの一流スタジオミュージシャンが参加し、クロスのビジョンを実現するのに貢献しました[1][3]。
参加ミュージシャン
主要な参加ミュージシャンには以下が含まれます[1][8]:
- クリストファー・クロス(ボーカル、ギター)
- アンディ・サーモン(ベース)
- トミー・テイラー(ドラムス)
- マイケル・オマーティアン(ピアノ、シンセサイザー)
- ロブ・ムーラー(シンセサイザー、エレクトリックピアノ)
特筆すべきゲストミュージシャンとして、マイケル・マクドナルド(バッキングボーカル)、ドン・ヘンリー(バッキングボーカル)、ヴァレリー・カーター(デュエットボーカル)などが参加しています[1]。
反響と評価
『Christopher Cross』は商業的にも批評的にも大成功を収めました。アルバムはビルボードチャートで上位にランクインし、「Sailing」「Ride Like the Wind」などのヒット曲を生み出しました[2][3]。
1981年のグラミー賞では、クロスは史上初めて4つの主要部門(最優秀アルバム賞、最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀新人賞)を独占する快挙を達成しました[5]。この記録は39年間破られることはありませんでした。
ジャケットデザイン
アルバムのジャケットデザインは、ダニー・ヘンダーソンとジェームズ・フラーノイ・ホームズが手がけました[1]。シンプルながら印象的なデザインは、クロスの音楽性を視覚的に表現しています。本作以降、フラミンゴは彼のアルバムのモチーフとして使われている。クロスによれば、最初のアルバムカバーに選ばれた絵にフラミンゴが描かれていたということ以外には意味はないと説明している[5]。
特筆すべき点
- このアルバムは、後にヨットロックと呼ばれるジャンルの代表作となりました[2][3]。
- 収録曲「Sailing」は、クロスの代表曲となり、ヨットロックの原型とも言われています[1]。
- アルバムは米国で500万枚以上を売り上げ、5回プラチナディスクを獲得しています[5]。
『Christopher Cross』は、1970年代末から1980年代初頭のソフトロック/AORシーンを代表する作品として、今もなお高く評価されています。クロスの才能とスタジオミュージシャンたちの技術が見事に融合した本作は、時代を超えて多くのリスナーに愛され続けています。
Citations:
[1] https://www.youtube.com/watch?v=FlHMfbHmjts
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Christopher_Cross_(album)
[3] https://ultimateclassicrock.com/christopher-cross-another-page/
[4] https://en.wikipedia.org/wiki/Bohemian_rhapsody
[5] https://en.wikipedia.org/wiki/Christopher_Cross
[6] https://ontherecord.co/2024/02/09/christopher-cross/
[7] https://www.christophercross.com
[8] https://www.sessiondays.com/2022/02/1979-christopher-cross-christopher-cross/
[9] https://bestclassicbands.com/christopher-cross-debut-review-12-11-22/
[10] https://music.apple.com/jp/album/christopher-cross/1057308470
トラックリスト
Side 1
- セイ・ユール・ビー・マイン(Say You'll Be Mine) - 2:53
- 愛はまぼろし(I Really Don't Know Anymore) - 3:49
- スピニング(Spinning) - 3:59
- もう二度と(Never Be the Same) - 4:40
- 哀れなシャーリー(Poor Shirley) - 4:20
Side 2
- 風立ちぬ(Ride Like the Wind) - 4:30
- ライト・イズ・オン(The Light Is On) - 4:07
- セイリング(Sailing) - 4:14
- ジゴロの芸人(Minstrel Gigolo) - 6:00
アルバムレビュー
夏になれると聴きたくなる音楽があります。
ボビー・コールドウェル、セシリオ&カポノ、ボブ・マーリー、ビーチボーイズ、山下達郎、etc。
このアルバムもそうした、夏にピッタリのというか、まぁ、定番ですね。
夏といっても、ハワイじゃなくフロリダの夏。
フラミンゴがジャケットに描かれているせいでしょうか?
ボビー・コールドウェルあたりもフロリダといった感じですね。
セシリオ&カポノやカラパナあたりはハワイ。
ビーチ・ボーイズやネッド・ドヒニーはウェストコースト。
最近、この手のAORはヨットロックとかいって、揶揄するような風潮もあるようです。
発表は1979年。
当時、自分は高校生。
ラジオで最初にシングルカットされた「風立ちぬ」を聞いたときは、初めて聞く名前の新人なのに、すごくカッコイイなと。
彗星のごとく現れた、という慣用句がぴったりの登場の仕方で、あっという間にヒット。
タイトなリズムとドラマチックな構成で緊張感があり、こりゃ、買いだなと、すぐ、レコード屋さんに行ってアルバムを購入しました。
当時はクリストファー・クロス自身の写真がメディアに載らず、どんな人物が歌っているのか一切わからず覆面ミュージシャンのような風もありました。
記憶が正しければ、彼の姿がメディアに載ったのは、相当、時間を経てからじゃなかったかな…。
当時はその歌声と容姿とのギャップも話題になりました。
今なら、ちょっと問題ですねぇ。

高校生の頃は、ヒットした「風立ちぬ」と「セイリング」ぐらいしか、ちゃんと聞きませんでしたが、ここ数年は、この2曲以外もなかなかいいなぁと通しで聴いています。
楽曲にほどよい緊張感と切れがあり、いずれも爽やか。
そして、参加ミュージシャンがイイんですよね。
新人のアルバムには、もったいないメンツばかり。
例えば
1曲目、「セイ・ユール・ビー・マイン」のバックグラウンド・ボーカルはニコレット・ラーソン、ギターソロはジェイ・グレイドン。
2曲目、「愛はまぼろし」のバックグラウンド・ボーカルはマイケル・マクドナルド、ギターソロはラリー・カールトン。
3曲目、「スピニング」のバックグラウンド・ボーカルはヴァレリー・カーター。
4曲目、「もう二度と」のギターソロはジェイ・グレイドン。
7曲目、「ライト・イズ・オン」のバックグラウンド・ボーカルはドン・ヘンリーとJ.D.サウザー、ギターソロはラリー・カールトン。
9曲目、「ジゴロの芸人」のギターソロはエリック・ジョンソン。
ギターに関しては各々の個性がとてもよく感じられるプレイで、聴かせどころがちゃんとあるのがうれしい。
こんな、豪華なメンバーを集められたのはプロデューサーのマイケル・オマーティアンがよかったのだと思います。