テン・イヤーズ・アフター『夜明けのない朝』

1969年に発表されたTen Years After(テン・イヤーズ・アフター)のアルバム『Ssssh(シュッシュ)』(邦題:夜明けのない朝)は、彼らのキャリアの中で重要な転換点となった作品です。
ロンドンのモーガン・スタジオで6月に録音され、同年9月にデラム・レーベルから発売されました。
このアルバムは、バンドのリーダーでありギタリストのアルヴィン・リーが全曲(ブルースの古典Good Morning Little Schoolgirlを除く)を作曲し、プロデュースにも深く関わった初の試みでもありました[1]。
『夜明けのない朝』のコンセプトと制作の背景
『Ssssh』の制作にあたり、バンドは「視覚的なライヴ体験をスタジオ録音に持ち込む」という明確なコンセプトを掲げていました。
アルヴィン・リーは、「今回はあえてノイズやアンビエンスを残し、ライブの臨場感を封じ込めた」と語っています。
従来はエンジニアによって排除されていた音をあえて残すことで、生々しいエネルギーと現場の緊張感を再現しようとしたのです。
この試みは当時としては先進的で、スタジオ録音の完璧主義から逸脱した“ライブ志向のロック”の一例といえます[3]。
音楽性とサウンドの特徴
音楽的にはブルースを核としながら、サイケデリックやハードロック的要素を大胆に取り入れています。
特に「Bad Scene」、「Stoned Woman」、「If You Should Love Me」などでは、歪んだギターリフと即興的なオルガンプレイが交錯し、当時のブリティッシュ・ブルースからハードロックへとつながる過渡的サウンドを象徴しています。
録音では新たに導入された8トラック・スカリー・マシンを活用し、より厚みのあるサウンド構築が可能になりました[4]。
参加ミュージシャンとバンドの一体感
- アルヴィン・リー(Alvin Lee) - ボーカル、ギター
- レオ・ライオンズ(Leo Lyons) - ベース
- チック・チャーチル(Chick Churchill) - ハモンドオルガン、ピアノ
- リック・リー(Ric Lee) - ドラムス
各メンバーの技術的成熟が顕著で、特にアルヴィンの高速かつ正確なギター・ソロは、後の彼の代名詞となる“ライトニング・フレーズ”の原型を形成しています。
プロデュースはアルヴィン・リー&テン・イヤーズ・アフター。
レオの硬質なベースラインとリックのタイトなドラミングがリズムの骨格を担い、チックのオルガンがブルース的温度を加えています[1]。
トラック・リスト
Side 1
- バッド・シーン(Bad Scene) - 3:30
- トゥ・タイム・ママ(Two Time Mama) - 2:02
- ストーンド・ウーマン(Stoned Woman) - 3:21
- グッド・モーニング・リトル・スクールガール(Good Morning Little Schoolgirl) - 7:10
Side 2
- 愛してくれるなら(If You Should Love Me) - 5:23
- 知らないどうし(I Don't Know That You Don't Know My Name) - 2:06
- ストンプ(The Stomp) - 4:30
- 夜明けのない朝(I Woke Up This Morning) - 5:30
制作時のエピソード
録音はおよそ5週間にわたり行われ、セッションは主に深夜から明け方にかけて進行しました。
これはメンバーが「夜の静寂とテンションの中で最も良い演奏ができる」と考えたためで、アルバム・タイトルの『Ssssh(シーッ)』にもその雰囲気が反映されています。
タイトルは英語の擬音Shhh(静かに)から派生するが、単なる静寂ではなく、爆発的な音の直前の「緊張の静けさ」を象徴しているともいわれています[3]。
発表時の反響と評価
発売時、『Ssssh』は全米ビルボード200で20位、英国チャートで4位を記録し、Ten Years Afterが国際的評価を確立する契機となりました。
批評面では賛否が分かれ、ローリング・ストーン誌はやや否定的な評価を下したものの、『ヴィレッジ・ヴォイス』や後年のレビューでは「ブルースとロックンロールの橋渡しとして重要」と評価されています。
ファンの間では「ウッドストック以前の最高傑作」として今日も人気が高く、後のアルバム『Cricklewood Green』への布石となったアルバムと見なされています[5]。

その後の評価とリイシュー
2025年にはチャーリー・ラッセルによる最新リミックスを収録したデラックス盤が発売され、1969年ヘルシンキ公演の未発表音源が追加されました。
リイシュープロデューサーのナイジェル・ウィリアムソンは「『Ssssh』は“スタジオ録音の限界をライヴ・バンドが突き破った瞬間”の記録だ」と評しています。
これはTen Years Afterがブルースバンドからアリーナ・ロックバンドへと昇華していく第一歩を示す作品でもありました[6]。
総じて『Ssssh』は、1960年代ブリティッシュ・ロックの中で、ブルースの形式を保持しつつサイケデリックとハードロックの境界を曖昧にした実験的アルバムです。
音像の荒々しさや録音の“生感”が、アルヴィン・リーの天才的ギターワークとともに、今なおリスナーに強烈な印象を与え続けています。
- https://en.wikipedia.org/wiki/Ssssh
- https://www.bethelwoodscenter.org/news/detail/ten-years-after-50-years-of-peace-music
- https://www.alvinlee.de/1969_2.htm
- https://www.ten-years-after.co.uk
- https://www.genspark.ai/spark/exploring-the-reception-reviews-and-ratings-of-ten-years-after-ssssh/390e1385-0093-4fa9-8551-c58f4034c38e
- https://www.roughtrade.com/product/ten-years-after/ssssh-2025-deluxe-edition
- https://www.facebook.com/groups/484013426735734/posts/1198383295298740/
- https://www.alvinlee.de/1970.htm
- https://www.reddit.com/r/vinyl/comments/15rcvi0/sssh_by_ten_years_after/
- https://www.facebook.com/groups/730259065546504/posts/1107522137820193/
- https://www.facebook.com/groups/DoYouRememberThe90sand00sFanClub/posts/7999218533490336/
- https://www.facebook.com/groups/712307729709537/posts/1818715959068703/
- https://www.facebook.com/groups/712307729709537/posts/1832296264377339/
- https://www.facebook.com/groups/384624098665545/posts/2136238420170762/
- https://www.groovespin.com/album/ten-years-after-ten-years-after-1967-1974-2018-42808?artists%5B0%5D=2454&tracks%5B0%5D=206969
- https://www.facebook.com/groups/795538003848410/posts/7964518726950266/
- https://www.facebook.com/groups/936069459767330/posts/31184444481169763/
- https://www.facebook.com/groups/richmondcounterculture/posts/10160781943528824/
- https://forums.stevehoffman.tv/threads/recommend-rock-pop-cds-sacds-to-a-67-year-old-newcomer.1207044/page-2
- https://www.facebook.com/groups/343307383242432/posts/1512768152963010/

![U.K.『Night After Night』(ナイト・アフター・ナイト[ライヴ・イン・ジャパン])](https://i0.wp.com/otolog.net/wp-content/uploads/2025/10/UK_Night-After-Nigh_01.webp?fit=300%2C225&ssl=1)
