ジェネシス『そして3人が残った』

ジェネシス『そして3人が残った』
ジェネシス(Genesis)『そして3人が残った』(...And Then There Were Three...)

1978年に発表された『...And Then There Were Three...』(邦題:そして3人が残った)は、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド、Genesis(ジェネシス)の9作目のスタジオ・アルバムです。

『...And Then There Were Three...』の概要とコンセプト

本作はギタリストのスティーヴ・ハケット脱退後、フィル・コリンズ(ヴォーカル/ドラム)、トニー・バンクス(キーボード)、マイク・ラザフォード(ベース/ギター)の3人編成となって初めて制作されたアルバムであり、タイトルは「そして3人だけになった」という状況を示唆しています[1][2]。

このアルバムは、従来のプログレッシブ・ロックの長大で複雑な楽曲構成から、より短くコンパクトで親しみやすい楽曲への転換点となりました。背景には1970年代後半のパンクやニューウェーブの台頭、音楽業界の変化があり、ジェネシス自身も時代の流れに対応する必要があったためです[1][2][3]。

音楽性・サウンドの特徴

  • プログレッシブからポップへの移行
    アルバム冒頭の「Down and Out」は複雑な変拍子を持つプログレッシブ・ロック色の強い楽曲ですが、ラストの「Follow You Follow Me」はシンプルでキャッチーなポップソングとなっており、アルバム全体でジェネシスの音楽性の幅広さと変化が示されています[1][4]。
  • キーボード主導のサウンド
    ハケット脱退によりギターの存在感が薄れ、バンクスのキーボードがサウンドの中心となりました。ラザフォードはハケットのギタースタイルを模倣せず、自身のシンプルなギタープレイに徹したため、全体的にキーボードが厚みを持つサウンドが特徴です[1][4]。
  • 短い楽曲構成
    以前のアルバムと比べて曲の長さが短くなり、1曲あたりのアイディアを凝縮した構成となっています。これは「より多くの楽曲アイディアを1枚のアルバムに収めたい」というバンドの意向によるものです[2][3]。
  • 歌詞の変化
    従来の神話的・幻想的なテーマから、よりパーソナルで日常的なテーマへと変化。特に「Follow You Follow Me」はシンプルなラブソングであり、バンド初の本格的なヒットシングルとなりました[1][2]。

制作時のエピソード

  • 制作の背景
    1977年、前作『Wind & Wuthering』ツアー終了後にハケットが脱退。残った3人はギタリストを新たに迎えず、自分たちで全ての楽器を担当することを決断しました。レコーディングはオランダのRelight Studiosで行われ、約2週間で基本トラックが録音されました[1]。
  • 楽曲制作の過程
    多くの曲は事前に書かれており、即興やジャムセッションによるものは少数でした。特に「Follow You Follow Me」はリハーサル段階で生まれ、何度もアレンジを重ねて完成。ラザフォードが10分で書き上げた歌詞は、妻からインスピレーションを得たものです[1]。
  • レコーディングの工夫
    3人編成となったことで、各メンバーの役割が明確になり、録音作業がスムーズになったと語られています。ギターのパートが薄くなった分、オーバーダビングで厚みを加えています[1]。

参加ミュージシャン

  • フィル・コリンズ(Phil Collins):ドラム、ヴォーカル
  • トニー・バンクス(Tony Banks):キーボード
  • マイク・ラザフォード(Mike Rutherford):ベース、ギター

プロデューサーはバンド自身とデヴィッド・ヘンチェル(David Hentschel)が担当。ライブツアーではダリル・ステューマー(Daryl Stuermer、ギター)とチェスター・トンプソン(Chester Thompson、ドラム)がサポートとして参加し、以後長期にわたりツアーメンバーとなります[1]。

発表時の反響

  • 商業的成功
    アルバムはイギリスで3位、アメリカで14位を記録し、特に「Follow You Follow Me」はイギリス7位、アメリカ23位とバンド初の大ヒットとなりました[1][2]。アメリカでは1988年にプラチナディスク認定も受けています1
  • 批評家の評価
    発表当時は賛否両論で、プログレッシブ色の後退を惜しむ声もありましたが、楽曲の強さやサウンドのまとまりを評価する声も多くありました。特に「Ballad Of Big」や「Down and Out」などは高評価を受けています[1]。
  • ファンの反応
    長年のファンからは「短い曲が多い」「ギターの存在感が薄い」といった戸惑いもあった一方、後年には「バンドの進化の過程を示す重要作」として再評価されています[5]。
ジェネシス(Genesis)『そして3人が残った』(...And Then There Were Three...):ジャケットの表・裏面
ジャケットの表・裏面

特筆すべきこと

  • 時代の転換点
    本作はジェネシスがプログレッシブ・ロックからポップ・ロックへの転換を果たした最初のアルバムであり、1980年代の大成功への布石となりました[2][4]。
  • バンドの結束
    ハケット脱退という危機を乗り越え、3人で新たなサウンドを模索し、結果的に新たなファン層を獲得することに成功しました[2][3]。
  • サウンドの進化
    バンクスのキーボードが主導する厚みのあるサウンド、コリンズの表現力豊かなヴォーカル、ラザフォードの堅実なギター/ベースが融合し、独自の音世界を築き上げています[1][2]。

ジェネシスの『...And Then There Were Three...』は、バンド史における大きな転換点であり、音楽的な進化と商業的成功を同時に成し遂げた重要作です。そのサウンドや制作背景、時代性を知ることで、ジェネシスの多面的な魅力をより深く味わうことができます[1][2][3]。

Citations:

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/...And_Then_There_Were_Three...
  2. https://ultimateclassicrock.com/genesis-and-then-there-were-three/
  3. https://b1027.com/genesis-and-then-there-were-three/
  4. https://en.faceoffrockshow.com/post/genesis-and-then-there-were-three
  5. https://www.reddit.com/r/Genesis/comments/10aiano/and_then_there_were_three_is_criminally_underrated/
  6. https://www.inthestudio.net/online-only-interviews/genesis-and-then-there-were-3/
  7. https://theapiarist.org/and-then-there-were-three/
  8. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9D%E3%81%97%E3%81%A63%E4%BA%BA%E3%81%8C%E6%AE%8B%E3%81%A3%E3%81%9F
  9. https://www.progarchives.com/album.asp?id=1515
  10. https://www.discogs.com/release/1290109-Genesis-And-Then-There-Were-Three
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