ELP『恐怖の頭脳改革』を聴く
エマーソン・レイク・アンド・パーマ『恐怖の頭脳改革』
スポンサーリンク

エマーソン・レイク・アンド・パーマ(Emerson, Lake & Palmer、EL&P)の4枚目のスタジオアルバム『Brain Salad Surgery』(恐怖の頭脳改革)は、1973年12月7日にリリースされた、プログレッシブ・ロックの金字塔的作品です。

コンセプトと音楽性

このアルバムは、EL&Pの野心的で実験的なアプローチを体現しています。クラシック音楽とロックの融合、複雑な楽曲構成、高度な演奏技術が特徴です[1]。タイトルの『Brain Salad Surgery』は、フェラチオを意味するスラングから取られており、当時としては挑発的な意味合いを持っていました[3]。

楽曲と特徴

アルバムは8曲で構成されており、オープニングの「Jerusalem」から壮大な「Karn Evil 9」まで、多彩な楽曲が収録されています[4]。

  • 「Jerusalem」: イギリスの愛国歌をELP流にアレンジ
  • 「Toccata」: アルベルト・ヒナステラの現代クラシック作品をロックにアレンジ
  • 「Still… You Turn Me On」: グレッグ・レイクによる叙情的なバラード
  • 「Karn Evil 9」: 3部構成の30分近い大作で、未来的なテーマを持つ[1][4]

トラックリスト

Side 1

  1. 聖地エルサレム(Jerusalem)
  2. トッカータ(Toccata)
  3. スティル...ユー・ターン・ミー・オン(Still...You Turn Me On)
  4. 用心棒ベニー(Benny The Bouncer)
  5. 悪の教典#9 第1印象 パート1(Karn Evil 9: 1st Impression-Part 1)

Side 2

  1. 悪の教典#9 第1印象 パート2(Karn Evil 9: 1st Impression-Part 2)
  2. 悪の教典#9 第2印象(Karn Evil 9: 2nd Impression)
  3. 悪の教典#9 第3印象(Karn Evil 9: 3rd Impression)

制作エピソード

EL&Pは、このアルバムの制作のために映画館を買い取り、リハーサル兼録音スタジオとして使用しました。これにより、ライブ感覚を保ちながら録音することができました[26]。

キース・エマーソンは「Toccata」のアレンジに際し、原曲の作曲者アルベルト・ヒナステラから直接許可を得るため、スイスまで足を運びました。ヒナステラはEL&Pのアレンジを高く評価し、快諾したといいます[4]。

パーソネル

  • キース・エマーソン (Keith Emerson)- キーボード
  • グレッグ・レイク (Greg Lake)- ボーカル・ベース・ギター
  • カール・パーマー (Carl Palmer)- ドラムス[27]

発表時の反響

発売当時、批評家の評価は賛否両論でした。しかし、商業的には大成功を収め、イギリスでは2位、アメリカでは11位を記録しました[5]。その後、時を経るにつれて評価は高まり、現在では70年代プログレッシブ・ロックの傑作として認識されています[36]。

ジャケットデザイン

アルバムカバーは、スイスの芸術家H.R.ギーガーによるものです。ギーガーの特徴的なバイオメカニカルなアートワークが用いられ、人間の頭蓋骨と機械的な要素が融合したデザインとなっています[5][39]。

当初、ジャケットにはより露骨な性的表現が含まれていましたが、レコード会社の要請により一部修正されました[37]。このジャケットは、アルバムの音楽と同様に大きな話題を呼びました。

特筆すべき点

『恐怖の頭脳改革』は、EL&Pの音楽性が最も洗練された形で表現された作品と言えます。キーボード、ベース、ドラムスという3人編成ながら、オーケストラのような壮大なサウンドを作り出しています[32]。

また、このアルバムでは当時最新のシンセサイザー技術が駆使されており、ムーグ・アポロと呼ばれる初のポリフォニック・シンセサイザーのプロトタイプが使用されました[18]。

