アラン・パーソンズ・プロジェクト『アイ・イン・ザ・スカイ』

1982年に発表されたThe Alan Parsons Project(アラン・パーソンズ・プロジェクト)の6枚目のスタジオ・アルバム『Eye in the Sky』(アイ・イン・ザ・スカイ)はグループ最大のヒット作です。
『Eye in the Sky』(アイ・イン・ザ・スカイ)のコンセプト
本作のコンセプトは「信念体系(Belief Systems)」に根ざしており、宗教的信念、政治的信念、ギャンブルにおける運への信頼など、人間が何かを信じること全般をテーマにしています。アルバムタイトルやリード曲「Eye in the Sky」は、監視社会や全能の目(ドル紙幣のピラミッド上の目)といったイメージとも結びついており、現代社会における「見られている意識」や「監視」の象徴としても解釈されています[1][2][3][4]。
音楽性とサウンドの特徴
本作は、プログレッシブ・ロックの要素を持ちながらも、よりソフトでメロディアスなポップロック、アートロック、ソフトロックのテイストが強く、80年代の洗練されたサウンドが特徴です。アルバム冒頭のインストゥルメンタル「Sirius」は、スペイシーなギターとシンセサイザーによる印象的なイントロで、シカゴ・ブルズの入場曲として世界的に有名になりました。そのまま「Eye in the Sky」へとシームレスに繋がり、エリック・ウールフソンの柔らかくも哀愁を帯びたボーカルと美しいメロディが際立ちます[1][5][6]。
アルバム全体を通して、アナログ録音とデジタルミックスという当時としては先進的な手法が用いられ、奥行きのある豊かな音像が生み出されています。コーラスやオーケストラ、サックスなど多彩な楽器が巧みに配置され、どのパートも埋もれることなくクリアに響くミキシングは、エンジニアとして名高いアラン・パーソンズならではの技術です[1][5]。
代表曲と楽曲構成
- Sirius:インストゥルメンタルで、スポーツイベントの定番曲。
- Eye in the Sky:アルバム最大のヒット曲で、全米3位を記録。監視や信頼、裏切りをテーマにした歌詞が特徴[7][8]。
- Old and Wise:コリン・ブランストーンのボーカルによるバラードで、人生の終わりと知恵を静かに歌い上げる名曲。
- Mammagamma:シンセサイザーが印象的なインストゥルメンタル。
制作時のエピソード
アルバム制作は1981年後半から始まりました。アラン・パーソンズは、ビートルズ『Let it Be』やピンク・フロイド『The Dark Side of the Moon』のエンジニアとしての経験を活かし、徹底した音響設計とミックスにこだわりました。特に「Eye in the Sky」の着想は、ラスベガスのカジノで監視カメラ(Eye in the Sky)を見た体験から生まれたとされています。ウールフソンはこのテーマに強く惹かれ、監視社会や人間関係の信頼と裏切りを歌詞に落とし込みました[8][9][10]。
また、当時の最新鋭機材であるFairlight CMI(デジタルサンプラー)を導入し、アナログ録音からデジタルマスターへの直接ミックスという画期的な手法を採用。これにより、従来のロックアルバムにはない透明感と立体感のあるサウンドが実現しました[1][5]。
参加ミュージシャン
アラン・パーソンズ・プロジェクトは、パーソンズとウルフソンという2人の中心人物に加え、曲ごとに最適なボーカリストやミュージシャンを起用する流動的な形態を取っていました。
- アラン・パーソンズ(Alan Parsons):キーボード、フェアライトプログラミング
- エリック・ウルフソン(Eric Woolfson):キーボード、ボーカル
- クリス・レインボー(Chris Rainbow):ボーカル
- レニー・ザカテック(Lenny Zakatek):ボーカル
- エルマー・ガントリー(Elmer Gantry):ボーカル
- コリン・ブランストーン(Colin Blunstone):ボーカル
- デイヴィッド・パトン(David Paton):ベース、ボーカル
- イアン・ベアンソン(Ian Bairnson):アコースティックギター、エレキギター
- スチュアート・エリオット(Stuart Elliott):ドラム、パーカッション
- メル・コリンズ(Mel Collins):サックス
- アンドリュー・パウエル(Andrew Powell):オーケストラ/コーラス編曲・指揮
- サ・イングリッシュ・コラール (The English Chorale):コーラス
発表時の反響
『Eye in the Sky』は、アメリカでプラチナディスクを獲得し、全米アルバムチャート7位、シングル「Eye in the Sky」は全米3位、カナダやスペインで1位を記録するなど、世界的な商業的成功を収めました。アルバムのサウンドは批評家から「ソフトで滑らかなポップロック」として評価され、特にメロディの美しさや音響の豊かさが高く評価されました。一方で、一部批評家からは「コンセプト性がやや希薄」との指摘もありましたが、リスナーからは一貫して高い人気を誇ります[1][6][8][12]。
