ジノ・ヴァネリ『ナイトウォーカー』

Gino Vannelli(ジノ・ヴァネリ)の1981年作『Nightwalker』(ナイトウォーカー)は、彼のキャリアの中でも特に評価が高いアルバムの一つであり、前作『Brother to Brother』と並ぶ代表作とされています。
コンセプトと制作背景
『ナイトウォーカー』は、ジノ・ヴァネリが1970年代から培ってきたジャズ・ロック、アダルト・コンテンポラリー路線をさらに洗練させた作品です。彼自身が「情熱と正直さ」を音楽の指針にしていると語るように、本作もロマンティックかつドラマティックな世界観が全編に貫かれています[3]。
制作はカリフォルニア州チャッツワースのSmoketree Ranchスタジオで行われ、ヴァネリ兄弟(ジノ、ジョー、ロス)がプロデュース、アレンジに深く関わりました[4][6]。
音楽性・サウンドの特徴
- ジャンルと雰囲気
ジャズ・ロック、アダルト・コンテンポラリーを基調に、シンセサイザーやピアノ、ストリングスを駆使した厚みのあるサウンドが特徴です[1][2]。 - ヴォーカル
ジノの圧倒的な声量と情熱的な歌唱が最大の魅力で、バラードからダイナミックなロックナンバーまで幅広い表現力を発揮しています[2]。 - アレンジ
ジョー・ヴァネリのシンセサイザー、ピアノアレンジがサウンドの核を成し、都会的かつ洗練された雰囲気を演出。ストリングスやサックスも効果的に使われています[4][6]。特筆すべきは、マイク・ミラーのギター演奏とヴィニー・カリウタのドラムスが、アルバム全体のサウンドに大きく貢献していることです[2]。 - 代表曲
「Living Inside Myself」は繊細なバラードで全米6位のヒット、「Nightwalker」はドラマティックなロック色の強いタイトル曲で全米41位を記録しました[1][2]。
制作時のエピソード
- 兄弟による共同作業
ジノ、ジョー、ロスのヴァネリ兄弟がプロデュースやアレンジ、作曲に深く関わり、家族的な結束がサウンドや楽曲の一体感に現れています[2][4][6]。 - スタジオでのこだわり
ジョー・ヴァネリのシンセサイザー・アレンジや、生楽器との融合により、80年代初頭のAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)サウンドを象徴する作品となりました[4][6]。 - エンジニアリングとマスタリング
エンジニアはノーム・キニー(Norm Kinney)、マスタリングは名匠、バーニー・グランドマン(Bernie Grundman)が担当し、音質面でも高いクオリティを誇ります[4][6]。
参加ミュージシャン
- ジノ・ヴァネリ(Gino Vannelli):リードボーカル、バッキングボーカル
- ジョー・ヴァネリ(Joe Vannelli):エレクトリックピアノ、アコースティックピアノ、オルガン、シンセサイザー、ストリングアレンジ
- マイク・ミラー(Mike Miller):エレクトリックギター、アコースティックギター
- ニール・スチューベンハウス(Neil Stubenhaus):ベース
- ヴィニー・カリウタ(Vinnie Colaiuta):ドラムス
- マイク・フィッシャー(Mike Fisher):コンガ、パーカッション
- デイヴィッド・ボラフ(David Boruff):サックス
- ブラッド・コール(Brad Cole):ストリングアレンジ
- ダグ・パリー(Doug Parry)、ステファニー・スプルイル(Stephanie Spruill)、ロス・ヴァネリ(Ross Vannelli)、ジュリア・ウォーターズ(Julia Waters)、マキシン・ウォーターズ(Maxine Waters):バッキングボーカル
このラインナップは、当時のAOR~フュージョン界の名手が揃っており、特にヴィニー・カリウタ(ドラム)は後に世界的なセッションドラマーとして名を馳せます[2][4][6]。
発表時の反響と評価
- チャート成績
アルバムはBillboard 200で15位を記録し、シングル「Living Inside Myself」は全米6位、「Nightwalker」は41位と商業的にも大きな成功を収めました[1][2][8]。 - 批評家・ファンの評価
前作『Brother to Brother』の成功を受けて、より情熱的かつロマンティックな内容として高く評価されました。ジノのヴォーカル、楽曲の格調高さ、アレンジの緻密さが特に称賛されています[2][8]。 - 音楽業界への影響
80年代AORの代表的作品とされ、後のアーティストにも影響を与えました。ジノ自身も本作でグラミー賞ノミネートを果たしています[3][8]。
特筆すべき点・エピソード
- 「Put the Weight on My Shoulders」
静かで情熱的なバラードで、リスナーや批評家から高い評価を受けています。ギターソロや詩の内容も印象的で、「ジノ版『明日に架ける橋』」と評されることも[2]。 - アートワーク
ジャケットのアートディレクションはリア・ルワーク=シャピロ(Ria Lewerke-Shapiro)、写真はマーク・ハナウアー(Mark Hanauer)が担当し、都会的でミステリアスな雰囲気を演出しています[4][6]。 - レーベルとの関係
本作リリース後、次作『Twisted Heart』を巡ってレーベルとの意見対立が発生し、ジノは一時的に活動休止を余儀なくされるなど、アーティストとしての葛藤も経験しています[5]。

総括
『Nightwalker』は、Gino Vannelliの情熱的なヴォーカルと、兄弟を中心とした高度なアレンジ、当時のAORサウンドの粋を集めた名盤です。ヒット曲「Living Inside Myself」や「Nightwalker」を筆頭に、全編にわたって洗練されたメロディとダイナミズムが光ります。制作陣・参加ミュージシャンの豪華さ、そして時代を超えて愛されるその音楽性は、今なお多くのリスナーや音楽家に影響を与え続けています[2][3][6][8]。
Citations:
- https://en.wikipedia.org/wiki/Nightwalker_(album)
- https://warmbreeze.jp/music/gino-vannelli-nightwalker
- https://www.westcoast.dk/artists/v/gino-vannelli/
- https://ameblo.jp/take-1097-da/entry-12769024463.html
- https://ginov.com/bio/
- https://www.sessiondays.com/2018/01/1981-gino-vannelli-nightwalker/
- https://highwiredaze.com/2025/02/07/ginovannelliint1/
- https://www.classicrockmusicwriter.com/2012/11/exclusive-interview-with-international.html
- https://misplacedstraws.com/2025/02/a-conversation-with-vocalist-gino-vannelli.html
- https://forums.stevehoffman.tv/threads/gino-vannellis-nightwalker-the-james-bond-007-theme-the-world-never-heard.343566/
- https://www.dustygroove.com/item/177225/Gino-Vannelli:Nightwalker
- https://merurido.jp/topic.php?srcbnr=74699
- http://www.melodic.net/album/gino-vannelli-nightwalker
- https://www.discogs.com/release/9275750-Gino-Vannelli-Nightwalker
- https://en.wikipedia.org/wiki/Gino_Vannelli
- https://www.discogs.com/release/1789421-Gino-Vannelli-Nightwalker
- https://www.allmusic.com/album/nightwalker-mw0000192200
- https://www.jazzmusicarchives.com/artist/gino-vannelli
- https://www.westcoast.dk/artists/v/gino-vannelli/
- https://forums.stevehoffman.tv/threads/the-first-gino-vannelli-thread.190194/