『恐怖の頭脳改革』は、その音楽的野心、技術的革新、そして視覚的なインパクトにより、プログレッシブ・ロックの歴史に深く刻まれた作品となりました。EL&Pの創造性と演奏力が最高潮に達した瞬間を捉えた、まさに彼らの代表作と言えるでしょう[4][32]。

アルバムレヴュー

エマーソン・レイク・アンド・パーマEL&P)の『恐怖の頭脳改革(Brain Salad Surgery)』です。
1973年発表、彼ら5枚目のアルバム。

目を引くのは、やはり、ジャケットのデザイン。
デザインは映画『エイリアン』でクリーチャーのデザインもやった巨匠、H・R・ギーガー。
自分が高校生の頃はまだ『エイリアン』は制作されてなく、ギーガーの名前も知らなかったが、それでも、えらく印象に残るデザインだと思っていた。
ちなみに、観音開きのジャケットは中央から開くと美女が現れる。
ほぼ、ジャケ買いといった感じで購入したアルバムである。
やはり、こういう凝ったデザインのモノはCDよりレコードの方が断然よい。

エマーソン・レイク・アンド・パーマ『恐怖の頭脳改革』のジャケット
これが
こうなって:エマーソン・レイク・アンド・パーマ『恐怖の頭脳改革』のジャケットは観音開き
こうなって
こうなる:エマーソン・レイク・アンド・パーマ『恐怖の頭脳改革』の観音開きのジャケットを開くと美女が現れる
こうなる

推し曲はA面1曲目の「聖地エルサレム」。
冒頭のファンファーレからしてカッコいい。
といっても、オリジナルはパリーという英国の作曲家がつくった聖歌。
ウィリアム・ブレイクの詩に曲をつけた歌曲で、BBCプロムスというロンドンで開催されるクラシックの一大イベントの最終夜で必ず演奏されるなど英国で国民的に愛されているという。
余談だが2013年にBBCプロムスに出演した、辻井伸行のピアノ演奏は本当に素晴らしかった。
昔、その時の動画をYoutubeで観たのだけれどホント、感動した…。

elpと聞いて、すぐに浮かぶのはクラシック、そして、テクニシャンというキーワード。
そういう意味では同じプログレッシブロックでもピンク・フロイドとは対極にあるようなグループではなかろうか?
クラシックというのは文字通り、クラシックの楽曲をアレンジして発表した作品の多いこと。
ロシアの作曲家、ムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』をロックにアレンジして制作された、そのまんまのタイトルの『展覧会の絵』というアルバムは、ある意味、画期的だった。
当時、ロックのミュージシャンがクラシックの作品をまんま演奏するという発想は、なかったのでなかろうか?
ちなみに「悪の教典#9 第2印象」ではソニー・ロリンズの「セント・トーマス」というジャズの楽曲の有名なフレーズが聞こえる。

ドラムのカール・パーマやキーボードのキース・エマーソンはめちゃくちゃ手数が多く、なんか忙しない。
本当に上手いとは思うのだが、ゆったりとした気分で聴くことができない。
彼らのアルバムを聴こうというときは、それなにりに心構えが必用なのは自分だけだろうか…。
高校生の頃は、しょっちゅう聴いていたのだけれど歳を取ったせいかな…。
自分的には2枚目のアルバムの『タルカス』の方が好みです。

