レッド・ツェッペリン『レッド・ツェッペリンⅡ』

レッド・ツェッペリン『レッド・ツェッペリンⅡ』
レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)『レッド・ツェッペリンⅡ』(Led Zeppelin II)

『Led Zeppelin II』(レッド・ツェッペリンⅡ)は、1969年10月22日にリリースされたLed Zeppelin(レッド・ツェッペリン)の2枚目のスタジオアルバムです。このアルバムは、バンドの音楽性が急速に進化した重要作で、ハードロックの歴史に大きな影響を与えました。

『Led Zeppelin II』のコンセプトと制作背景

前作のブルース・ロックを基盤にしつつも、よりハードで重厚なサウンドと、即興性やライブ感を強く打ち出した作品となっています[1][2][5]。アルバム制作は、バンドの初期アメリカ・ツアー中に進められ、ホテルの部屋やサウンドチェック、世界各地のスタジオ(ロンドン、ロサンゼルス、メンフィス、ニューヨーク、バンクーバーなど)で断続的に録音されました[5][8][10]。

ジミー・ペイジ(ギター、プロデューサー)は「とにかく時間がなかった。ホテルの部屋で曲を書き、合間を縫ってスタジオに駆け込んだ」と後年語っています[6]。エンジニアには、ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)との仕事で知られるエディ・クレイマー(Eddie Kramer)を新たに起用し、彼の手腕がサウンドの進化に大きく寄与しました[5][8][11]。

音楽性・サウンドの特徴

『Led Zeppelin II』は、バンドのブルース・ルーツを色濃く残しつつも、ギターリフを中心に据えた「ヘヴィ・ロック」サウンドを確立した点で画期的です[1][10]。特に「Whole Lotta Love」「Heartbreaker」「The Lemon Song」「Moby Dick」「Bring It On Home」などは、ギターリフが楽曲のフックとなり、従来のポピュラー音楽とは一線を画す構成となっています[1][10]。

  • リフ主導の楽曲構成:「Whole Lotta Love」や「Heartbreaker」など、ギターリフが主役となり、ボーカルやコーラスよりもリフが曲を牽引するスタイルが特徴です[1][10]。
  • 多彩なアプローチ:「Ramble On」や「Thank You」ではアコースティックギターやオルガンが用いられ、フォークやバラード的な側面も見せます[2][4]。
  • 即興性とライブ感:多くの楽曲がツアー中の即興演奏やサウンドチェックから生まれ、ライブのエネルギーがそのまま反映されています[8][10]。
  • サウンドの厚みと臨場感:エディ・クレイマーのエンジニアリングにより、立体的で奥行きのあるサウンド、タイトなベース、パンチの効いたドラム、透明感のあるミックスが実現されています[3][5]。
  • 実験的要素:「What Is and What Should Never Be」のダイナミクスや、「Moby Dick」の長尺ドラムソロなど、従来のロックの枠を超えた試みも随所に見られます[2][5]。

参加ミュージシャン

  • ロバート・プラント(Robert Plant):ボーカル、作詞
  • ジミー・ペイジ(Jimmy Page):ギター、プロデュース
  • ジョン・ポール・ジョーンズ(John Paul Jones):ベース、キーボード
  • ジョン・ボーナム(John Bonham):ドラムス[19]

制作時のエピソード

  • アルバムはツアーの合間、13か所ものスタジオで断続的に録音されました[8][10]。
  • 楽曲の多くはライブの即興やサウンドチェックから生まれ、Pageのギターリフは「Dazed and Confused」の長尺インプロヴィゼーションから派生したものも多い[8][10]。
  • 「Whole Lotta Love」は、ウィリー・ディクソンの「You Need Love」に酷似していたため、後にディクソンに作曲クレジットが与えられています[8]。
  • 「Bring It On Home」はディクソンのカバーで、冒頭はオリジナルのブルーススタイル、途中から一気にハードロックへと展開する構成が特徴です[4]。
  • エンジニアのエディ・クレイマーは、アメリカ各地のスタジオで録音機材をかき集め、ペイジのギターソロを廊下で録音したこともあったと語っています[5]。
  • バンドのマネージャー、ピーター・グラント(Peter Grant)は、ウッドストック出演のオファーを「単なる一バンドに埋もれる」として断ったことも有名です[6]。

