ジェネシス『怪奇骨董音楽箱』

ジェネシス『怪奇骨董音楽箱』
ジェネシス(Genesis)『怪奇骨董音楽箱』(Nursery Cryme)

Genesis(ジェネシス)の3rdアルバム『Nursery Cryme(ナーサリー・クライム)』(怪奇骨董音楽箱)は、バンドの音楽的進化において重要な転換点となった作品です。1971年11月12日にリリースされたこのアルバムは、新メンバーのスティーブ・ハケットとフィル・コリンズの加入後、初めて制作されたものです[1][3]。

コンセプトと音楽性

『怪奇骨董音楽箱』は、ヴィクトリア朝的な物語性、ダークユーモア、神話的テーマを融合させた独特の世界観を持っています[6]。アルバムタイトルの「Nursery Cryme」は、「Nursery Rhyme(童謡)」をもじったものであり、その遊び心がアルバム全体のトーンを象徴しています[5]。歌詞は皮肉や風刺、幻想と現実の交錯が随所に見られ、ピーター・ガブリエルの独特な語り口が目立ちます。

音楽的には、フォーキーな要素を残しつつも、よりアグレッシブで力強いサウンドへと進化しています[3]。ハケットのリードギターが大きく貢献し、「The Musical Box」「The Return of the Giant Hogweed」「The Fountain of Salmacis」などの楽曲で印象的なソロを披露しています[3]。

サウンドの特徴

アルバムのサウンドは、以下の要素によって特徴づけられています:

  1. 12弦ギターとエレクトリックギター、キーボードによる重層的なアレンジ
  2. トニー・バンクスによるアルペジオを多用したキーボード演奏
  3. 変拍子と複数のセクションを持つ楽曲構成
  4. 卓越した演奏技術とアンサンブル[1]

フィル・コリンズのドラミングは前任者のジョン・メイヒューを上回る技術を見せ、彼のボーカルもバンドの全体的なサウンドに大きく貢献しています[1]。

制作時のエピソード

アルバムはロンドンのトライデント・スタジオで主に録音されましたが、メロトロンの技術的な問題に対処するため、ジョージ・マーティンのAIRスタジオも一部使用されました[6]。

前任ギタリスト(アンソニー・フィリップス)とドラマー(ジョン・メイヒュー)の脱退を受け、コリンズとハケットが加入。彼らの高い演奏力がバンドに新たな可能性をもたらしました[6]。

ピーター・ガブリエルは後にこのアルバムについて、「前作の『Trespass(侵入)』よりも陰影のある作品になった。『Trespass』には太陽の光が差し込むフォーキーな野原や屋外の雰囲気があったが、『Nursery Cryme』では室内に入り込んだ感じだ」とコメントしています[6]。

参加ミュージシャン

  • ピーター・ガブリエル(Peter Gabriel):ボーカル
  • トニー・バンクス(Tony Banks):キーボード
  • マイク・ラザフォード(Mike Rutherford):ベース、ギター
  • フィル・コリンズ(Phil Collins):ドラムス、ボーカル
  • スティーブ・ハケット(Steve Hackett):ギター[3][10]

トラックリスト

Side 1

  1. The Musical Box - 怪奇のオルゴール (10:27)
  2. For Absent Friends - 今いない友の為に (1:44)
  3. The Return of the Giant Hogweed - ジャイアント・ホグウィードの逆襲 (8:10)

Side 2

  1. Seven Stones - セブン・ストーンズ(5:08)
  2. Harold the Barrel - ハロルド・ザ・バレル (2:58)
  3. Harlequin - 道化師 (2:53)
  4. The Fountain of Salmacis - サルマシスの泉 (7:47)

発表時の反響

『怪奇骨董音楽箱』は発売当初、批評家からは賛否両論の評価を受けました[10]。イギリスでの商業的成功は即座には得られませんでしたが、イタリアなど大陸ヨーロッパでは好評を博しました[10]。

Rolling Stone誌は、想像力豊かで愛すべき奇抜さを評価しつつも、プロダクションの問題点を指摘しました[10]。一方、キース・エマーソンは「信じられないほど素晴らしいアルバム」と絶賛しています[10]。

特筆すべき点

  1. 「The Musical Box」は、その後のジェネシスのライブセットリストに長く残る名曲となりました[8]。
  2. アルバムジャケットは、ポール・ホワイトヘッドによる『不思議の国のアリス』にインスパイアされたアートワークで、アルバムの雰囲気を見事に表現しています[6]。
  3. 後年になって再評価され、BBCミュージックは「ジェネシスは実質的に独自のジャンル、エドワード朝ロックを発明した」と評しています[10]。
  4. 2013年7月22日、イギリスでシルバーディスク認定(6万枚以上の売り上げ)を獲得しました[10]。

『Nursery Cryme』は、ジェネシスの独特な音楽性が確立されていく過程を示す重要な作品であり、その後のプログレッシブ・ロック史に大きな影響を与えたアルバムとして位置づけられています。

Citations:
[1] https://www.psaudio.com/blogs/copper/analogue-productions-reissues-genesis-em-nursery-cryme-em
[2] https://altrockchick.com/2016/09/27/nursery-cryme-by-genesis/
[3] https://www.last.fm/music/Genesis/Nursery+Cryme/+wiki
[4] https://forums.stevehoffman.tv/threads/genesis-nursery-cryme-50th-anniversary-a-victorian-prog-masterpiece.1119118/
[5] https://wahwriter.wordpress.com/2016/04/14/classic-genesis-album-review-nursery-cryme/
[6] https://genesis-band.com/album/nursery-cryme-1971-genesis/
[7] https://www.reddit.com/r/Genesis/comments/bjzim5/my_thoughts_on_nursery_cryme_1971_first_listen/
[8] https://ultimateclassicrock.com/genesis-nursery-cryme-album/
[9] https://www.genesis-news.com/artikel/genesis-release-date-research-nursery-cryme-report/
[10] https://en.wikipedia.org/wiki/Nursery_Cryme

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