ニコレット・ラーソン『天使のように』

Nicolette Larson(ニコレット・ラーソン)の4枚目のアルバム『All Dressed Up & No Place to Go(オール・ドレスト・アップ&ノー・プレイス・トゥ・ゴー)』(邦題:天使のように)は1982年にリリースされたアルバムです。
80年代ウェストコーストのポップ・ロック/AOR色に大きく舵を切り、彼女の柔らかなクリスタル・ヴォイスと幅広い音楽性が存分に味わえる、ファンの間で“カルト的名作”と称される1作です[1]。
『All Dressed Up & No Place to Go(オール・ドレスト・アップ&ノー・プレイス・トゥ・ゴー)』のコンセプトと制作背景
本作では、それまでプロデューサーとして関わってきたテッド・テンプルマン(Ted Templeman)はエグゼクティブ・プロデューサーとなり、プロデューサーとして現場を統制したのは、マルチプレイヤーで元恋人でもあったアンドリュー・ゴールド(Andrew Gold)です。
カバー曲と新曲が混在する選曲で、当時、ラーソンと真剣な関係にあったゴールドが、ポップ性と洗練されたサウンドで彼女の再浮上を狙ったプロジェクトです。
録音は1981年10月から1982年1月にロサンゼルスのSunset Soundで行われ、リラックスした空気と共に、多くの実力派ミュージシャンを招いて入念に仕上げられました。
ちなみに制作完了後、ラーソンとゴールドは破局しています[2]。
トラック・リスト
Side 1
- I'll Fly Away (Without You) - 4:02
- I Only Want to Be with You - 3:18
- Just Say I Love You - 4:04
- Nathan Jones - 3:07
- I Want You So Bad - 3:33
Side 2
- Two Trains - 4:14
- Love, Sweet, Love - 3:53
- Say You Will - 3:32
- Talk to Me - 3:14
- Still You Linger On - 2:54
収録曲とサウンドの特徴
全10曲のうち半数以上は外部作家によるカバーや提供曲で、ダスティ・スプリングフィールド(Dusty Springfield)の"I Only Want To Be With You"や、ローウェル・ジョージ(Lowell George)作"Two Trains"、レオン・ラッセル(Leon Russell)作"Say You Will"など、ポップ、ロック、カントリーAORを横断。
オープニングの"I’ll Fly Away (Without You)"はソウルフル&ロッキンな楽曲で、続く"I Only Want To Be With You"は60sガールポップの名曲を80年代風にアレンジ。
バラード"Just Say I Love You"のウェットなギター、"Nathan Jones"や"I Want You So Bad"のハイセンスなホーン&リフなど、全体にフックの多いAOR的なアレンジと、ラーソンの優しくも芯ある歌唱が溶け合うのが特徴です。
アンドリュー・ゴールドらしい洗練と一抹の寂寥感が全体に流れています[2]。
参加ミュージシャン
バンドにはリック・シュロッサー(Rick Shlosser):ドラム、スコット・チェンバーズ(Scott Chambers):ベース、フレッド・タケット(Fred Tackett):ギター、マーク・ジョーダン(Mark Jordan):エレピ、オルガン、アルノ・ルーカス(Arno Lucas):コンガ/パーカッション、ビル・ペイン(Billy Payne):シンセ、ジム・ホーン(Jim Horn):サックスなど多くのミュージシャンが参加し、ゴージャスなウェストコースト・サウンドを実現。
バックコーラスにはヴァレリー・カーター(Valerie Carter)、リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)、ウェンディ・ウォルドマン(Wendy Waldman)、マキシン・ウィラード(Maxine Willard)ら、ジャンルを超えた実力派が顔を揃えています。
ゴールド自身もギター、ピアノ、シンセ、パーカッションに多く参加し優れたアレンジ力を発揮しています[1]。
制作のエピソード
アンドリュー・ゴールドは後に「制作はとても楽しかった。素晴らしいミュージシャンが参加し、ニコレットにとって最高の作品の一つだと思うが、なぜか多くのファンには見逃された」と述懐しています。
また、当時のアルバムカバーは「おしゃれしたのに行くところがない」という自虐的なタイトルに対し、バスローブ一枚で自宅にたたずむラーソンというユーモラスな写真で、無邪気だが心に残るインパクトを与えました[1]。
発表時の反響と評価
1982年のリリース時、Billboard誌は「前作よりタイトなポップ/ロック。従来のリラックスした魅力もしっかり残し、ヴォーカルがより切実になっている」と好意的に評価。
Cash Box誌も「フォークロック好きが歓びそうなラブソング集」と評し、カバージャケットもラーソンのイノセントな魅力を象徴すると言及しています。
一方、アルバムのセールスはUSビルボード200で75位、オーストラリアで95位と商業的には伸び悩み、リードシングル"I Only Want To Be With You"もHot 100で53位に留まり、ワーナーでのラスト作品となりました[2]。
特筆すべき点・総評
本作は、80年代AOR~ウェストコースト・ポップの耽美性と、ラーソンの多才なヴォーカル・スタイルを結実させた完成度の高い1枚です。
結果的に大ヒットには至らなかったものの、繊細な楽曲の表現力や、ラスト曲"Still You Linger On"などにおける魂をこめた歌声は、後年再評価されています。
名作『Nicolette』(邦題:愛しのニコレット)の陰に隠れてはいますが、時代に翻弄されつつも“歌手ニコレット・ラーソン”の本質を感じさせる作品です[1]。
- https://en.wikipedia.org/wiki/All_Dressed_Up_and_No_Place_to_Go
- https://dereksmusicblog.com/2020/06/05/cult-classic-nicolette-larson-all-dressed-up-and-no-place-to-go/
- https://merurido.jp/item.php?ky=AMZN5017261213235
- https://takechas.com/?pid=117768930
- https://www.sessiondays.com/2022/04/1982-nicolette-larson-all-dressed-up-and-no-place-to-go/
- https://diskunion.net/rock/ct/detail/RY171228NL01
- https://www.imdb.com/title/tt0115259/episodes/?year=1997
- https://en.wikipedia-on-ipfs.org/wiki/All_Dressed_Up_and_No_Place_to_Go
- https://theseconddisc.com/2025/09/17/nicolette-larson-warner-bros-recordings/
- https://open.spotify.com/album/0pkeB7UDnVfE9HMQgsQjxk
- https://www.youtube.com/watch?v=sdkr_CbVlp0
- https://en.wikipedia.org/wiki/Radioland_(album)
- https://ameblo.jp/walbassmach2/entry-12573925420.html
- https://open.spotify.com/intl-ja/album/0pkeB7UDnVfE9HMQgsQjxk
- https://www.allmusic.com/album/all-dressed-up-no-place-to-go-mw0000265306
- https://www.youtube.com/watch?v=X9zRUpGNtDg
- https://www.sessiondays.com/2022/04/nicolette-larson/




