プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ(P.F.M.)『幻の映像』

プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ(P.F.M.)『幻の映像』
プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ(Premiata Forneria Marconi)『幻の映像』(Photos of Ghosts)

『Photos of Ghosts』(邦題:幻の映像)は、イタリアのプログレッシヴ・ロックバンド、Premiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ、PFM)が1973年に発表した、彼らにとって初の英語詞アルバムであり、世界進出のための重要な作品です。

『Photos of Ghosts』のコンセプト

このアルバムは、イタリア語の2ndアルバム『Per un amico』(1972年)をベースに、英語詞を新たに付与し、さらに新曲やアレンジを加えた内容となっています[5][6]。コンセプトとしては「幻想的な映像美」「聴く者を異世界へ誘う音楽的絵画性」が強調されており、タイトル曲や各楽曲が持つイマジネーション豊かな世界観が特徴です[6]。

音楽性・サウンドの特徴

PFMのサウンドは、クラシック音楽の素養とロックのダイナミズムが融合した、シンフォニックかつリリカルなプログレッシヴ・ロックです。アルバム全体を通して、以下のような特徴が挙げられます。

  • クラシカルな美しさとロックの躍動感
    叙情的なギター、繊細なピアノやハープシコード、流麗なフルートやヴァイオリン、そしてシンセサイザーやメロトロンの重厚な響きが複雑に絡み合い、壮大なスケール感を生み出しています[6]。
  • 多彩な楽曲展開と変幻自在のアレンジ
    各曲は静と動、緩急、幻想性と現実感が巧みに交錯し、まるで一枚の絵画が物語性を持って展開していくような印象を与えます[6]。
  • イタリア的な明るさと温かみ
    PFMの音楽には、イタリアの風土を思わせる陽光のような明るさや、どこか懐かしさを誘う情緒が根底に流れています[6]。
  • 英語詞による国際性の獲得
    英語詞は単なる直訳ではなく、元キング・クリムゾンの作詞家ピート・シンフィールドによる新たな詩世界が構築され、オリジナルのイタリア語版とは異なる独自の魅力を放っています[5][2][3]。

制作時のエピソード

PFMは、イタリア国内ですでに高い人気を誇っていましたが、エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)のグレッグ・レイクに見いだされ、彼らが設立したマンティコア・レーベルと契約。世界進出の足がかりとして制作されたのが本作です[1][5][6]。

  • ピート・シンフィールドの参加
    英語詞の大半は、King Crimsonの元作詞家でありEL&Pとも関係の深いピート・シンフィールドが新たに書き下ろし、プロデューサーとしても録音・ミキシングに深く関わりました[5][2][3]。
  • ロンドンでの新録音・リミックス
    英語詞のボーカル録音や一部楽曲のリミックスはロンドンのCommand Studiosで行われ、国際的な音作りを意識した制作体制が敷かれました[5][6]。
  • アルバム構成の工夫
    『Per un amico』の全曲に加え、新曲「Old Rain」や、1stアルバムの「È festa」(英題「Celebration」)などを収録。楽曲「Il Banchetto」は唯一イタリア語のまま収録されています[5][6]。

参加ミュージシャン

主要メンバーは以下の通りです[5][4][6]。

  • フランコ・ムッシーダ(Franco Mussida):ギター、ボーカル
  • フラヴィオ・プレモリ(Flavio Premoli):キーボード、ボーカル
  • マウロ・パガーニ(Mauro Pagani):フルート、ヴァイオリン、ボーカル
  • ジョルジョ・ピアッツァ(Giorgio Piazza):ベース、ボーカル
  • フランツ・ディ・チョッチョ(Franz Di Cioccio):ドラム、パーカッション、ボーカル
  • ピート・シンフィールド(Pete Sinfield):英語詞、プロデュース

エンジニアにはアンディ・ヘンドリクセン、ガエタノ・リアらが名を連ねています[4]。

発表時の反響

『Photos of Ghosts』は、イタリアのロックバンドとして初めてアメリカのBillboard 200チャートにランクイン(最高180位)するなど、国際的な成功を収めました[5]。特に「Celebration」は北米のFMラジオで盛んにオンエアされ、PFMの名を世界に知らしめるきっかけとなりました[5]。

EL&Pが自らのレーベルで送り出した初のアーティストという話題性もあり、当時のプログレッシヴ・ロックファンやメディアから大きな注目を集めました[1][6]。

特筆すべきこと

  • イタリアン・ロックの国際化の象徴
    本作は、イタリアのプログレッシヴ・ロックが世界市場に進出するうえでの金字塔的存在と評価されています[1][3]。
  • 英語詞による再解釈と独自性
    ピート・シンフィールドによる新たな英語詞は、単なる翻訳ではなく、オリジナルとは異なる詩的世界を創出し、アルバム全体に新たな命を吹き込んでいます[5][2][3]。
  • 音楽的映像美の追求
    アルバムタイトルや各楽曲が喚起する「絵画的イメージ」「幻想的な映像美」は、PFMの音楽性を象徴する重要な要素であり、聴く者の想像力を強く刺激します[6]。
  • 後年の再評価とリマスター
    2010年にはリマスター&エクスパンデッド・エディションがリリースされ、未発表ミックスや豪華ブックレットが付属するなど、現在も高い評価を受け続けています[2]。

まとめ

『Photos of Ghosts』は、PFMの音楽的成熟と国際的野心が結実した歴史的名盤です。イタリア的な叙情性とプログレッシヴ・ロックのダイナミズム、英語詞による新たな詩世界が融合し、今なお多くのリスナーを魅了し続けています。世界のロック史におけるイタリアン・プログレの存在感を決定づけた、まさに「世界遺産的」な一枚と言えるでしょう[1][3][5][6]。

Citations:

  1. https://ameblo.jp/rock19845150/entry-12683593932.html
  2. https://www.cherryred.co.uk/pfm-photos-of-ghosts-remastered-and-expanded-edition-cd
  3. https://takechas.com/?pid=120187428
  4. https://www.discogs.com/release/1532041-Premiata-Forneria-Marconi-Photos-Of-Ghosts
  5. https://en.wikipedia.org/wiki/Photos_of_Ghosts
  6. https://www.natsuzora.com/wish/impressions/pfm-photos.html
  7. https://en.wikipedia.org/wiki/Premiata_Forneria_Marconi
  8. https://music.apple.com/jp/album/photos-of-ghosts/254143513
  9. https://www.planetmellotron.com/revpfm.htm
  10. https://www.discogs.com/release/6980850-Premiata-Forneria-Marconi-Photos-Of-Ghosts
  11. https://www.discogs.com/master/1451-Premiata-Forneria-Marconi-Photos-Of-Ghosts
  12. https://www.reddit.com/r/progrockmusic/comments/gdfjky/premiata_forneria_marconi_photos_of_ghosts_1973/
  13. https://www.allmusic.com/album/photos-of-ghosts-mw0000738515
  14. https://music.apple.com/jp/song/generale/267005667
  15. https://starlingdb.org/music/pfmc.htm
  16. https://www.sputnikmusic.com/review/39104/Premiata-Forneria-Marconi-Photos-of-Ghosts/
  17. http://therockasteria.blogspot.com/2021/09/premiata-forneria-marconi-photos-of.html
  18. http://vintageprog.com/ppp2.htm
  19. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BB%E3%81%AE%E6%98%A0%E5%83%8F
  20. https://www.progarchives.com/album.asp?id=1986

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