ユーライア・ヒープ『悪魔と魔法使い』

1972年にリリースされたUriah Heep(ユーライア・ヒープ)の4作目のスタジオ・アルバム『Demons and Wizards』(邦題:悪魔と魔法使い)は、バンドの「黄金期」を象徴する傑作であり、ハードロック、ヘヴィメタル、プログレッシブ・ロックの要素を融合させたサウンド、そしてファンタジー色の強いコンセプトとジャケットで、今なお高い評価を受けています。
『悪魔と魔法使い』のコンセプトと音楽性・サウンド
『Demons and Wizards』は、タイトル通り「悪魔」と「魔法使い」というファンタジックなテーマを掲げ、中世的な幻想性と神秘性を音楽全体にまとわせています。しかし、キーボードのケン・ヘンズレーはライナーノーツで「単なる曲の寄せ集め」と述べており、必ずしも壮大な物語性を前面に出したコンセプト・アルバムではなく、むしろ各楽曲がそれぞれの世界観を描いている点が特徴です[5]。
音楽的には、ハードロックとヘヴィメタルの骨太なリフ、プログレッシブな構成、そしてアコースティック楽器やハモンド・オルガンの多用が目立ちます。特にオルガンとギターの掛け合い、メロディアスなベースライン、デビッド・バイロンの圧倒的なボーカルが、バンドの個性を際立たせています[2][6]。
サウンドは、前作までに比べてポップでシンプルな側面も持つ一方で、重厚さと叙情性を両立。『Easy Livin’』のようなキャッチーなロックナンバーから『Rainbow Demon』のようなミステリアスなプログレッシブ・ロックまで、多彩な楽曲が並びます[6]。
制作時のエピソード
本作は、1972年3〜4月にロンドンのランズダウン・スタジオでレコーディングされました。この時期、バンドは新たなドラマーとしてリー・カースレイク、ベーシストとしてゲイリー・セイン(Thain)を迎え、「クラシック・ラインナップ」が完成。このメンバーによる初のアルバムとなりました[1][5]。
興味深いエピソードとして、ギタリストのミック・ボックスは「イタリアで女性たちに招かれた降霊会がきっかけで、本作のインスピレーションを得た」と語っています。実際にスピリチュアルな体験が音楽に影響を与えたというユニークなエピソードが伝えられています[3]。
また、プロデューサーのジェリー・ブロン(Gerry Bron)による徹底的なサポートと、バンドへの多大な投資(機材の購入や広告展開など)が、本作の成功を後押ししました[3]。
参加ミュージシャン
- デイヴィッド・バイロン(David Byron):ボーカル
- ミック・ボックス(Mick Box):ギター
- ケン・ヘンズレー(Ken Hensley):キーボード、ギター、パーカッション、バックボーカル、一部リードボーカル
- リー・カースレイク(Lee Kerslake):ドラム、パーカッション、バックボーカル
- ゲイリー・セイン(Gary Thain):ベース
- マーク・クラーク (Mark Clarke):ベース、『The Wizard』『Why』に参加、一部リードボーカル
この「クラシック・ラインナップ」は、バンド史上最高の評価を受けており、特にカースレイクの重厚なドラミング、セインのメロディックなベースがサウンドの要となっています[4][5]。

発表時の反響・評価
『悪魔と魔法使い』は、1972年5月19日にリリースされ、UKチャートで20位、US Billboard 200で23位、フィンランドでは1位を記録しました。シングル『Easy Livin’』は全米トップ40入り(39位)を果たし、バンド唯一の米国ヒットとなりました[2][5]。
レビューも好意的で、『Rolling Stone』は「今年最高のハイエナジーなパーティー・アルバム」と絶賛。『AllMusic』や『Collector's Guide to Heavy Metal』でも「ゴシック調のヘヴィメタルの傑作」「ミステリアスで叙情的なヘヴィメタル」と高く評価されています[5]。
また、本作は後にハンシ・キュルシュ(ブラインド・ガーディアン)とジョン・シェイファー(アイシード・アース)によるサイド・プロジェクト「Demons and Wizards」の名前の由来にもなりました[5]。
特筆すべきこと
- ジャケットアート:イエスなどのジャケットで知られる画家、ロジャー・ディーンによる幻想的なイラストが、アルバムの世界観を象徴しています[1][5]。
- 歴史的意義:本作はハードロック/ヘヴィメタルとプログレッシブ・ロックの融合を先駆け、後の多くのバンドに影響を与えました[2][6]。
- ラインナップの完成:本作で確立した「クラシック・ラインナップ」は、ユーライア・ヒープの「黄金期」を築きました[1][5]。
- ミュージシャンへの影響:ランディ・ローズ(オジー・オズボーン)も本作の音楽性を高く評価し、自身の楽曲制作にも影響を受けたと語っています[5]。

まとめ
『悪魔と魔法使い』は、ユーライア・ヒープの音楽性と個性が最高潮に達した作品であり、ハードロック、ヘヴィメタル、プログレッシブ・ロックの歴史に残る名盤です。ファンタジー色の強いコンセプト、圧倒的なラインナップ、そして時代を超えたサウンドが、今も多くのリスナーを魅了し続けています[2][5][6]。

Citations:
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E9%AD%94%E3%81%A8%E9%AD%94%E6%B3%95%E4%BD%BF%E3%81%84
- https://www.vintageguitar.com/39055/pop-n-hiss-uriah-heeps-demons-and-wizards/
- https://www.loudersound.com/features/whacked-out-occultists-scary-seances-and-the-saga-of-uriah-heeps-demons-and-wizards
- https://note.com/krichards/n/n163a19b5b26c
- https://en.wikipedia.org/wiki/Demons_and_Wizards_(Uriah_Heep_album)
- https://www.reddit.com/r/progrockmusic/comments/12xh3zq/album_spotlight_uriah_heep_demons_and_wizards/
- https://www.backgroundmagazine.nl/CDreviews/UriahHeepDemonsAndWizards.html
- https://consumethetangible.com/2021/11/20/uriah-heep-demons-and-wizards-1972/
- https://ultimateclassicrock.com/uriah-heep-demons-and-wizards-turns-40/
- https://theriff.fr/uriah-heep-demons-wizards/
- https://www.classicrockrevisited.com/show_interview.php?id=1152
- https://www.discogs.com/release/4413566-Uriah-Heep-%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%92%E3%83%BC%E3%83%97-Demons-And-Wizards-%E6%82%AA%E9%AD%94%E3%81%A8%E9%AD%94%E6%B3%95%E4%BD%BF%E3%81%84
- https://outsiderrock.ca/2022/05/25/uriah-heep-demons-wizards-at-50-years/
- https://www.reddit.com/r/RockTheSub/comments/122jejh/album_spotlight_uriah_heep_demons_and_wizards/
- https://www.thevinyldistrict.com/storefront/graded-curve-uriah-heep-demons-wizards/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Uriah_Heep_(band)
- https://www.abebooks.com/first-edition/Wizards-Demons-Uriah-Heep-Story-Dave/30744762234/bd
- https://www.waxpend.com/items/6613?page=4
- https://tower.jp/article/feature_item/2022/01/21/0108
- https://www.progarchives.com/album.asp?id=5897