エリック・クラプトン『安息の地を求めて』

1975年に発表されたEric Clapton(エリック・クラプトン)の3作目のソロ・アルバム『There's One in Every Crowd』(邦題:安息の地を求めて)は、前作『461 Ocean Boulevard』の大成功とシングル「I Shot the Sheriff」のヒットを受けて制作されました。
『There's One in Every Crowd』(安息の地を求めて)のコンセプト
クラプトン自身が「レイドバックした雰囲気を目指した」と語っており、ギター・ヒーロー的なイメージから距離を置き、歌唱やバンド全体のリラックスした空気感に重きを置いたアルバムです[13]。また、前作でヒットした「I Shot the Sheriff」に象徴されるレゲエへの興味をさらに深め、ジャマイカでのレコーディングを通じてそのサウンドを積極的に取り入れています[1][10]。
クラプトンは当初「World’s Greatest Guitar Player (There's One in Every Crowd)」「世界最高のギタリストは(群衆の中に必ず一人はいる)」という自虐的なタイトルを希望していましたが、レコード会社の意向で現在のタイトルに短縮されました[10][11]。タイトル自体は1960年代のイギリスのタバコ広告のキャッチフレーズから取られています[3]。
音楽性・サウンドの特徴
このアルバムの音楽性は、ゴスペル、レゲエ、ブルース、ファンク、ポップ/ロックが混在する多様なものです[2]。特にレゲエ色が強く、「Swing Low, Sweet Chariot」「Little Rachel」「Don't Blame Me」などはジャマイカ録音の影響が色濃く出ています[1][10]。一方で「We've Been Told (Jesus Coming Soon)」や「Swing Low, Sweet Chariot」といったスピリチュアルな楽曲、エルモア・ジェームスのカバー「The Sky Is Crying」など、クラプトンらしいブルースやゴスペルの要素も健在です[4][7]。
クラプトンは当時のインタビューで「このアルバムは3、4回聴いて好きにならなければ、その後は聴かなくなるタイプ。でも、聴き続ければ細かいところに良さが見えてくる」と語っています。また、声についても「若くて甘い声を無理に作っていた」と自己分析しています[3]。
ギター・ソロは前作よりも多く収録されていますが、全体的には控えめで、クラプトンの歌声やバンドのアンサンブルに焦点が当てられています[2][14]。音像は「奥行き」「透明感」「立体感」に配慮されており、ヴォーカルが前面に出るミックスが特徴です[6]。
制作時のエピソード
レコーディングは1974年末から1975年初頭にかけて、主にジャマイカで行われました[10]。この時期のクラプトンはアルコールやドラッグの問題を抱えており、セッションは順調とは言えなかったようです[8][10]。クラプトン自身も「録音が断片的になり、ライブ感を重視したかった」と後年に述懐しています[13]。
また、バンドのメンバーは前作とほぼ同じで、気心の知れた仲間たちとのリラックスしたセッションがアルバム全体の雰囲気に反映されています[3][7]。
参加ミュージシャン
- エリック・クラプトン(Eric Clapton):リード・ヴォーカル、エレクトリック/アコースティック・ギター、ドブロ、アレンジ
- ジョージ・テリー(George Terry):ギター、グループ・ヴォーカル
- カール・レイドル(Carl Radle):ベース、ギター
- ジェイミー・オールデイカー(Jamie Oldaker):ドラム、パーカッション
- ディック・シムズ(Dick Sims):オルガン、ピアノ、エレクトリック・ピアノ
- イヴォンヌ・エリマン(Yvonne Elliman):リード&グループ・ヴォーカル
- マーシー・レヴィ(Marcy Levy):グループ・ヴォーカル
- アルビー・ガルーテン(Albhy Galuten):シンセサイザー[4][7][10]
プロデューサーはトム・ダウド(Tom Dowd)が担当しました[4]。
発表時の反響
商業的には全英15位、全米21位と前作ほどの大ヒットには至りませんでした[3][11]。批評家やファンの評価も賛否が分かれ、「前作ほどのインパクトがない」「レイドバックしすぎてエネルギーに欠ける」といった声もありました[6][13][14]。一方で「Better Make It Through Today」「The Sky Is Crying」など、クラプトンのソングライティングや歌唱を高く評価する意見も根強く、アルバム全体の統一感やバンドのグルーヴを評価する声もあります[2][11]。
ジャケットデザイン
アルバム・ジャケットにはクラプトンの愛犬「ジープ(Jeep)」の写真が使われており、温かみのある親しみやすい印象を与えています[5]。また、インナースリーブの見開きにはクラプトン自身によるスケッチが掲載されており、本人のアートワークへの関与も特徴です。裏面の写真はロバート・エリスが撮影しています[9]。

