ドン・フェルダー『エアボーン』

『Airborne』(エアボーン)は、イーグルスのギタリストとして知られるDon Felder(ドン・フェルダー)が、バンドの活動休止期間中である1983年に発表した初のソロ・アルバムです[1][11]。
『Airborne』のコンセプト
イーグルスでの完璧主義的な制作現場から解放され、フェルダー自身が「自分のやりたい音楽を自由に追求したかった」と語っており、バンドの枠にとらわれない幅広い音楽性を目指した作品です[6]。アルバムタイトルやジャケットのロゴは、フェルダーの姓「Felder」とフェンダー社(Fender)のロゴの類似性を活かし、彼のギターへの愛着を象徴しています[1][11]。
音楽性・サウンドの特徴
ジャンルとしてはロックを基調としつつ、1980年代らしいシンセサイザーやキーボードの導入が目立つサウンドが特徴です[1][10]。フェルダーのギターはアルバム全体で前面に押し出され、彼らしいメロディアスなリードやスライドギターが随所に聴かれます[10]。一方で、イーグルス時代の流れを汲むウェストコースト・ロックの爽やかさや、カリフォルニアの太陽のような明るい心地よさも感じられます[2][10]。
アレンジ面では、80年代のトレンドを意識したキーボードやシンセサウンドが強調されており、バンドサウンドというよりはソロアーティストらしい自由な実験性も見られます。その一方で、よりシンプルなロックアレンジであればヒット性が高まったのでは、という指摘もあります[10]。
収録曲と制作エピソード
全8曲で構成され、ほとんどの楽曲をフェルダー自身が作曲しています。中でも「Never Surrender」はケニー・ロギンスとの共作であり、他にも「Night Owl」ではジョー・ヴィターレやジョージ“チョコレート”ペリーが共作に名を連ねています[1][11]。
制作時、フェルダーは「イーグルスのような厳格な制作体制から離れ、家族と過ごす時間を大切にしながら音楽制作に取り組んだ」と語っています。また、イーグルスのメンバーがそれぞれソロ活動を展開していた時期であり、フェルダーも自分の音楽的アイデアを自由に形にできる機会として本作を位置付けていました[6]。
主な参加ミュージシャン
『エアボーン』には、当時の一流セッション・ミュージシャンや著名アーティストが多数参加しています[1][4][11]。
- ドン・フェルダー(Don Felder):ヴォーカル、ギター、シンセサイザー、キーボード
- ネイザン・イースト(Nathan East):ベース
- ジョージ・"チョコレート"・ペリー(George "Chocolate" Perry):ベース
- ジョージ・ホーキンス(George Hawkins):ベース
- マイケル・マーフィー(Michael Murphy):キーボード
- ジョー・ヴィターレ(Joe Vitale):キーボード、ドラム、パーカッション
- ジェフ・ローバー(Jeff Lorber):キーボード
- アルビー・ガルーテン(Albhy Galuten):シンクラヴィア
- カルロス・ヴェガ(Carlos Vega)、ラス・カンケル(Russ Kunkel)、トリス・インボーデン(Tris Imboden):ドラム
- ティモシー・B・シュミット(Timothy B. Schmit):コーラス/イーグルスの元同僚
- ポーリーニョ・ダ・コスタ(Paulinho da Costa)、ジョー・ララ(Joe Lala):パーカッション
- ケニー・ロギンス(Kenny Loggins):共作・コーラス
- デイヴ・メイソン(Dave Mason):コーラス
この豪華な顔ぶれは、フェルダーの人脈の広さと信頼の厚さを物語っています。

発表時の反響
『エアボーン』はイーグルス解散後の注目作としてリリースされましたが、商業的な大ヒットには至りませんでした。しかし、ギタリストとしてのフェルダーの実力や、職人的な楽曲構成、洗練されたプロダクションは高く評価されました[1][10]。一方、当時の80年代的なサウンドやアレンジが「やや時代に流されている」との指摘もあり、もう少しシンプルなロック志向であればより広い支持を得られた可能性も指摘されています[10]。
特筆すべきポイント
- フェルダーらしいギターワーク:イーグルス時代の名曲「Hotel California」にも通じる、メロディアスかつテクニカルなギタープレイが全編で楽しめます[10]。
- 豪華なセッション陣:当時の西海岸音楽シーンを代表するミュージシャンが多数参加し、サウンドに厚みと多様性を加えています[1][11]。
- フェンダー愛の表現:ジャケットのロゴデザインにフェンダー社のロゴを模した遊び心を取り入れるなど、ギターへのこだわりが随所に見られます[1][11]。
- イーグルスとの違い:バンドという枠組みを離れ、より自由で実験的なアプローチが可能となった点がフェルダーにとって大きな意味を持った作品です[6]。
まとめ
『エアボーン』は、イーグルスのギタリストとしての枠を超え、ドン・フェルダー自身の音楽的探求心と80年代の時代性が融合した意欲作です。ギターファンやイーグルスのファンはもちろん、ウェストコースト・ロックや80年代ロックのサウンドが好きなリスナーにも再評価されるべきアルバムと言えるでしょう。
- https://en.wikipedia.org/wiki/Airborne_(Don_Felder_album)
- https://www.metaltalk.net/don-felder-revisits-five-decades-of-music-on-the-vault.php
- https://omny.fm/shows/bobbycast/471-don-felder
- https://tower.jp/item/4561519
- https://en.wikipedia.org/wiki/Don_Felder
- https://illinoisentertainer.com/2013/08/q-and-a-don-felder-eagles-guitarist/
- https://www.premierguitar.com/artists/interview-don-felder-airborne-again
- https://pennyblackmusic.co.uk/Home/Details?id=20543
- https://www.cbsnews.com/news/don-felder-former-eagles-guitarist-returns-with-first-new-solo-album-in-nearly-30-years/
- https://ameblo.jp/sgtbeatles/entry-12747614735.html
- https://www.sessiondays.com/2022/10/1983-don-felder-airborne/
- https://www.premierguitar.com/artists/interview-don-felder-airborne-again?page=2
- https://merurido.jp/item.php?ky=VSCD2135
- https://www.discogs.com/sell/release/568249
- https://www.youtube.com/watch?v=Yn4h4DBSLOs
- https://recordshopgg.com/2024/01/06/don-felder-airborne/
- https://www.discogs.com/ja/release/2926316-Don-Felder-Airborne
- https://eil.com/shop/moreinfo.asp?catalogid=441753&curr=SGD&from=GPUS
- https://www.soundandvision.com/content/don-felder-welcomes-us-high-resolution-hotel
- https://gaillardcenter.org/events/don-felder/
- https://www.donfelder.com/about
- https://www.last.fm/music/Don+Felder/+albums
- https://www.premierguitar.com/artists/interview-don-felder-airborne-again?page=4