U.K.『ナイト・アフター・ナイト』

U.K.のライブアルバム『Night After Night』(ナイト・アフター・ナイト)は、1979年5月末から6月初旬にかけて東京のなかのサンプラザホールと日本青年館で録音され、同年9月にリリースされました。
このアルバムは、オリジナルメンバーのギタリスト、アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)とドラマービル・ブルーフォード(Bill Bruford)が芸術的相違から脱退した後、エディ・ジョブソン(キーボード、エレクトリック・バイオリン)、ジョン・ウェットン(ベース、ボーカル)、テリー・ボジオ(ドラムス)によるトリオ編成で制作された初のライブ作品であり、スタジオアルバム『Danger Money』のツアー中に記録されました[1]。
『ナイト・アフター・ナイト』のコンセプトと音楽性
『Night After Night』のコンセプトは、U.K.の進化したサウンドをライブで証明することにでした。
特に注目すべきは、タイトル曲「Night After Night」と「As Long As You Want Me Here」の2曲がスタジオ録音なしの新曲として初収録された点です。
これらの楽曲は、プログレッシブ・ロックの複雑さを保ちつつ、AORやニューウェーブの要素を取り入れた、より直線的でポップな方向性を示しています。
これは、後にウェットンが結成するAsiaの音楽性への予兆とも解釈され、当時のYesの『Drama』と同様の音楽的潮流を反映している[3]。
サウンドの特徴
アルバムのサウンドは、ジョブソンのキーボードとバイオリンがホールズワースの不在を完全に埋め、むしろトリオの一体感を強化しています。
彼のシンセサイザーは荘厳で豊かな響きを持ち、バイオリンのソロは未来を予感させるような独特の音色を放っています。
ウェットンのベースは、スタジオ盤よりも攻撃的で存在感が強く、King Crimson時代のスタイルを彷彿とさせます。
ボジオのドラミングは、ブルーフォードの繊細さとは対照的に力強く、曲のエネルギーを支えています。
音響的には、一部のボーカルやコーラスはスタジオで補正された可能性があり、当時のライブ盤制作の慣習が反映されています[3]。
制作時のエピソード
このアルバムは、当初は日本限定リリースを目的としてポリドール・ジャパンの要請で録音されました。
ウェットンによると、「当時の日本では、来日するアーティストがライブアルバムを出すことが一種の義務だった」といっています。
しかし、完成度の高さから米国ポリドールもリリースを希望し、世界的に発売されることになりました。
また、1979年11月にUK版シングルとして、タイトル曲の編集版がB面にスタジオ録音の「When Will You Realize?」を収録してリリースされました[1]。
参加ミュージシャン
- エディ・ジョブソン(Eddie Jobson):キーボード、エレクトリック・ヴァイオリン、バック・ボーカル
- ジョン・ウェットン(John Wetton):ベース、リード・ボーカル
- テリー・ボジオ(Terry Bozzio):ドラム、バック・ボーカル
![U.K.『Night After Night』(ナイト・アフター・ナイト[ライヴ・イン・ジャパン]):ジャケットの見開き](https://otolog.net/wp-content/uploads/2025/10/UK_Night-After-Nigh_02-300x225.webp)
収録曲と特筆すべき点
Side 1
- ナイト・アフター・ナイト(Night After Night) - 5:21
- ランデブー 6:02(Rendezvous 6:02) - 5:17
- ナッシング・トゥ・ルーズ(Nothing to Lose) - 5:25
- アズ・ロング・アズ・ユー・ウォント・ミー・ヒア(As Long As You Want Me Here) - 5:00
Side 2
- アラスカ(Alaska) - 4:21
- 時空の中に(Time to Kill) - 4:17
- オウレスト・ヴィヴァーチェ(Presto Vivace) - 1:12
- 闇の住人(In the Dead of Night) - 6:22
- シーザース・パレス・ブルース(Caesar's Palace Blues) - 4:58
- 「Night After Night」「As Long As You Want Me Here」はスタジオ録音が存在しない新曲で、このライブ盤でしか聴けません[1][3]。
- 「Alaska」「In the Dead of Night」など、初期U.K.の代表曲もライブならではのアレンジやテンポで再現されています[3]。
- 拡張版では「Carrying No Cross」「Danger Money」など、より多くの楽曲が正規のセットリスト順で収録され、バンドのライブパフォーマンスの全貌が明らかになりました[1][9]。
![U.K.『Night After Night』(ナイト・アフター・ナイト[ライヴ・イン・ジャパン]):ジャケットの裏面](https://otolog.net/wp-content/uploads/2025/10/UK_Night-After-Nigh_03-300x225.webp)
発表時の反響と特筆すべき点
『Night After Night』は、トリオ編成のU.K.のライブパフォーマンスの高さを証明する作品として評価されました。
特に、ホールズワースの不在を感じさせないジョブソンのマルチ演奏が称賛されました。
2016年には『Ultimate Collector's Edition』の一部としてリマスターされ、未発表曲を含む96分の拡張版が収録されました。
バンド内ではジョブソンとウェットンの音楽性の違いが顕在化しつつあり、本作を最後にU.K.は解散。
ウェットンはAsiaへ、ジョブソンはジェスト・タル(Jethro Tull)などを経てソロ活動へ、ボジオはMissing Personsを結成します[3]。
このライブアルバムは1970年代のプログレッシブ・ロックのライブ・アルバムの中でも特に優れた作品として今も評価されています[3]。
Citations:
- https://en.wikipedia.org/wiki/Night_After_Night_(U.K._album)
- https://en.wikipedia.org/wiki/U.K._(band)
- https://pienemmatpurot.com/2024/09/16/review-u-k-night-after-night-1979/
- https://www.progarchives.com/album.asp?id=1362
- https://www.progarchives.com/album.asp?id=62194
- https://www.sputnikmusic.com/review/84968/U.K.-Night-After-Night/
- https://www.facebook.com/groups/1212533295490905/posts/8173117022765796/
- https://www.facebook.com/groups/648482968887104/posts/2188795804855805/
- https://www.hiresedition.com/review/progressive-rock/uk-night-after-night.html
- https://www.facebook.com/groups/progrockgroup/posts/10161244897678737/
- https://www.rockliquias.com/2022/02/uk-night-after-night-1979-eg-polydor.html
- https://jethrotull.com/the-attic/past-band-members-and-guests/eddie-jobson/
- http://esotereccentric.blogspot.com/2015/07/uk-night-after-night-1979-and-more.html
- http://rockcollector.blog31.fc2.com/blog-entry-2594.html
- https://www.youtube.com/watch?v=LdgG1KC-Y10
- https://www.facebook.com/groups/progrockgroup/posts/10162137272168737/
- https://www.allaboutjazz.com/uk-uk-danger-money-and-night-after-night-reissues-by-john-kelman



