マイケル・フランクス『シティ・エレガンス』

マイケル・フランクス『シティ・エレガンス』
マイケル・フランクス(Michael Franks)『シティ・エレガンス』(Burchfield Nines)

『Burchfield Nines』(バーチフィールド・ナインズ/邦題:シティ・エレガンス)は、アメリカのシンガーソングライター、Michael Franks(マイケル・フランクス)が1978年に発表した4作目のスタジオ・アルバムです。

コンセプト

アルバムタイトルの『Burchfield Nines』は、画家チャールズ・バーチフィールドの作品にインスパイアされたもので、フランクスがあるパーティーで暖炉の上に飾られていた「大きな赤い数字の9」が描かれた水彩画を見て、そこから自由連想的に言葉を紡いでいったことがきっかけで生まれたとされています[8]。このように、アートや芸術への関心がアルバムの根底に流れており、フランクスらしい知的でウィットに富んだ世界観が全編に漂っています。

音楽性・サウンドの特徴

本作は、ジャズ・ヴォーカルを基調としながらも、AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)や都会的なポップスの要素を融合した、洗練されたサウンドが特徴です。全体的にメロウで落ち着いた雰囲気が漂い、冬のロサンゼルスの都会的な空気感を感じさせるアダルトなグルーヴが魅力とされています[2][4]。

サウンド面では、エウミール・デオダートによるストリングス・アレンジや、スティーブ・ガッド(ドラム)、ウィル・リー(ベース)、ラルフ・マクドナルド(パーカッション)といった一流ミュージシャンによる演奏が、繊細かつ豊かな音像を作り上げています[2][4]。また、音質面でも「当時としては驚くほどのクオリティで、空間の広がりや奥行きが素晴らしい」と高く評価されており、スピーカーのイメージングや微細なニュアンスの再現性を試すのにも適した作品とされています[3]。

ヴォーカル面では、フランクス独特のささやくような歌唱と、ジャズ的なフレージングが際立ちます。例えば「A Robinsong」では、フレーズの強弱やリズムの揺らぎを巧みに使い分け、スティーブ・ガッドのドラムやウィル・リーのウォーキング・ベースと絶妙に絡み合っています[6]。また、歌詞にはウィットやユーモア、都会的な知性が散りばめられており、軽妙な色気と親しみやすさが同居しています[6][8]。

収録曲と楽曲構成

全曲がマイケル・フランクス自身の作詞・作曲によるもので、代表曲には「When the Cookie Jar Is Empty」「A Robinsong」「Wrestle a Live Nude Girl」「Burchfield Nines」「Meet Me in the Deerpark」などがあります[1][7]。アルバム全体を通して、リラックスしたグルーヴと心地よいメロディーが印象的です[9]。

特にタイトル曲「Burchfield Nines」では、9thコードを多用した独特のコード進行(いわゆる“バーチフィールド・ナインズ進行”)が用いられており、複雑でディソナントな響きが“ジャギー”や“アングラー”と形容されることもあります[5]。この進行は、ジャズ理論的にも高度なもので、フランクスのメロディアスなヴォーカルと対照的な緊張感を生み出しています。

参加ミュージシャン

本作には、当時のニューヨークやロサンゼルスのトップ・スタジオ・ミュージシャンが多数参加しています[1][2][4]。

  • Michael Franks – (マイケル・フランクス):ヴォーカル、アコースティックギター(8曲目)
  • Leon Pendarvis – (レオン・ペンダーヴィス):ピアノ(1-7曲目)
  • John Tropea – (ジョン・トロペイ):ギター(1-7曲目)、アコースティックリードギター(8曲目)
  • Will Lee – (ウィル・リー):ベース(1-7曲目)
  • Chuck Domanico – (チャック・ドマニコ):ベース(8曲目)
  • Steve Gadd – (スティーヴ・ガッド):ドラム(1-7曲目)
  • Ralph MacDonald – (ラルフ・マクドナルド):パーカッション
  • Ernie Watts – (アーニー・ワッツ):テナーサックス(2, 5曲目)
  • Bud Shank – (バド・シャンク):フルートソロ(8曲目)
  • Oscar Brashear – (オスカー・ブラシア):トランペット(4曲目)
  • Edgar Lustgarten – (エドガー・ラストガーテン):チェロソロ(8曲目)
  • Eumir Deodato – (エウミール・デオダート):オーケストラアレンジ・指揮
  • Frank DeCaro – (フランク・デカロ):オーケストラ指揮
  • Israel Baker – (イスラエル・ベイカー):コンサートマスター

プロデューサーはトミー・リピューマ(Tommy LiPuma)、録音・ミックスはアル・シュミット(Al Schmitt)という、当時の名匠が制作陣に名を連ねています[1][4]。

制作時のエピソード

タイトル曲の誕生エピソード以外にも、フランクスは本作で「都会的な洗練」と「知的なユーモア」を両立させることを意識していたとされます[8]。また、前作までのカリフォルニア録音から本作ではニューヨーク録音に移行し、よりタイトでリズミカルなバンドサウンドを追求した点も特徴です[6]。

