エイミー・ホーランド『エイミー』

1980年にリリースされたAmy Holland(エイミー・ホーランド)のデビュー・アルバム『Amy Holland』(邦題:エイミー)は、当時の西海岸ソフトロックやAOR(アルバム・オリエンテッド・ロック)の流れを汲みつつ、ポップ、カントリー、ジャズ、ブルースの要素が巧みにブレンドされた作品です[1][2][3]。
『Amy Holland』のコンセプトと音楽性
全体としてはキャッチーなフックとバラードがバランス良く配置され、同時代のケニー・ロギンス(Kenny Loggins)やアンブロージア(Ambrosia)、パブロ・クルーズ(Pablo Cruise)などのサウンドに通じる洗練されたアレンジが特徴です[2]。
アルバムの中心的な楽曲「How Do I Survive」は、明快なポップ・サウンドとエイミーの力強いボーカルが印象的で、当時のラジオでも大きな話題となりました[1][2][4]。また、ダン・フォーゲルバーグ(Dan Fogelberg)の「Stars」やスティーヴィー。ワンダー(Stevie Wonder)の「I'm Wondering」などのカバーも収録されており、幅広い音楽的素養と表現力を示しています[1][2]。
エイミー自身は「母親(Esmereldy)の歌唱スタイルから強い影響を受けた」と語っており、少女のような可憐さと大人の女性の芯の強さが同居する独特の歌声がアルバムの大きな魅力となっています[2][5]。
サウンドの特徴
本作は、マイケル・マクドナルド(Doobie Brothers)がプロデューサーを務め、キーボードやバックボーカル、楽曲提供でも大きく貢献しています[1][2][5][6]。パトリック・ヘンダーソンも共同プロデューサーとして参加し、アレンジや演奏面でも支えています[5][6]。
サウンド面では、以下のような特徴が挙げられます。
- 洗練されたエレクトリックピアノやシンセサイザー
- ホーンセクション(Tom Scott、Plas Johnson、Gary Grantら)
- パーカッション(Lenny Castro)
- ギター(Hadley Hockensmith、John McFee)
- バックボーカル(Wendy Waldman、Linda & Charity McCrary、Michael McDonald他)
これらの一流セッション・ミュージシャンの参加により、当時の西海岸サウンドの粋を集めた仕上がりとなっています[6][7][8]。
制作時のエピソード
制作には約3年を要しました。これはプロデューサーのマイケル・マクドナルドがDoobie Brothersの活動で多忙を極めていたためで、ツアーの合間を縫ってレコーディングが進められました[2]。
エイミー・ホーランドとマイケル・マクドナルドの出会いは1970年代初頭に遡りますが、一度疎遠になった後、Doobie Brothersのライブ会場でエイミーがマイケルに応援のメッセージと電話番号を残したことがきっかけで再会、アルバム制作が始まりました[2]。
楽曲選定については、エイミー自身が大きく関わっており、多くの楽曲が外部作家から持ち込まれたものや、マイケル・マクドナルド、パトリック・ヘンダーソンによる書き下ろし、さらにはエイミー自身の共作も含まれています[1][2]。
「How Do I Survive」のレコーディング時には、スタジオに魔法のような一体感が生まれ、全員が「これはヒットする」と確信したとエイミーは語っています[2]。
参加ミュージシャン
アルバムには以下のような著名なミュージシャンが参加しています[6][7][8]。
役割 | ミュージシャン名 |
---|---|
プロデューサー | Michael McDonald, Patrick Henderson |
キーボード | Michael McDonald, Patrick Henderson |
ギター | Hadley Hockensmith, John McFee, Jim Petteway |
ベース | John Pierce, Donald Boyette, Mike Porcaro, Trey Thompson |
ドラム | Mike Baird, Michael Hossack |
サックス | Tom Scott, Plas Johnson, Cornelius Bumpus |
トランペット | Gary Grant, Ollie Mitchell |
トロンボーン | Dick Hyde |
パーカッション | Lenny Castro |
ハーモニカ | Norton Buffalo |
アコーディオン | Brian Mann |
バックボーカル | Michael McDonald, Wendy Waldman, Linda McCrary, Charity McCrary, Maureen McDonald, Bill Martin, Amy Holland自身 |

発表時の反響と評価
シングル「How Do I Survive」は全米Billboard Hot 100で22位を記録し、エイミー・ホーランドは1981年のグラミー賞「最優秀新人賞」にノミネートされました(受賞はChristopher Cross)[1][2][4][9]。
アルバム自体はBillboard 200で146位と、シングルのヒットに比べるとセールス面では伸び悩みましたが、当時のソフトロック/AORファンからは高く評価されました[4]。また、日本でもテレビ番組「Music Fair」や「Young Oh! Oh!」でのパフォーマンスを通じて認知を広げました[1][4]。
一方で、レーベル(Capitol Records)からの十分なプロモーションや流通がなかったため、ファンがレコード店で入手できないという事態も起きていたとエイミー本人が語っています[2]。
特筆すべきこと
- エイミー・ホーランドの歌声は、少女のような可憐さと大人の包容力を併せ持ち、他のAOR女性ボーカルとは一線を画しています[5]。
- 本作の成功がきっかけで、エイミーは映画『Scarface』や『St. Elmo’s Fire』など数多くの映画音楽にも起用されるようになりました[4][9]。
- 本作は、エイミー・ホーランドとマイケル・マクドナルドのパートナーシップの始まりでもあり、二人は後に結婚し、音楽的にも私生活でも長く協力し合う関係となりました[2][5][9]。
まとめ
『Amy Holland』は、1980年代西海岸AOR/ソフトロックの隠れた名盤として、今なお多くの音楽ファンに愛されています。エイミー・ホーランドの瑞々しいボーカル、マイケル・マクドナルドら一流ミュージシャンによるサウンド、そして時代を超えて響くポップセンスが詰まった一枚です[1][2][5]。
- https://en.wikipedia.org/wiki/Amy_Holland_(album)
- https://vintagerock.com/ira-kantors-vinyl-confessions-how-do-i-survive-amy-holland-at-40/
- https://www.amyhollandmusic.com/bio
- https://rareandobscuremusic.wordpress.com/2013/08/03/amy-holland/
- https://warmbreeze.jp/music/amy-holland-amy-holland
- https://www.discogs.com/release/2406705-Amy-Holland-Amy-Holland
- https://www.sessiondays.com/2017/07/1980-amy-holland-survive/
- https://www.westcoast.dk/artists/h/amy-holland/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Amy_Holland
- https://www.amyhollandmusic.com/press
- https://www.discogs.com/ja/release/8745915-Amy-Holland-Light-On-My-Path
- http://diskheaven.shop-pro.jp/?pid=73255874
- https://www.westcoast.dk/light-on-my-path-new-amy-holland-album/
- https://thegivingarts.com/interview/amy-holland/
- https://www.discogs.com/master/542939-Amy-Holland-Amy-Holland
- https://www.sessiondays.com/2017/03/1980-amy-holland-amy-holland/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Light_on_My_Path
- https://cooperagemke.com/event/amy-lavere-will-sexton-with-long-mama-and-special-guest/
- https://www.sessiondays.com/tag/amy-holland/