デヴィッド・ボウイ『ステイション・トゥ・ステイション』
David Bowie（デヴィッド・ボウイ）の『Station to Station』（ステイション・トゥ・ステイション）は、1976年1月23日にリリースされた10枚目のスタジオアルバムです。このアルバムは、ボウイのキャリアにおいて重要な転換点となった作品として広く認識されています[1][2]。
『Station to Station』のコンセプト
『ステイション・トゥ・ステイション』は、デヴィッド・ボウイが生み出した“Thin White Duke（シン・ホワイト・デューク）”という新たなキャラクターを前面に押し出したアルバムです。このデュークは、冷徹で感情のない貴族然とした存在であり、ソウルフルなバラードを完璧に歌い上げながらも、内面は空虚で愛や信仰にすら無感覚な人物として描かれています[1][5]。アルバム全体を通じて、カバラやニーチェの超人思想、キリスト教的象徴、オカルト、そしてドラッグ（特にコカイン）への言及が散りばめられ、宗教と愛、自己崩壊と再生の葛藤がテーマとして浮かび上がります[1][6]。
音楽性とサウンドの特徴
『ステイション・トゥ・ステイション』は、ボウイのディスコ、ファンク、ソウル路線だった前作『Young Americans』から、クラウトロック（1960年代末から1970年代初めにかけて、西ドイツに登場した実験的・前衛的ロックバンド群の音楽。特にNeu!やKraftwerkの影響）やエレクトロニック・ミュージック、アート・ロックへの移行点に位置づけられる作品です。音楽的には「氷のように冷たいシンセサイザード・ファンク・ロック」「アヴァンギャルド・アート・ロック」「スペース・ロック」「電子R&Bのハイブリッド」などと評され、機械的で断片的、かつ独特なグルーヴが特徴です[1][2]。
- タイトル曲「Station to Station」は約10分に及び、前半は列車のようなSEと重厚なマーチ、後半はクラウトロックやディスコの要素を持つ祝祭的なグルーヴへと展開します[1][3]。
- 「Golden Years」「Stay」はファンクやソウルを基調としつつも、より鋭く、ハードなエッジが加わっています[1]。
- 「TVC 15」はニューオーリンズ風のピアノと未来的なソウルが融合した異色作で、イギー・ポップの夢にインスパイアされた“テレビに彼女が飲み込まれる”という奇妙な物語が描かれます[2][6]。
- 「Word on a Wing」や「Wild Is the Wind」はゴスペルやバラードの要素を持ち、ボウイの情熱的なヴォーカルが際立ちます[1][2]。
制作時のエピソード
本作の制作はロサンゼルスのチェロキー・スタジオで1975年秋に行われましたが、当時のボウイは極度のコカイン中毒と不眠、偏った食生活（牛乳とピーマン、ドラッグのみ）により精神的にも肉体的にも極限状態にありました[4][6][7]。本人は後年「制作時の記憶がほとんどない」と語っています[4][6]。また、オカルトやカバラへの傾倒、パラノイア的な儀式（黒いキャンドルを燃やす等）も日常的に行われていたとされます[4][6]。
参加ミュージシャン
主要な参加ミュージシャンは以下の通りです[3]。
- デヴィッド・ボウイ（David Bowie）：ヴォーカル、アコースティックギター、サウンドエフェクト、メロディカ、プロデューサー
- カルロス・アロマー（Carlos Alomar）：リズムギター
- アール・スリック（Earl Slick）：リード／リズムギター
- ジョージ・マレー（George Murray）：ベース
- デニス・デイヴィス（Dennis Davis）：ドラムス、パーカッション
- ロイ・ビタン（Roy Bittan）：ピアノ、オルガン（Eストリート・バンド）
- ウォーレン・ピース（Warren Peace）：バッキングヴォーカル
- ハリー・マスリン（Harry Maslin）：メロディカ、シンセサイザー、ビブラフォン、バリトンサックス、プロデューサー、エンジニア
このリズムセクション（アロマー、マレー、デイヴィス）は、後の“ベルリン三部作”でも核となるメンバーです[2]。
発表時の反響
1976年1月23日にリリースされた本作は、当初「ダンス・アルバム」として受け止められつつも、その実験的かつ冷徹なサウンド、複雑なテーマ性から「主流音楽としては異様なほど奇妙で個性的」と評されました。後年には、ポストパンクやニューウェーブへの影響が非常に大きい作品として高く評価されています[2]。
ジャケットデザイン
アルバムジャケットは、ボウイが主演した映画『地球に落ちて来た男』（The Man Who Fell to Earth）のワンシーンをモノクロで切り取ったものです。これはThin White Dukeの異質さ、冷たさ、そして“地球外的”な存在感を象徴しています[4]。
特筆すべきこと
- タイトル曲「Station to Station」は、ボウイ最長のスタジオ録音曲であり、ベルリン三部作への橋渡しとなるクラウトロック的実験性が明確です[1][3]。
- 「Golden Years」は元々エルヴィス・プレスリーのために書かれた楽曲でしたが、エルヴィスには断られています[4]。
- 「Wild Is the Wind」はニーナ・シモンのカバーで、彼女への敬意を込めて録音されました[4]。
- 本作は「コンセプト・アルバム」と呼ばれることもありますが、明確な物語性よりも、Thin White Dukeというキャラクターと彼の内面世界、ドラッグ、宗教、愛といったモチーフが全体を貫いています[5]。
- ボウイ自身は「魔術書のようなアルバム」と表現し、その暗さと神秘性を強調しています[2]。
まとめ
『Station to Station』は、混沌と自己崩壊の中から生まれたボウイの転換点であり、音楽的にも精神的にも極限を突き詰めた作品です。ファンクとクラウトロック、宗教とオカルト、愛と虚無が交錯するこのアルバムは、後の“ベルリン三部作”や80年代以降の音楽シーンに多大な影響を与えました[1][2][4]。
