ボン・ジョヴィ『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ』

Bon Jovi(ボン・ジョヴィ)の3rdアルバム『Slippery When Wet』(スリッパリー・フェン・ウェット、邦題:ワイルド・イン・ザ・ストリーツ)は、1986年8月18日にリリースされ、バンドを世界的なロックスターへと押し上げた決定的な作品です[4][5]。
コンセプトとアルバムタイトルの由来
本作のタイトルは、バンクーバーのストリップクラブ「The No.5 Orange」を訪れた際の出来事に由来します。バンドは当初『Wanted Dead or Alive』など他のタイトルも検討していましたが、クラブでの体験や、道中で見かけた「Slippery When Wet(滑りやすいので注意)」という標識からインスピレーションを得て現在のタイトルに決定しました[1][14]。
ジャケットデザインも紆余曲折があり、当初は濡れたTシャツ姿の女性が写るセクシュアルな案でしたが、レコード会社の懸念や流通の問題から、最終的には黒いゴミ袋に水をかけて「Slippery When Wet」と手書きしたシンプルなものに変更されました。日本盤など一部地域ではオリジナル案が採用されています[1][12][14]。
音楽性・サウンドの特徴
本作はグラム・メタル、ポップ・メタル、ハードロック、そしてポップロックの要素を融合し、80年代ロックの象徴的なサウンドを確立しました[4][2][7]。特徴は以下の通りです。
- キャッチーなメロディとアンセミックなサビ:全体を通して聴衆が一体となって歌えるようなコーラスが多用され、ライブでも盛り上がる楽曲が並びます[2][3]。
- リッチー・サンボラのギターとトーキング・モジュレーター:「Livin’ on a Prayer」などで印象的なトーキング・モジュレーターというエレキギターのエフェクターを使用し、ギターリフも非常にキャッチー[3][6]。
- デヴィッド・ブライアンのキーボード:ハードロックにポップな彩りを加え、幅広いリスナー層を獲得しました[3][7]。
- プロダクションの洗練:プロデューサーのブルース・フェアバーンとエンジニアのボブ・ロックによる、当時としては非常にクリアでパワフルなサウンドが特徴です[2][4][13]。
制作時のエピソード
- ソングライティング:ジョン・ボン・ジョヴィとリッチー・サンボラの他、プロのソングライターであるデズモンド・チャイルド(Desmond Child)が参加し、「You Give Love a Bad Name」「Livin' on a Prayer」などのヒット曲が誕生しました[7][13]。
- レコーディング:カナダ・バンクーバーのLittle Mountain Sound Studiosで1986年初頭から夏にかけてレコーディング。最新鋭の機材と、フェアバーン&ロックのコンビによる緻密な音作りが行われました[4][5]。
- 「Livin' on a Prayer」誕生秘話:ジョンは当初この曲をアルバムに入れることを躊躇しましたが、サンボラとチャイルドの説得でレコーディングが決定。スタジオでのアレンジによって「魔法」がかかったと語られています[13]。
- アルバムの曲順:30曲を作り、デズモンド・チャイルドの協力でニュージャージーとニューヨークの10代の若者たちに聴かせ、彼らの意見を基にアルバムの曲順を決定しました[1]。
参加ミュージシャン
- ジョン・ボン・ジョヴィ(Jon Bon Jovi):ボーカル、リズムギター
- リッチー・サンボラ(Richie Sambora):ギター、バッキングボーカル)
- アレック・ジョン・サッチ(Alec John Such):ベース、バッキングボーカル)
- ティコ・トーレス(Tico Torres):ドラムス、パーカッション)
- デヴィッド・ブライアン(David Bryan):キーボード、バッキングボーカル)
プロデューサー:ブルース・フェアバーン(Bruce Fairbairn)
エンジニア/ミキシング:ボブ・ロック(Bob Rock)[3][4][6]
発表時の反響と影響
- 商業的成功:全米ビルボード200で8週連続1位、1987年の年間売上1位。全世界で2800万枚以上を売り上げ、バンド最大のヒット作となりました[5][8][11]。
- シングルヒット:「You Give Love a Bad Name」「Livin' on a Prayer」「Wanted Dead or Alive」はいずれも世界的な大ヒットとなり、特に「Livin' on a Prayer」は世代を超えて愛されるロックアンセムとなりました[2][8][11]。
- 文化的影響:80年代のヘアメタル/グラムメタルブームを牽引し、ロックの大衆化に大きく貢献。他のバンドにも大きな影響を与えました[2][10][12]。
- ツアー:本作を引っ提げたワールドツアーは初の大規模なもので、米国・欧州・日本・オーストラリアなど世界中でソールドアウト公演を連発。バンドのスタジアム級人気を決定づけました[6][12]。
特筆すべきこと
- ジャンルの壁を越えた普及力:ハードロック/メタルの枠を超え、ポップスファンや若い女性層まで幅広く支持を集めた点が画期的でした[2][7]。
- プロダクションの革新性:当時のロックアルバムとしては異例のクリアな音像とバランスの良いミックスが、後続バンドの制作手法にも影響を与えました[2][4][13]。
- 象徴的な楽曲群:アルバム全体がヒット曲の宝庫であり、今なおライブの定番として演奏され続けています[3][5]。

まとめ
『Slippery When Wet』は、Bon Joviのキャリアを決定づけ、80年代ロックの象徴となったアルバムです。キャッチーなメロディ、力強いサウンド、洗練されたプロダクション、そして時代を超えて愛される楽曲群が、今なお多くのリスナーに影響を与え続けています[2][4][12]。
Citations:
- https://en.wikipedia.org/wiki/Slippery_When_Wet
- https://the-tech-vortex.com/2023/03/19/slippery-when-wet-album-review/
- https://sleazeroxx.com/reviews/bon-jovi-slippery-when-wet/
- https://riffology.co/2024/11/12/the-making-of-slippery-when-wet-by-bon-jovi/
- https://www.armourystudios.com/featured-recordings/bon-jovi-slippery-when-wet
- https://en.wikipedia.org/wiki/Slippery_When_Wet_Tour
- https://soundcheck.blog/2017/03/18/bon-jovi-slippery-when-wet/
- https://observer.com/2016/08/how-bon-jovi-changed-the-world-with-slippery-when-wet/
- https://www.loudersound.com/features/bon-jovi-slippery-when-wet-album-story
- https://ultimateclassicrock.com/bon-jovi-slippery-when-wet/
- https://backstage.bonjovi.com/exhibits/slippery-when-wet
- https://pmamagazine.org/bon-jovis-slippery-when-wet-the-album-that-defined-80s-rock/
- https://www.loudersound.com/features/bon-jovi-slippery-when-wet-story-behind-album
- https://ultimateclassicrock.com/bon-jovi-slippery-when-wet-album-covers/
- https://www.thisdayinmusic.com/classic-albums/bon-jovi-slippery-when-wet/
- https://www.albumoftheyear.org/album/17040-bon-jovi-slippery-when-wet.php
- https://www.discogs.com/release/9484296-Bon-Jovi-Slippery-When-Wet-Complete-Sessions
- https://mikeladano.com/2014/02/04/review-bon-jovi-slippery-when-wet-2010-special-edition/
- https://www.reddit.com/r/BonJovi/comments/1j5lpmd/review_of_slippery_when_wet_by_bon_jovi/
- https://cccshows.org/events/slippery-when-wet/