特筆すべきこと
- 本作はクラプトンの「ギター・ヒーロー」像からの脱却、そしてバンド・サウンドやヴォーカルへの志向転換を象徴する作品です[1][3]。
- ジャマイカ録音によるレゲエの導入は、当時の英国ロック・シーンでも新鮮であり、クラプトン独自のレイドバックしたレゲエ解釈が聴けます[1][12]。
- 収録曲の多くがカバーやアレンジ曲で、オリジナル曲はアルバムの半分程度にとどまります[7][12]。
- シングルカットされた「Swing Low, Sweet Chariot」は、イヴォンヌ・エリマンがリード・ヴォーカルを務め、レゲエ・アレンジが話題となりましたが、大きなヒットには至りませんでした[11]。
まとめ
『安息の地を求めて』は、エリック・クラプトンが新たな音楽的方向性を模索し、レゲエやゴスペル、ブルースを独自のレイドバックしたスタイルで融合させた意欲作です。商業的な成功や派手さは控えめですが、クラプトンのアーティストとしての成長やバンドとの一体感、そしてレイドバックした70年代クラプトンの魅力を味わえる一枚です。






- https://note.com/krichards/n/na5032185307d
- https://forums.stevehoffman.tv/threads/eric-clapton-theres-one-in-every-crowd.1184615/
- https://aroundandaroundcom.wordpress.com/theres-one-in-every-crowd/
- https://www.barnesandnoble.com/w/theres-one-in-every-crowd-eric-clapton/61134
- https://whereseric.com/faq/animal-photographs-eric-claptons-album-artwork/
- https://ontherecord.co/2023/04/01/eric-clapton-theres-one-in-every-crowd-2/
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E6%81%AF%E3%81%AE%E5%9C%B0%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%A6
- https://music.apple.com/us/album/theres-one-in-every-crowd/1443125090
- https://whereseric.com/faq/album-artwork-backstories/
- https://en.wikipedia.org/wiki/There's_One_in_Every_Crowd
- https://www.realgonerocks.com/2012/01/eric-clapton-theres-one-in-every-crowd/
- http://rockcollector.blog31.fc2.com/blog-entry-5820.html
- https://ultimateclassicrock.com/eric-clapton-theres-one-in-every-crowd/
- https://www.superseventies.com/spclaptoneric4.html?no_redirect=true
- https://www.superseventies.com/spclaptoneric4.html
- https://www.discogs.com/master/79025-Eric-Clapton-Theres-One-In-Every-Crowd
- https://www.rollingstone.com/music/music-album-reviews/theres-one-in-every-crowd-255460/
- https://diskunion.net/rock/ct/detail/DTS0045
- https://www.discogs.com/release/9319759-Eric-Clapton-Theres-One-In-Every-Crowd
- https://kohgenrecord.thebase.in/items/84141940
- https://www.discogs.com/release/5994461-Eric-Clapton-Theres-One-In-Every-Crowd
- https://albumartexchange.com/covers/540941-theres-one-in-every-crowd?q=Eric+Clapton&fltr=ARTISTCOMPOSER&page=29
- https://en.wikipedia.org/wiki/File:Eric_Clapton_Album_Cover.jpg