ザ・ビートルズ『レット・イット・ビー』

『Let It Be』(レット・イット・ビー)は、The Beatles(ザ・ビートルズ)の12枚目にして最後のスタジオアルバムで、1970年5月8日にリリースされました。このアルバムは、バンドの解散直後に公開された同名のドキュメンタリー映画と連動して発表されました[5]。
『Let It Be』(レット・イット・ビー)のコンセプト
ポール・マッカートニーが主導する形で「原点回帰」を目指し、バンドの緊張や分裂が深まる中で「シンプルなロックンロールへ戻る」ことをコンセプトに掲げてスタートしました。もともとは「Get Back」というタイトルで、テレビ特番や映画と連動し、リハーサル風景やライブ演奏を記録するドキュメンタリー・プロジェクトとして企画されました[5]。
音楽性・サウンドの特徴
『Let It Be』のサウンドは、初期ビートルズのシンプルなロックンロールやフォーク的な要素を基盤としつつ、ゴスペルやブルース、カントリー、バラードなど多彩なジャンルが融合しています。特に「Let It Be」や「The Long and Winding Road」では、壮大なオーケストラやコーラスが加えられ、アルバム全体にスピリチュアルで感動的な雰囲気をもたらしています[2][5]。
ビリー・プレストンのエレクトリック・ピアノやハモンドオルガンが随所でフィーチャーされており、バンドのサウンドに新鮮な彩りを加えています。また、ジョージ・ハリスンのスライドギターや、ジョン・レノンのラップスティールギターなど、各メンバーの個性が随所に表れています[4][5]。
制作時のエピソード
1969年1月、トゥイッケナム・フィルム・スタジオでのリハーサルから制作が始まりましたが、メンバー間の不和が顕著となり、ジョージ・ハリスンが一時脱退する事態も発生しました。彼の復帰条件の一つが、アップル・スタジオへの移動と、外部ミュージシャン(ビリー・プレストン)の参加でした[5]。
アルバム制作は難航し、複数回にわたりミックスや構成が変更されました。当初、エンジニアのグリン・ジョンズ(Glyn Johns)が「Get Back」として編集したバージョンはバンドに却下され、最終的にはフィル・スペクターがプロデューサーとして招かれ、オーケストラやコーラスのオーバーダブを施しました。このスペクターの手法は、特に「The Long and Winding Road」においてポール・マッカートニーの不満を招き、後年まで議論を呼びました[5]。
また、アルバムの象徴的な出来事として、1969年1月30日にアップル本社屋上で行われた「ルーフトップ・コンサート」があります。これはビートルズ最後の公のライブ演奏となり、アルバム収録曲の一部がこのライブ音源から採用されました[5]。
参加ミュージシャン
ビートルズのメンバー
- ジョン・レノン(John Lennon):ボーカル、ギター、ラップスティールギター、ベース、オルガン他
- ポール・マッカートニー(Paul McCartney):ボーカル、ベース、ピアノ、エレクトリックピアノ、ギター他
- ジョージ・ハリスン(George Harrison):ボーカル、ギター、タンブーラ、マラカス他
- リンゴ・スター(Ringo Starr):ドラム、パーカッション
ゲスト・ミュージシャン
- ビリー・プレストン(Billy Preston):エレクトリックピアノ、ハモンドオルガン
- リンダ・マッカートニー(Linda McCartney):バックコーラス
- ジョージ・マーティン(George Martin):プロデューサー、ハモンドオルガン、シェイカー
- オーケストラ、コーラス隊(フィル・スペクターによるアレンジで18人のヴァイオリン奏者など多数)[4][5]
トラック・リスト
Side 1
- トゥ・オブ・アス(Two Of Us) - 3:36
- ディグ・ア・ポニー(Dig A Pony) - 3:54
- アクロス・ザ・ユニバース(Across The Universe) - 3:48
- アイ・ミー・マイン(I Me Mine) - 2:26
- ディグ・イット(Dig It) - 0:50
- レット・イット・ビー(Let It Be) - 4:03
- マギー・メイ(Maggie Mae) - 0:40
Side 2
- アイヴ・ガッタ・フィーリング(I've Got A Feeling) - 3:37
- ワン・アフター・909(One After 909) - 2:54
- ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード(The Long And Winding Road) - 3:38
- フォー・ユー・ブルー(For You Blue) - 2:32
- ゲット・バック(Get Back) - 3:09
発表時の反響
1970年5月のリリース直後、アルバムはイギリス・アメリカをはじめ世界各国でチャート1位を獲得し、商業的には大成功を収めました。しかし、批評家からの評価は賛否が分かれ、当時としてはビートルズ作品の中で最も物議を醸したアルバムの一つとなりました。特にフィル・スペクターによる過剰なプロダクションや、バンドの解散と重なった暗いムードが批判されました[5]。
NME誌のアラン・スミスは「安っぽい墓碑」と評し、ローリング・ストーン誌もスペクターのプロダクションを問題視しました。一方で、後年の再評価では「Let It Be」「Get Back」「Two of Us」などの楽曲の完成度や、バンドの人間ドラマを映し出すドキュメンタリー性が高く評価されています[5]。

