キング・クリムゾン『クリムゾン・キングの宮殿』

キング・クリムゾン『クリムゾン・キングの宮殿』
キング・クリムゾン(King Crimson)『クリムゾン・キングの宮殿』(In The Court Of The Crimson King)

King Crimson(キング・クリムゾン)のデビューアルバム『In the Court of the Crimson King』(クリムゾン・キングの宮殿)は、プログレッシブロックの礎を築いた記念碑的作品として知られています。1969年10月10日にリリースされたこのアルバムは、ロック、ジャズ、クラシックを融合させた革新的なサウンドで音楽界に衝撃を与えました[2][4]。

コンセプトと音楽性

アルバムは表面上はファンタジーをテーマにしていますが、実際には反戦メッセージを含んでおり、当時のベトナム戦争などの政治的緊張を反映しています[4]。コンセプトについては明確な物語性があるわけではありません。しかし、アルバム全体に一貫した幻想的・黙示録的な雰囲気が漂い、戦争や人間の愚かさ、終末観といったテーマが詩的な表現で描かれています。特に「The Crimson King」は悪魔や運命の象徴とも解釈され、登場人物たちは人類の破滅を傍観するだけの存在として描写されるなど、アルバム全体に“反戦”や“運命への無力感”が通底しています[17]。

サウンドの特徴

このアルバムは、ロック、ジャズ、クラシック、シンフォニックな要素を融合させた、当時としては画期的なサウンドを持っています[11]。特に特徴的なのは以下の点です。

  • Mellotronの重厚な音色:イアン・マクドナルドが多重録音で作り上げたオーケストラのようなサウンドは、プログレッシブ・ロックの象徴となりました[11]。
  • 変拍子や複雑な構成:「21st Century Schizoid Man」などでは、ジャズ的な即興や変拍子が多用され、ロックの枠を超えた実験性が感じられます。
  • 静と動の対比:「Epitaph」や「Moonchild」では、叙情的でメランコリックなメロディと、激しいパートが交錯し、ドラマティックな展開を生み出しています[10]。
  • 詩的な歌詞:ピーター・シンフィールドの歌詞は、抽象的かつ象徴的で、アルバム全体の幻想的な世界観を支えています。

制作エピソード

当初、モーディー・ブルースのプロデューサーであるトニー・クラークと制作を始めましたが、バンドの求める音楽性と合わなかったため、自主制作に切り替えました[5]。録音は1969年7月21日から8月中旬にかけてロンドンのウェセックス・スタジオで行われ、特に「21st Century Schizoid Man」は1テイクで録音されたことで知られています[14]。また、アルバム発表直前の1969年7月には、ローリング・ストーンズのハイドパーク・コンサートの前座として25万人以上の観客の前で演奏し、大きな注目を集めたことも成功の一因となっています[11]。

参加ミュージシャン

  • ロバート・フリップ(Robert Fripp):ギター
  • グレッグ・レイク(Greg Lake):ベース、ボーカル
  • イアン・マクドナルド(Ian McDonald):メロトロン、フルート、サックス、キーボード
  • マイケル・ジャイルズ(Michael Giles):ドラムス、パーカッション
  • ピーター・シンフィールド(Pete Sinfield):作詞[8]

トラック・リスト

Side 1

  1. 21st Century Schizoid Man(including "Mirrors") - 21世紀のスキッツォイド・マン - 7:24
  2. I Talk To The Wind - 風に語りて - 6:04
  3. Epitaph(including "March for No Reason" and "Tomorrow and Tomorrow") - エピタフ(墓碑銘) - 8:49

Side 2

  • Moonchild(including "The Dream" and "The Illusion") - ムーンチャイルド - 12:13
  • The Court of the Crimson King(including "The Return of the Fire Witch" and "The Dance of the Puppets") - クリムゾン・キングの宮殿 - 9:26

発表時の反響

アルバムは発売直後から高い評価を受け、ジミ・ヘンドリックスが「世界最高のバンド」と絶賛したことでも知られています[2]。ピート・タウンゼント(The Who)は「不気味な傑作」と評しています[16]。その後も影響力は衰えず、『ローリング・ストーン』誌の「史上最高のプログレッシブロックアルバム50選」で2位にランクインしています[2]。

ジャケットデザイン

アルバムカバーは、バリー・ゴドバーによって描かれました。表面の叫ぶ顔は「21st Century Schizoid Man」を、内側の笑顔は「Crimson King」を表現しています[6][9]。このアートワークは、ゴドバーにとって唯一のアルバムカバーとなりました。彼は1970年に24歳で心臓発作で亡くなっています[6]。ゴドバーはピーター・シンフィールドの友人で、当時はコンピュータープログラマーとして働いていましたが、アルバムのデモを聴いて強いインスピレーションを受け、自身の顔を鏡で見ながら水彩で描き上げたと言われています[16]。

特筆すべき点

  1. プログレッシブロックの先駆けとなり、後続のバンドに多大な影響を与えました[11]。
  2. ブルースの影響を排除し、ジャズ、フォーク、クラシック音楽の要素を融合させた新しいサウンドを確立しました[1]。
  3. 「Moonchild」のような実験的な楽曲は、アンビエントやポストロックの先駆けとも言えます[10]。
  4. アルバム全体を通して、メロトロンの使用が特徴的で、後のプログレッシブロックバンドに大きな影響を与えました[10]。

『In the Court of the Crimson King』は、50年以上経った今でも高い評価を受け続けており、プログレッシブロックの金字塔として音楽史に刻まれています[11]。

Citations:
[1] https://pienemmatpurot.com/2023/06/14/review-king-crimson-in-the-court-of-the-crimson-king/
[2] https://monstershoprock.com/2024/12/06/the-making-of-in-the-court-of-the-crimson-king-by-king-crimson/
[3] https://musicaficionado.blog/2019/10/10/in-the-court-of-the-crimson-king-by-king-crimson/
[4] https://www.american.edu/library/news/king-crimson.cfm
[5] https://www.loudersound.com/features/king-crimson-in-the-court-of-the-crimson-king
[6] https://www.newdirectionsinmusic.com/barry-godber/
[7] https://mawrgorshin.com/2018/12/19/analysis-of-in-the-court-of-the-crimson-king/
[8] https://en.wikipedia.org/wiki/The_Court_of_the_Crimson_King
[9] https://first-draft.com/2013/07/25/album-cover-art-wednesday-in-the-court-of-the-crimson-king/
[10] https://rocknheavy.net/in-the-court-of-the-crimson-king-a-historical-analysis-0bbe3f59f78a?gi=ec40c0564c33
[11] https://en.wikipedia.org/wiki/In_the_Court_of_the_Crimson_King
[12] https://theprogressiveaspect.net/blog/2024/05/03/various-artists-reimagining-the-court-of-the-crimson-king/
[13] https://www.reddit.com/r/KingCrimson/comments/ili08w/what_is_the_court_of_the_crimson_king_exactly/
[14] https://www.dgmlive.com/news/51%20years%20old%20today%20In%20The%20Court%20Of%20King%20Crimson
[15] https://www.youtube.com/watch?v=jCMsC76khVE
[16] https://hypergallery.com/blogs/blog/barry-godber
[17] https://www.reddit.com/r/KingCrimson/comments/gthp3p/is_in_the_court_of_the_crimson_king_a_concept/

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