ウイングス『ウイングスUSAライヴ!!』

ウイングス『ウイングスUSAライヴ!!』
ウイングス(Wings)『ウイングス U.S.A. ライヴ!!』(Wings Over America)

ポール・マッカートニーが率いるWings(ウイングス)のライブ・アルバム『Wings Over America』(邦題:ウイングスUSAライヴ!!)は、1976年12月にリリースされたトリプルLPの大作であり、バンドのアメリカツアー「Wings Over the World Tour」の北米公演の模様をダイナミックに収録した作品です[1][10][15]。

『Wings Over America』(邦題:ウイングスUSAライヴ!!)のコンセプト

『Wings Over America』のコンセプトは、ポール・マッカートニーがビートルズ解散後、新たなバンドとしてのWingsの存在感をライブで証明すること、そしてアメリカの大観衆を前に自身のソロ&Wingsの楽曲、さらにはビートルズ時代の名曲を披露してファンの期待に応えることでした[11][15][16]。当時、ポールはビートルズとしてアメリカ公演を行ってから約10年ぶりのアメリカツアーであり、バンドとしての団結力と成長を見せつける絶好の機会となりました[15][16]。

音楽性・サウンドの特徴

サウンドは、Wingsのヒット曲を中心に、ポールのソロ曲やビートルズのクラシックも織り交ぜた豪華なセットリストで構成されています。特に「Venus and Mars / Rock Show / Jet」で始まるオープニングは、圧倒的なライブ・パワーとバンドの一体感を感じさせ、今なおライブ・アルバムの名オープニングとして評価されています[12][16]。

演奏面では、ポールのベースとジョー・イングリッシュのドラムがリズム隊として強力にバンドを牽引し、ジミー・マカロックのギターが存在感を放っています[6][13]。また、ホーン・セクション(スティーブ・ハワード、サドー・リチャード、ハウィー・ケイシー、トニー・ドーシー)が加わり、サウンドに厚みと華やかさをプラスしています[13]。

一方で、スタジオでのバッキング・ボーカルのオーバーダビングが多く、「ライブ感」を損なうという指摘もありますが、ポール自身が膨大なテープからベスト・テイクを厳選し、サウンド・エンジニアとともに綿密なミックス作業を行ったため、音質やバランスは非常に高い水準に仕上がっています[1][6][10]。

制作時のエピソード

当初、アルバムは2枚組でのリリースが予定されていましたが、1976年6月23日のロサンゼルス・フォーラム公演を収録した海賊盤『Wings from the Wings』がトリプルLPで流通したことから、ポールは正式リリースもトリプルLPにすることを決断しました[1][10]。

ポールとサウンド・エンジニアは800時間にも及ぶテープを聴き込み、各曲ごとに最良のパフォーマンスを5つずつ選び、最終的に主に6月23日公演の音源を中心に編集・ミックスしました。「Soily」は6月7日デンバー公演の音源が採用されています[1][10]。また、バッキング・ボーカルや一部の楽器パートはスタジオでオーバーダビングされ、特にコーラスの精度を高めるために多くの時間が費やされました[6][10]。

参加ミュージシャン

  • ポール・マッカートニー(Paul McCartney):ボーカル、ベース、ギター、ピアノ、キーボード
  • リンダ・マッカートニー(Linda McCartney):ボーカル、キーボード、ピアノ
  • デニー・レイン(Denny Laine):ボーカル、ギター、ベース、ピアノ、ハーモニカ
  • ジミー・マカロック(Jimmy McCulloch):ボーカル、ギター、ベース
  • ジョー・イングリッシュ(Joe English):ドラム、パーカッション、ボーカル
  • スティーブ・ハワード(Steve Howard):トランペット
  • サドー・リチャード(Thaddeus Richard):サックス
  • ハウィー・ケイシー(Howie Casey):サックス
  • トニー・ドーシー(Tony Dorsey):トロンボーン[13]

トラック・リスト

Side 1

  1. メドレー:ヴィーナス・アンド・マース/ロック・ショー/ジェット - Venus and Mars/Rock Show/Jet
  2. レット・ミー・ロール・イット - Let Me Roll It
  3. 遥か昔のエジプト精神 - Spirits of Ancient Egypt
  4. メディシン・ジャー - Medicine Jar

Side 2

  1. メイビー・アイム・アメイズド - Maybe I'm Amazed
  2. コール・ミー・バック・アゲイン - Call Me Back Again
  3. レディ・マドンナ - Lady Madonna
  4. ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード - The Long and Winding Road
  5. 007死ぬのは奴らだ - Live and Let Die

Side 3

  1. ピカソの遺言 - Picasso's Last Words (Drink To Me)
  2. リチャード・コーリー - Richard Cory
  3. ブルーバード - Bluebird
  4. 夢の人 - I've Just Seen a Face
  5. ブラックバード - Blackbird
  6. イエスタデイ - Yesterday

Side 4

  1. 幸せのアンサー - You Gave Me the Answer
  2. 磁石屋とチタン男 - Magneto and Titanium Man
  3. ゴー・ナウ - Go Now
  4. マイ・ラヴ - My Love
  5. あの娘におせっかい - Listen to What the Man Said