発表時の反響

リリース当時から、ジャズやAORファンを中心に高い評価を受けました。特に音質の良さや、都会的で洗練されたサウンド、フランクスの独特なヴォーカル・スタイルが称賛されました[3]。AllMusicやRolling Stone Jazz Record Guideなどの主要メディアでも好意的なレビューが掲載され、現在でも「ジャズ・ヴォーカル/AORの名盤」として語り継がれています[1][3]。

特筆すべきこと

  • コード進行の独自性:「Burchfield Nines progression」と呼ばれる9thコードを多用した進行は、ジャズ理論的にも高度で、他ジャンルにも影響を与えています[5]。
  • アートとの融合:アルバムタイトルや楽曲の着想にアートが深く関わっており、フランクスの知的な側面が色濃く表れています[8]。
  • 一流ミュージシャンの共演:スティーヴ・ガッド、ウィル・リー、ラルフ・マクドナルド、エウミール・デオダートら、当時のトップ・プレイヤーが集結し、極上のアンサンブルを聴かせてくれます[2][4]。
  • 音質の高さ:アナログからCDへのトランスファーも高品質で、オーディオファイルにも推奨される作品です[3]。

まとめ

『Burchfield Nines』は、マイケル・フランクスの都会的で洗練された音楽性と、知的なユーモア、アートへの愛着が融合した傑作です。AORやジャズ・ヴォーカルの名盤として、今なお多くのリスナーに愛され続けています。

Citations:

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Burchfield_Nines
  2. https://organicmusic.jp/en/products/michael-franks-burchfield-nines
  3. https://www.audioholics.com/music-reviews/michael-franks-burchfield-nines
  4. https://www.guitarrecords.jp/product/17146
  5. https://blog.jambox.io/7922/
  6. https://www.popmatters.com/145953-the-off-handed-cool-of-michael-franks-2495973169.html
  7. https://recordtowntx.com/products/michael-franks-burchfield-nines-lp-album-win
  8. https://www.psaudio.com/blogs/copper/some-old-jazz-guy-exploring-michael-franks-part-1
  9. https://www.groovenutrecords.net/products/detail/18817
  10. https://www.groovenutrecords.net/products/detail/18817
  11. https://www.guitarrecords.jp/product/17146
  12. https://www.hhv.de/en-UZ/records/item/michael-franks-burchfield-nines-976084
  13. https://www.discogs.com/release/12749625-Michael-Franks-Burchfield-Nines
  14. https://music.apple.com/jp/album/burchfield-nines/357949728?l=en
  15. https://www.allmusic.com/album/burchfield-nines-mw0000196046
  16. https://www.dustygroove.com/item/448920/Michael-Franks:Burchfield-Nines
  17. https://www.discogs.com/release/20119630-Michael-Franks-Burchfield-Nines
  18. https://sonyhall.com/shows/
  19. https://www.washingtonpost.com/archive/lifestyle/1990/09/07/franks-goes-for-the-coast/d614c63b-82ee-47d6-af09-144a1d7e0199/
  20. https://insheepsclothinghifi.com/michael-franks-1975-1985/
  21. https://musicbrainz.org/release/70c658ef-1dfd-4430-a299-c621ad7298c2
  22. https://www.youtube.com/watch?v=nAyhdeGEhf4
  23. https://www.youtube.com/watch?v=DB5YQtkHTSk
  24. https://www.discogs.com/release/5511356-Michael-Franks-Burchfield-Nines
  25. https://www.qobuz.com/us-en/album/burchfield-nines-michael-franks/0075992735162
  26. https://www.etsy.com/listing/1669624453/david-soul-self-titled-stereo-vinyl-lp
  27. https://www.etsy.com/listing/1608288532/michael-franks-burchfield-nines-lp
  28. https://andresmusictalk.wordpress.com/tag/the-ojays/
  29. https://en.wikipedia.org/wiki/The_Best_of_Michael_Franks:_A_Backward_Glance
  30. https://open.spotify.com/album/03eSoCth9QZAdFfqhXIx2Z
  31. https://www.discogs.com/release/1154965-Michael-Franks-Burchfield-Nines
  32. https://www.audioholics.com/music-reviews/archives/page/12
  33. https://open.spotify.com/track/1nwbs28yvHMwh89fEKaDTl
  34. https://store.shopping.yahoo.co.jp/astrotunes/a005117.html
  35. https://www.letsconsultoria.com.br/info/84047866.html
  36. https://organicmusic.jp/en/products/michael-franks-burchfield-nines
  37. https://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Franks_(musician)
  38. https://soundsgood-store.com/31/?idx=5099
  39. https://www.sessiondays.com/2018/07/1978-michael-franks-burchfield-nines/
  40. https://www.westcoast.dk/artists/f/michael-franks/
  41. https://en.wikipedia.org/wiki/High_'n'_Dry
  42. https://positive-feedback.com/reviews/music-reviews/john-marks-music-michael-franks-sleeping-gypsy/

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