
Pink Floydの5枚目のスタジオアルバム『Atom Heart Mother』は、1970年10月2日にリリースされ、バンドの音楽的進化と実験精神を示す重要な作品となりました。
コンセプトと音楽性
『Atom Heart Mother』は、プログレッシブロックとシンフォニックロックの要素を融合させた野心的な作品です。タイトル曲「Atom Heart Mother」は23分44秒に及ぶ6部構成の組曲で、アルバムの1面全体を占めています[1][5]。この曲は、バンドメンバー全員とRon Geesinの共作で、オーケストラアレンジメントを取り入れた壮大な楽曲となっています[1]。
2面には、より個人的で内省的な楽曲が収録されており、バンドメンバーの多様な音楽性が表現されています[10]。
制作エピソード
アルバムの制作は、1970年3月から7月にかけてロンドンのEMIスタジオ(現Abbey Road Studios)で行われました[6]。タイトル曲の録音では、新しい8トラックの1インチテープとEMI TG12345トランジスタミキシングコンソールが使用されました[1]。
Ron Geesinは、Pink Floydがアメリカツアーに出かけている間、ロンドンの猛暑の中、地下室で半裸になってスコアを作曲したそうです[7]。
参加ミュージシャン
ピンク・フロイド
- ロジャー・ウォーターズ(Roger Waters) – bass guitar, acoustic guitar and vocals on "If", tape effects, tape collages
- デヴィッド・ギルモア(David Gilmour) – guitars, vocals, bass and drums on "Fat Old Sun"[71]
- リチャード・ライト(Richard Wright) – keyboards, vocals on "Summer '68"
- ニック・メイスン(Nick Mason) – drums, percussion, engineering on "Alan's Psychedelic Breakfast"
アルバムにはPink Floydのメンバーに加え、以下のミュージシャンが参加しています:
- Ron Geesin(オーケストラアレンジメント)
- John Alldis Choir(16人編成の合唱団)
- ブラスセクション
- Hafliði Hallgrímsson(チェロ)[7]
発表時の反響
『Atom Heart Mother』は、イギリスでバンド初の1位を獲得し、アメリカでも55位にランクインしてゴールドディスクを獲得しました[6]。しかし、批評家の評価は分かれ、大胆な実験性を称賛する声がある一方で、一貫性や芸術的価値に疑問を呈する意見もありました[10]。
ジャケットデザイン
アルバムカバーは、アートコレクティブHipgnosisによってデザインされました。表紙にはホルスタイン種の牛が牧草地に立っている写真が使用され、バンド名やアルバムタイトルは一切表記されていません[6]。これは、当時Pink Floydに付随していたサイケデリックなスペースロックのイメージから脱却し、音楽そのものに焦点を当てたいというバンドの意向を反映したものでした[6]。
特筆すべき点
- 『Atom Heart Mother』は、バンド外の人物(Ron Geesin)との共作クレジットが付いた初めてのPink Floydの楽曲となりました[5]。
- タイトル曲「Atom Heart Mother」は、Pink Floydの最長のスタジオ録音曲となっています[5]。
- アルバムのタイトルは、John Peelのラジオ番組録音中に『Evening Standard』紙の記事から偶然見つけられたものです[3]。
- スタンリー・キューブリック監督は、「Atom Heart Mother」を映画『時計じかけのオレンジ』に使用することを検討しましたが、最終的には実現しませんでした[10]。
- 近年、『Atom Heart Mother』の遺産は再評価され、トリビュートコンサートなどが行われています[10]。
『Atom Heart Mother』は、Pink Floydの音楽的成長と実験精神を示す重要な作品として、プログレッシブロックの発展に大きな影響を与えました。その大胆な試みと独特のサウンドは、今日でも多くの音楽ファンを魅了し続けています[10]。
アルバムレヴュー
今年は丑(ウシ)年ということで、今年の最初を飾るのはやはりピンク・フロイド(Pink Floyd)の『原子心母(Atom Heart Mother)』でしょう。
写真は高校生の頃に買ったレコードです。
最初にレコードに針を落としたときには、正直、ガックシと肩を落としました。
高校生とっては大金の、大枚2,500円もはたいたのに聞こえてきたのはトランペットやホルンのクラシック風のファンファーレです。
オレはロックのレコードを買ったつもりなのに「何じゃ、これは」という感じでした。
しかし、最初の一曲目を聴き進めていくと、ロックという様式? の中にクラシックのようなコーラスや馬の鳴き声やらオートバイが発進する音まで入った大作主義的な仰々しい構成、そして凝った録音に「ん~、これがプログレッシブロックというものか」などと妙に感心したものです。
実のところ、ロックというよりはクラシックの現代音楽というところに一番近いのかもしれません。
実際、オーケストラ・アレンジはメンバーのロジャー・ウォーターズのゴルフ仲間の現代音楽家がを行っています。
いずれにしても大作であることには間違いのないところです。
なにせA面には23分44秒の『原子心母』という1曲しか入っていません。
原題の『Atom Heart Mother』というタイトルは心臓にペースメーカーを埋め込んで、生きながらえている妊婦のことを書いた英国の新聞「ザ・タイムズ」紙の見出しから取られました。
ピンク・フロイドの楽曲は普段よく聴きますがこの『原子心母』に関しては数年に1回ぐらいしか聴きません。
彼らのアルバムの中でも非常に評価の高い名作といわれるアルバムなのは知ってますが、すべての人に薦められる作品でないことは確かです…。
しかしロックが好きななら、教養としてでも押さえていて欲しい作品です。
ちなみ邦題の『原子心母』は「Atom(原子) Heart(心) Mother(母)」という英語のタイトルをそのまま日本語に訳したもので洋楽アルバム邦題の名作といわれています。
トラックリスト
- 原子心母(Atom Heart Mother)
- 父の叫び(Father's Shout)
- ミルクたっぷりの乳房(Breast Milky)
- マザー・フォア(Mother Fore)
- むかつくばかりのこやし(Funky Dung)
- 喉に気をつけて(MindYour Throats Please)
- 再現 (Remergence)
- もしも(If)
- サマー'68(Summer '68)
- デブでよろよろの太陽(Fat Old Sun)
- アランのサイケデリック・ブレックファスト(Alan's Psychedelic Breakfast)
- ライズ・アンド・シャイン(Rise and Shine)
- サニー・サイド・アップ(Sunny Side Up)
- モーニング・グローリー(Morning Glory)
Citations:
[1] https://ontherecord.co/2024/07/02/pink-floyd-atom-heart-mother-white-hot-stamper/
[2] https://blog.musoscribe.com/index.php/2020/10/12/pink-floyds-atom-heart-mother-at-50/
[3] https://www.loudersound.com/features/pink-floyd-atom-heart-mother
[4] https://www.reddit.com/r/pinkfloyd/comments/orc6qr/an_analysis_of_the_atom_heart_mother_suite/
[5] https://en.wikipedia.org/wiki/Atom_Heart_Mother_(suite)
[6] https://en.wikipedia.org/wiki/Atom_Heart_Mother
[7] https://www.loudersound.com/features/the-tale-of-the-tortuous-creation-of-pink-floyds-atom-heart-mother
[8] https://www.neptunepinkfloyd.co.uk/pink-floyd-history-1970-atom-heart-mother
[9] https://www.progarchives.com/album.asp?id=1437
[10] https://www.vinyllegend.co.za/blogs/record-of-the-week/unveiling-the-legacy-of-pink-floyds-atom-heart-mother-a-journey-through-time