Side 5

  1. 幸せのノック - Let 'Em In
  2. やすらぎの時 - Time to Hide
  3. 心のラヴ・ソング - Silly Love Songs
  4. 愛の証 - Beware My Love

Side 6

  1. ワインカラーの少女 - Letting Go
  2. バンド・オン・ザ・ラン - Band on the Run
  3. ハイ・ハイ・ハイ - Hi Hi Hi
  4. ソイリー - Soily

発表時の反響

『ウイングスUSAライヴ!!』はリリース直後から大きな話題となり、アメリカのビルボード・チャートで1位、イギリスでも8位を記録[1][10][15]。Wingsの代表的なライブ・アルバムとして、商業的にも非常に成功しました。当時は「ライブ・アルバムの黄金時代」とも呼ばれ、ピーター・フランプトンの『フランプトン・カムズ・アライブ!』などと並ぶ大ヒット作となりました[3][9]。

批評的には、ライブ感やバンドの一体感を高く評価する声がある一方、スタジオでのオーバーダビングやセットリストの「軽さ」を指摘する意見もありました[2][7][16]。しかし、ポールのライブ・パフォーマンスやバンドの演奏力は多くのリスナーに支持され、Wingsの存在意義を再確認させる作品となりました[9][14][16]。

特筆すべきこと

  • ビートルズ曲のライブ初披露:「Yesterday」「Blackbird」「Lady Madonna」「The Long and Winding Road」など、ビートルズ時代の楽曲がWingsのライブで初めて演奏され、ファンに大きな感動を与えました[11][15][16]。
  • バンドの一体感:ポールが「バンドとしてのWings」を強く意識し、メンバーそれぞれが個性を発揮。デニー・レインの「Go Now」やジミー・マカロックのギターソロなどが印象的です[14][16]。
  • サウンドの進化:ホーン・セクションの導入や、ポールのベースラインの強化など、サウンド面での進化が顕著です[13][16]。
  • ジャケットのデザイン:アルバム・カバーはヒプノシスによるもので、飛行機のドアが開く瞬間を描いたデザインが印象的[1][10]。
  • リマスターによる音質向上:2013年のリマスター盤では、オリジナルの音質が大幅に向上し、よりクリアで迫力あるサウンドを楽しめるようになりました[3][16]。

まとめ

『ウイングスUSAライヴ!!』は、ポール・マッカートニーがビートルズのレガシーを超え、新たなバンドとしてのWingsの魅力をライブで証明した記念碑的作品です。バンドの一体感、豪華なセットリスト、そしてスタジオでの入念な編集作業により、今なお色あせないライブ・アルバムの名盤として高い評価を受けています[1][9][16]。

合わせて読みたい
  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Wings_over_America
  2. https://www.popmatters.com/171947-paul-mccartney-wings-wings-over-america-2495753416.html
  3. https://ontherecord.co/2024/06/22/paul-mccartney-wings-wings-over-america/
  4. http://www.meetthebeatlesforreal.com/2012/04/wings-over-america-part-1.html
  5. https://en.wikipedia.org/wiki/Paul_McCartney_and_Wings
  6. https://www.reddit.com/r/beatles/comments/1eb57ij/wings_over_america/
  7. https://brutallyhonestrockalbumreviews.wordpress.com/2022/04/30/album-review-wings-wings-over-america/
  8. https://forums.stevehoffman.tv/threads/how-live-was-wings-over-america.1162266/
  9. https://www.antimusic.com/reviews/13/Paul_McCartney_-_Wings_-_Wings_over_America_(Reissue).shtml
  10. https://www.the-paulmccartney-project.com/album/wings-over-america/
  11. https://www.udiscovermusic.jp/stories/wings-spread-over-america
  12. https://ultimateclassicrock.com/paul-mccartney-wings-over-america-album/
  13. https://www.beatlesbible.com/people/paul-mccartney/albums/wings-over-america/
  14. https://somethingelsereviews.com/2013/05/18/paul-mccartney-and-wings-wings-over-america-1976-2013-reissue/
  15. https://www.udiscovermusic.com/stories/wings-over-america-tour/
  16. https://somethingelsereviews.com/2013/05/29/paul-mccartney-and-wings-wings-over-america-1976-2013-reissue-2/
  17. https://theseconddisc.com/2013/05/28/review-paul-mccartney-and-wings-the-paul-mccartney-archive-collection-wings-over-america/
  18. https://www.minnesotamonthly.com/calendar/wings-over-america-a-tribute-to-paul-mccartney-wings/2025-10-29/
  19. https://colossalreviews.com/music/wings-over-america-vinyl-record-album-review/
  20. http://www.nodirectionknown.com/music-response-wings-over-america-by-paul-mccartney/
  21. https://chanhassendt.com/shows/wingsoveramerica/
  22. https://en.wikipedia.org/wiki/Wings_Across_America_2008
  23. https://www.youtube.com/watch?v=Jcsy-HwPTPc

SHARE:
この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
あなたへのおすすめ