特筆すべきこと・その後の展開
- 『Let It Be』はビートルズの公式なラストアルバムであり、バンド解散とほぼ同時期にリリースされたことから「遺書」「最後のメッセージ」とも受け取られました[5]。
- 2003年にはポール主導でスペクターの装飾を排除した『Let It Be... Naked』が発表され、よりシンプルなオリジナル・コンセプトに近いサウンドが再評価されています[5]。
- 2021年にはピーター・ジャクソン監督による8時間超のドキュメンタリー『The Beatles: Get Back』が公開され、アルバム制作時の詳細やメンバー間のやり取りが新たに明らかになりました[5]。

まとめ
『Let It Be』は、バンド崩壊寸前の緊張感、原点回帰の意志、そしてフィル・スペクターによる大胆なプロダクションが交錯する、ビートルズの歴史的かつドラマティックな作品です。時代を超えて聴き継がれる名曲群とともに、バンドの終焉を象徴するアルバムとして、今なお多くのファンや批評家に語り継がれています。
Citations:
- https://www.udiscovermusic.jp/stories/the-beatles-let-it-be-featued-002
- https://sophiasmissionus.org/unveiling-the-timeless-beauty-of-the-beatles-let-it-be-a-journey-into-musical-mastery/
- http://www.beatlesebooks.com/let-it-be-song
- https://www.beatlesbible.com/albums/let-it-be/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Let_It_Be_(album)
- https://www.discogs.com/ja/release/461415-The-Beatles-Let-It-Be
- https://umusic.co.nz/originals/rock/the-beatles-let-it-be-how-one-song-impacted-the-world/
- https://yougakuheya.blog.jp/archives/17212776.html
- https://cbthorp.wordpress.com/2019/02/07/analysis-of-let-it-be/
- https://www.goldminemag.com/features/the-making-of-the-beatles-let-it-be
- https://ultimateclassicrock.com/beatles-let-it-be-roundtable/
- https://www.discogs.com/ja/master/24212-The-Beatles-Let-It-Be
- https://www.britannica.com/topic/Let-It-Be-album-by-the-Beatles
- https://www.beatnikgroove.com/?pid=180999024
- https://en.wikipedia.org/wiki/Let_It_Be_(song)
- https://www.radiox.co.uk/artists/beatles/let-it-be-meaning-story-lyrics/
- https://americansongwriter.com/remember-when-phil-spector-gets-involved-in-the-beatles-let-it-be-album-and-causes-some-issues/
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%93%E3%83%BC
- https://note.com/nus_t/n/n5e8bca4b5f07
- https://music.apple.com/jp/album/let-it-be/1441164495