2019年には、35周年記念盤が「最優秀イマーシブ・オーディオ・アルバム」部門でグラミー賞を受賞し、現代においてもその音響技術と芸術性が再評価されています[1][5]。

ジャケットデザイン
ジャケットは、伝説的なデザイン集団、ヒプノシス(Hipgnosis)によるもので、金箔押しされた「ホルスの目」が大きく描かれています。これは「全能の目」「監視の象徴」としてアルバムのテーマと強くリンクしています。ヒプノシスはピンク・フロイドやレッド・ツェッペリンなど多くの名作アルバムのアートワークを手がけており、本作は彼らの晩年の仕事の一つです[1][3]。
特筆すべきこと
- 「Sirius」はスポーツイベントの定番曲として世界中で使われており、特に1990年代にNBAのシカゴ・ブルズの入場曲として使用されたことで有名です。
- 2017年には35周年記念ボックスセットが発売され、未発表音源やリミックス、Blu-rayによるハイレゾ音源などが収録されました。
- アラン・パーソンズとエリック・ウールフソンのコンビは「プロデューサー主導型バンド」の先駆けであり、ゲストボーカルや多彩なミュージシャンを起用することで、アルバムごとに異なる色彩を持たせています[1][14]。
『Eye in the Sky』は、80年代ロックの金字塔であり、洗練されたサウンドと普遍的なテーマ性で今なお多くのリスナーを魅了し続けています。
- https://en.wikipedia.org/wiki/Eye_in_the_Sky_(album)
- https://www.the-alan-parsons-project.com/eye-in-the-sky
- https://www.progarchives.com/album.asp?id=1096
- https://www.reddit.com/r/AlanParsonsProject/comments/1cc9m5i/eye_in_the_sky_album_interpretation_spoilers_if/
- https://immersiveaudioalbum.com/bringing-the-past-into-the-future-alan-parsons-2019-winner-of-best-immersive-audio-album/
- https://www.qobuz.com/us-en/album/eye-in-the-sky-the-alan-parsons-project/0886446379685
- https://en.wikipedia.org/wiki/Eye_in_the_Sky_(song)
- https://www.loudersound.com/features/top-of-the-progs-alan-parsons-project-eye-in-the-sky
- https://podcast24.dk/episoder/the-backstage-pass-the-story-behind-the-songs/the-alan-parsons-project-eye-in-the-sky-af9ai9LqFE
- https://uk-podcasts.co.uk/podcast/the-backstage-pass-1/the-alan-parsons-project-eye-in-the-sky
- https://www.roughtrade.com/en-de/artist/the-alan-parsons-project
- https://www.albumoftheyear.org/album/42145-the-alan-parsons-project-eye-in-the-sky/user-reviews/
- https://www.youtube.com/watch?v=TitH8JyFIp0
- https://ultimateclassicrock.com/alan-parsons-project-eye-in-the-sky/
- https://note.com/kikuchiyo_956/n/n48a551642315
- https://en.wikipedia.org/wiki/The_Alan_Parsons_Project
- https://www.youtube.com/watch?v=44Bf3_J140U
- https://www.setlist.fm/stats/songs/alan-parsons-33d614b5.html?songid=3bd70c90
- https://www.youtube.com/watch?v=xCBrVS0U3FE
- https://secondhandsongs.com/performance/52567/all