![デヴィッド・ボウイ（David Bowie）『スケアリー・モンスターズ』（Scary Monsters [and Super Creeps]）](https://i0.wp.com/otolog.net/wp-content/uploads/2025/02/David-Bowie_Scary-Monsters_01.jpg?fit=300%2C225&ssl=1)
Citations:
- https://en.wikipedia.org/wiki/Station_to_Station
- https://www.stevepafford.com/station45/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Station_to_Station_(song)
- https://www.thatericalper.com/2024/11/28/5-surprising-facts-david-bowies-station-to-station/
- https://www.reddit.com/r/DavidBowie/comments/9xwkhr/station_to_station_as_a_concept_album/
- https://www.mojo4music.com/articles/stories/david-bowies-station-to-station-revisited/
- https://www.bowiebible.com/albums/station-to-station/
- https://www.classicpopmag.com/features/classic-album/david-bowie-station-to-station/
- https://www.reddit.com/r/DavidBowie/comments/192r7qj/can_someone_explain_station_to_station_hype/
- https://forums.stevehoffman.tv/threads/my-review-of-david-bowies-station-to-station.767242/
- http://www.secretmeeting.co.uk/david-bowie-station-to-station-review
- https://www.rollingstone.com/music/music-features/how-david-bowie-brought-thin-white-duke-to-life-on-station-to-station-125797/
- https://www.bowiebible.com/songs/station-to-station/
- https://bolanpics.wordpress.com/station-to-station-2/
- https://forums.stevehoffman.tv/threads/frank-sinatra-visited-david-bowie-during-the-station-to-station-recording-sessions.403777/
- https://www.hotpress.com/music/on-this-day-in-1976-david-bowie-released-station-to-station-23004070
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- https://oaklandnorth.net/2013/10/07/stationtostation/
- http://www.larkin.net.au/blog/2009/04/22/david-bowie-station-to-station-full-colour-artwork-revisited/
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- https://albumism.com/features/david-bowie-station-to-station-turns-45-anniversary-retrospective
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- https://www.bonhams.com/auction/24669/lot/76/david-bowie-two-album-cover-proofs-for-station-to-station-one-a-rare-rejected-colour-version-1975/
- https://jamesrovira.com/2023/09/25/david-bowies-station-to-station-and-%E2%98%85-the-beginning-and-end-of-bowies-reinvention-of-music/
- https://altrockchick.com/2019/08/29/david-bowie-station-to-station-classic-music-review/
- https://www.reddit.com/r/DavidBowie/comments/12bmtbe/david_bowie_during_the_recording_sessions_of/
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- https://www.reddit.com/r/DavidBowie/comments/pj6uev/station_to_station_1976_track_by_track_review/
- https://www.hotpress.com/opinion/my-favourite-things-david-bowie-and-station-to-station-22838281
- https://recordmecca.com/item-archives/david-bowie-station-station/
- https://www.rs500albums.com/100-51/52