Citations:
[1] https://www.loudersound.com/features/the-story-of-emerson-lake-and-palmers-brain-salad-surgery
[2] https://www.musicradar.com/news/guitars/keith-emerson-talks-elps-brain-salad-surgery-track-by-track-594681
[3] https://bestclassicbands.com/elp-brain-salad-surgery-review-6-14-211/
[4] https://www.loudersound.com/features/emerson-lake-palmer-brain-salad-surgery
[5] https://ultimateclassicrock.com/elp-brain-salad-surgery/
[6] http://www.ladiesofthelake.com/cabinet/bssliner.html
[7] https://en.wikipedia.org/wiki/Brain_Salad_Surgery
[8] https://somethingelsereviews.com/2023/12/09/emerson-lake-and-palmer-brain-salad-surgery/
[9] https://www.loudersound.com/features/how-hr-giger-and-elp-created-the-brain-salad-surgery-cover
[10] https://www.pickledpriest.com/single-post/surgical-focus-an-appreciation-of-emerson-lake-palmer-s-masterwork-brain-salad-surgery
[11] https://www.reddit.com/r/progrockmusic/comments/hu7ujf/why_is_elps_album_brain_salad_surgery_named_that/
[12] https://liveforlivemusic.com/news/jamfather-gems-emerson-lake-and-palmer-brain-salad-surgery/
[13] https://ultimateclassicrock.com/elp-brain-salad-surgery/
[14] https://horrorthriller.com/Music/Reviews/DEF/elpbss.html
[15] https://www.loudersound.com/features/the-story-of-emerson-lake-and-palmers-brain-salad-surgery
[16] https://audiophilereview.com/audiophile-music/elps-brain-salad-surgery-old-vs-new-compared-and-contrasted/
[17] https://www.albumoftheyear.org/user/musicallyl/album/14679-brain-salad-surgery/
[18] https://en.wikipedia.org/wiki/Brain_Salad_Surgery
[19] https://forums.stevehoffman.tv/threads/best-sounding-elp-brain-salad-surgery-cd.892978/
[20] https://progarchy.com/2017/08/15/the-albums-that-changed-my-life-1-brain-salad-surgery-by-emerson-lake-and-palmer/
[21] https://pienemmatpurot.com/2023/11/19/review-emerson-lake-palmer-brain-salad-surgery-1973/
[22] https://www.soundandvision.com/content/remaster-clase-emerson-lake-palmer-brain-salad-surgery
[23] https://www.youtube.com/watch?v=2A8mpHHw6zo
[24] http://www.ladiesofthelake.com/cabinet/bssliner.html
[25] https://www.reddit.com/r/progrockmusic/comments/133b5a2/story_of_brain_salad_surgery_documentary/
[26] https://www.loudersound.com/features/chaos-cash-and-caligulan-excess-how-emerson-lake-and-palmer-made-brain-salad-surgery
[27] https://en.wikipedia.org/wiki/Emerson,Lake&_Palmer
[28] https://rockandrollglobe.com/rock/welcome-back-my-friends-elps-brain-salad-surgery-at-50/
[29] https://hrgiger.com/music/emerson1.htm
[30] https://www.last.fm/music/Emerson,+Lake+&+Palmer/Brain+Salad+Surgery/+wiki
[31] https://www.loudersound.com/features/emerson-lake-palmer-brain-salad-surgery
[32] https://www.classicrockrevisited.com/show_review.php?id=1575
[33] https://www.reddit.com/r/progrockmusic/comments/kdukxt/whats_your_opinion_on_elp_brain_salad_surgery_1973/
[34] https://forums.stevehoffman.tv/threads/when-in-1973-was-brain-salad-surgery-released-elp-emerson-lake-palmer.1188755/
[35] https://www.backseatmafia.com/not-forgotten-emerson-lake-palmer-brain-salad-surgery/
[36] https://www.artchive.com/artwork/work-nr-217-elp-i-brain-salad-surgery-h-r-giger-1973/
[37] https://www.youtube.com/watch?v=TnYlhlJ_fMY
[38] https://www.posterdrops.com/art/37244
[39] https://www.hrgiger.com/music/covers.htm
[40] https://first-draft.com/2014/05/29/album-cover-art-wednesday-brain-salad-surgery-2/
[41] https://www.tallengestore.com/products/brain-salad-surgery-elp-1-h-r-giger-emerson-lake-and-palmer-album-cover-art

スポンサーリンク

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事