ラヴ・アンリミテッド『恋の雨音』

ラヴ・アンリミテッド『恋の雨音』
ラヴ・アンリミテッド(Love Unlimited)『恋の雨音』(Love Unlimited)

『Love Unlimited』(恋の雨音)は、アメリカの女性ソウル・トリオ、Love Unlimited(ラヴ・アンリミテッド)のデビュー・アルバムで、1972年にUni/MCA Recordsからリリースされました。

アルバムの概要とコンセプト

プロデュースはバリー・ホワイトが担当し、アレンジはホワイトとジーン・ペイジが手掛けています。アルバムの正式タイトルは『From a Girl's Point of View We Give to You... Love Unlimited』で、女性の視点から愛について語るというコンセプトが明確に打ち出されています[1]。

音楽性とサウンドの特徴

ラヴ・アンリミテッドのサウンドは、シンプルなソウル・グルーヴと豪華なストリングス・アレンジが特徴です。バリー・ホワイトは、当時のソウル・ミュージックでは珍しかった壮大なストリングス・セクションを大胆に導入し、ロマンティックで洗練された「カリフォルニア・ソウル」スタイルを確立しました[2]。このアプローチは、ディオンヌ・ワーウィックやフィフス・ディメンションなどの西海岸ソウルの流れを汲みつつ、フィル・スペクターの「ウォール・オブ・サウンド」やモータウンの影響も色濃く反映されています[2]。

アルバムの代表曲「Walkin' in the Rain With the One I Love」は、電話越しの男女の会話を取り入れた斬新な構成で、バリー・ホワイト自身も声で参加しています[1]。この曲は、ラヴ・ソングに現代的なドラマ性と親密さを加え、後のディスコやアーバン・ソウルの先駆けとなるサウンドを提示しました[2][6]。

制作時のエピソード

ラヴ・アンリミテッドは、グロディーン・ジェームズ(後のバリー・ホワイトの妻)、その妹リンダ・ジェームズ、従姉妹のダイアン・テイラーの3人で構成されています。プロとしての経験がなかった3人を、バリー・ホワイトが約1年かけてリハーサルし、グループ名も彼が考案しました[1]。アルバム制作時、ホワイトは彼女たちのために楽曲を書き下ろし、特に「Walkin' in the Rain With the One I Love」はグロディーンとの実際の会話から着想を得たとされています[1]。

また、アレンジャーのジーン・ペイジは、フィル・スペクターやルー・アドラーとも仕事をしていた名アレンジャーで、バリー・ホワイトとともにラヴ・アンリミテッド・サウンドの核となるストリングス・アレンジを構築しました[2]。

参加ミュージシャン

  • ヴォーカル:グロディーン・ジェームズ(Glodean James)、リンダ・ジェームズ(Linda James)、ダイアン・テイラー(Diane Taylor)
  • プロデューサー/作曲/アレンジ:バリー・ホワイト(Barry White)
  • アレンジ/指揮:ジーン・ペイジ(Gene Page)
  • スタジオ・ミュージシャンとして、後にLove Unlimited Orchestraのメンバーとなる実力派も参加していた可能性があります(例:レイ・パーカーJr.、ケニーG、ネイサン・イーストなど)[5]。
ラヴ・アンリミテッド(Love Unlimited)『恋の雨音』(Love Unlimited):ジャケットの見開き(その1)
ジャケットの見開き(その1)

発表時の反響と評価

アルバムからのシングル「Walkin' in the Rain With the One I Love」は、全米Billboard Hot 100で14位、R&Bチャートで6位、イギリスでも14位を記録し、ミリオンセラーとなりました[3][7]。RIAAからゴールドディスクも受賞しています[3]。この成功により、ラヴ・アンリミテッドはバリー・ホワイトのバックグループという位置づけを超え、独自の存在感を確立しました。

当時の批評では、シュープリームス風のコーラスとバリー・ホワイト流の豪華なオーケストレーションが高く評価されましたが、一部では「華やかだがやや単調」とする声もありました[7]。しかし、後年の評価では、70年代ソウル~ディスコの流れを作った重要作と見なされています[2][5]。

特筆すべきこと・後世への影響

  • バリー・ホワイトのプロデューサー/アレンジャーとしての才能が開花した記念碑的作品であり、Love Unlimited Orchestraやホワイト自身のソロ活動への布石となりました[2][4]。
  • ストリングス主体のラグジュアリーなソウル・サウンドは、のちのディスコやアーバン・コンテンポラリーの源流となり、ブラック・ミュージックの新たな方向性を示しました[2][6]。
  • ラヴ・アンリミテッドは、女性グループとして初めてアルバムを全米ポップ・アルバム・チャートTop5に送り込むなど、商業的にも女性R&Bグループの新たな地位を築きました[3]。

まとめ

『恋の雨音』は、バリー・ホワイトがプロデューサーとして本格的に名を上げ、ラグジュアリーなストリングス・ソウルという新ジャンルを切り開いた、1970年代初頭のソウル・ミュージック史における重要作です。女性の視点から愛を語るコンセプト、豪華なサウンド、ヒット曲の誕生、そしてバリー・ホワイトとLove Unlimited Orchestraの成功への道筋を示した点で、今なお高く評価されています[1][3][5][7]。

Citations:

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Love_Unlimited_(Love_Unlimited_album)
  2. https://magazine.waxpoetics.com/article/barry-white-big-love/
  3. https://en.wikipedia.org/wiki/Love_Unlimited
  4. https://www.udiscovermusic.com/stories/love-unlimited-orchestra-loves-theme-song/
  5. https://soulfinger.substack.com/p/barry-white-love-unlimited-orchestra
  6. https://www.stereogum.com/2042808/the-number-ones-the-love-unlimited-orchestras-loves-theme/columns/the-number-ones/
  7. https://www.bear-family.com/love-unlimited-the-uni-mca-and-20th-century-records-singles-1972-1975-2-lp-180g-vinyl.html
  8. https://www.discogs.com/artist/164269-Love-Unlimited
  9. https://www.funkmysoul.gr/love-unlimited-1972-from-a-girls-point-of-view-we-give-to-you-love-unlimited/
  10. https://theithacan.org/43717/life-culture/reviews/review-there-isnt-much-to-love-about-unlimited-love/
  11. https://www.bear-family.com/love-unlimited-the-uni-mca-and-20th-century-records-singles-1972-1975-2-lp-180g-vinyl.html
  12. https://www.discogs.com/release/12142092-Love-Unlimited-The-UNI-MCA-And-20th-Century-Records-Singles-1972-1975
  13. https://open.spotify.com/album/3fj088gyqcy1S7H9oAz29f
  14. https://www.vinylmeplease.com/blogs/artists/love-unlimited-vinyl
  15. https://jukeboxtimemachine.com/tag/love-unlimited/
  16. https://www.discogs.com/release/8855613-Love-Unlimited-Love-Unlimited
  17. https://www.discogs.com/release/1332538-Love-Unlimited-From-A-Girls-Point-Of-View-We-Give-To-You-Love-Unlimited
  18. https://www.allmusic.com/artist/love-unlimited-mn0000249908
  19. https://en.wikipedia.org/wiki/Love_and_Dancing
  20. https://thekatztapes.library.northeastern.edu/barry-white/

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