ジャケットデザイン

アルバムカバーはサットン・アート・カレッジでジミーの同級生だったデビッド・ジュニパー(David Juniper)が担当。第一次世界大戦時のドイツ空軍「レッド・バロン」ことマンフレート・フォン・リヒトホーフェン率いる「フライング・サーカス」飛行隊の写真をベースに、バンドメンバーや著名人(マイルス・デイヴィス、宇宙飛行士のニール・アームストロング、そしてアンディ・ウォーホルの恋人など)の顔をコラージュし、エアブラシで加工した斬新なデザインです[7][9][11][12]。

  • オリジナル写真のレッド・バロン本人は、ジャケットでは飛行船の煙で意図的に隠されています[7][9][12]。
  • ジャケットの独特なセピア色とコラージュ技法は、当時としては非常に実験的で、アートワークも高く評価され、1970年のグラミー賞「最優秀レコーディング・パッケージ」にノミネートされました[12]。
  • アメリカでは「The Brown Bomber」の愛称でも親しまれています[12]。

発表時の反響と評価

発売直後から全米・全英でチャート1位を獲得し、特にアメリカではビートルズの『Abbey Road』を抜いてトップに立ち、6か月で300万枚を売り上げる大ヒットとなりました[6][10]。「Whole Lotta Love」はシングルカットされ、全米4位のヒットを記録しています[6][8][10]。

批評家からは当初賛否両論ありましたが、後年になるにつれ「ハードロック/ヘヴィメタルの原型」「リフ主導型ロックの金字塔」として高く評価され、Rolling Stone誌の「史上最高のアルバム500」や『1001 Albums You Must Hear Before You Die』など、数々の名盤リストに選出されています[1]。

特筆すべき点・レガシー

  • リフ主導型ロックの確立:本作以降、ロックにおける「リフ」の重要性が飛躍的に高まり、後続のハードロック/ヘヴィメタルバンドに多大な影響を与えました[1][10]。
  • ギター奏法の革新:「Heartbreaker」のギターソロは、エディ・ヴァン・ヘイレンのタッピング奏法など、次世代ギタリストに大きな影響を与えています[1]。
  • バンドの即興性とライブ感の表現:スタジオ録音でありながら、ライブのエネルギーや即興性をそのままパッケージした点が、他のロックアルバムと一線を画します[2][5]。
  • アートワークの革新性:コラージュとエアブラシを駆使したジャケットデザインは、音楽と同様にロックのアートワーク史にも大きな足跡を残しました[7][11][12]。

まとめ

『Led Zeppelin II』は、ツアー中の混沌とした状況下で生まれたにもかかわらず、バンドの創造性と演奏力、そしてサウンド面での革新性が凝縮された、ロック史に残る金字塔です。リフ主導の楽曲構成、ライブ感あふれる演奏、多彩な音楽性、そして実験的なアートワークは、今なお多くのミュージシャンやリスナーに影響を与え続けています。

合わせて読みたい

Citations:

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Led_Zeppelin_II
  2. https://citizendium.org/wiki/Led_Zeppelin_II
  3. https://ontherecord.co/2024/09/14/led-zeppelin-ii-led-zeppelin-ii/
  4. https://brutallyhonestrockalbumreviews.wordpress.com/2024/06/16/album-review-led-zeppelin-led-zeppelin-ii/
  5. https://www.guitarplayer.com/players/the-definitive-story-of-led-zeppelin-ii-track-by-track
  6. https://www.rhino.com/article/october-1969-led-zeppelin-release-led-zeppelin-ii
  7. https://sinusoidalmusic.com/listicles/exploring-led-zeppelins-artworks/
  8. https://www.rhino.com/article/10-things-you-might-not-know-about-led-zeppelin-ii
  9. https://hellorayo.co.uk/planet-rock/news/rock-news/50-facts-about-led-zeppelins-seminal-album-covers/
  10. https://ultimateclassicrock.com/led-zeppelin-ii/
  11. https://rockpopgallery.typepad.com/rockpop_gallery_news/2007/05/cover_story_led.html
  12. https://www.loudersound.com/features/led-zeppelin-ii-red-baron
  13. https://www.loudersound.com/features/how-led-zeppelin-ii-changed-the-face-of-rock-music
  14. https://www.licklibrary.com/learn/courses/classic-albums-led-zeppelin-ii
  15. https://forums.ledzeppelin.com/topic/6555-mixing-led-zeppelin-ii/
  16. https://www.bbc.co.uk/music/reviews/hxhj/
  17. https://www.progarchives.com/album.asp?id=13528
  18. https://www.licklibrary.com/store/courses/classic-albums-led-zeppelin-ii
  19. https://forums.stevehoffman.tv/threads/led-zep-ii-and-queen-ii-the-worst-productions-ever.640090/
  20. https://www.sputnikmusic.com/review/68281/Led-Zeppelin-Led-Zeppelin-II/
  21. https://www.rollingstone.com/music/music-news/led-zeppelin-ii-how-band-came-into-its-own-on-raunchy-1969-classic-121246/
  22. https://ledzeppelin.fandom.com/wiki/Led_Zeppelin_II
  23. https://www.reddit.com/r/todayilearned/comments/8vs97k/til_that_the_first_print_of_led_zeppelin_ii_had/
  24. https://www.rollingstone.com/music/music-album-reviews/led-zeppelin-ii-182340/
  25. https://study.com/academy/lesson/led-zeppelin-biography-members-songs.html
  26. https://citizendium.org/wiki/Led_Zeppelin_II
  27. https://www.reddit.com/r/ledzeppelin/comments/11vigsp/jimmy_records_parts_of_led_zeppelin_ii_spring/
  28. https://en.wikipedia.org/wiki/Led_Zeppelin
  29. https://www.artscommons.ca/blog/led-zeppelin-ii-how-rock-became-metal-became-mythology
  30. https://www.tightbutloose.co.uk/dl-diary/led-zeppelin-ii-at-52-lz-news-the-song-remains-the-same-at-45-the-beatles-let-it-be-dl-diary-blog-update/
  31. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%84%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%83%B3_II
  32. https://www.thisdayinmusic.com/classic-albums/led-zeppelin-led-zeppelin-ii/
  33. https://open.spotify.com/intl-ja/album/70lQYZtypdCALtFVlQAcvx
  34. https://discography.ledzeppelin.com/lz2.html
  35. https://depauliaonline.com/43576/artslife/music/the-legacy-of-led-zeppelin-ii/
  36. https://www.analogplanet.com/content/%E2%80%9Cramblin%E2%80%99-on%E2%80%9D-about-led-zeppelin-ii-or-i-got-blisters-my-eardrums
  37. https://ultimateclassicrock.com/led-zeppelin-album-covers/
  38. https://hypergallery.com/en-us/products/led-zeppelin-led-zeppelin-ii
  39. https://www.guitarplayer.com/players/the-definitive-story-of-led-zeppelin-ii-track-by-track
  40. https://fontsinuse.com/uses/12590/led-zeppelin-ii-album-art
  41. https://www.cheatsheet.com/news/led-zeppelin-ii-figures-album-cover.html/
  42. https://www.rollingstone.com/feature/how-led-zeppelin-ii-was-born-238721/
  43. https://www.rs500albums.com/150-101/123
  44. https://ultimateclassicrock.com/led-zeppelin-ii-track-by-track/
  45. https://note.com/calm_phlox701/n/n95d61846bc7b
  46. https://www.youtube.com/watch?v=KN5CZcODEFg
  47. https://forums.ledzeppelin.com/topic/12814-zeppelin-recording-sessions/
  48. https://www.acornlive.org/events/led-zeppelin2-11-16-24/
  49. https://www.reddit.com/r/ledzeppelin/comments/tjobtn/led_zeppelin_ii/
  50. https://www.raptisrarebooks.com/product/david-juniper-signed-led-zeppelin-ii-album/

SHARE:
この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
あなたへのおすすめ