シンプリー・レッド『メン・アンド・ウィメン』

シンプリー・レッド『メン・アンド・ウィメン』
シンプリー・レッド(Simply Red)『メン・アンド・ウィメン』(Men and Women)

Simply Red(シンプリー・レッド)の2枚目のアルバム『Men and Women』(メン・アンド・ウィメン)は、1987年3月9日にリリースされました。このアルバムは、バンドの音楽性の進化と、フロントマン、ミック・ハックネルの作曲力の成長を示す重要な作品となりました。

『Men and Women』のコンセプトと制作背景

本作は、前作『Picture Book』の大ヒット(特に「Holding Back The Years」の全米No.1獲得)を受けて、バンドがスーパースターの座に上り詰めた直後に制作されました。フロントマンのミック・ハックネルは、前作以上に自身のソングライティング能力を発揮しようと意欲的に取り組みました[2][5]。

アルバムタイトルが示す通り、「男女の関係性」や「恋愛」をテーマに据えた内容が中心となっています。社会的・政治的なメッセージが色濃かったデビュー作に比べ、本作ではよりパーソナルで感情的なラブソングや人間関係の機微を描いた楽曲が多く収録されています[6]。

音楽性・サウンドの特徴

80年代後半のソフィスティ・ポップ(Sophisti-pop)の流行を取り入れ、洗練されたクリーンでスタイリッシュなサウンドが特徴です。ソウル、ファンク、ジャズ、レゲエなど多彩なジャンルを巧みに融合し、バンドとしての幅広い音楽性をアピールしています[2][5]。

  • ソウル&ファンク色:「The Right Thing」「Let Me Have It All」などは、ファンキーなリズムとホーンセクションが印象的で、Stax/Volt系の影響が色濃く表れています[5]。
  • ジャズの要素:コール・ポーターの名曲「Ev’ry Time We Say Goodbye」のカバーは、ミック・ハックネルがエラ・フィッツジェラルドのジャズアルバムに影響を受けたことがきっかけで収録されました[5]。
  • レゲエの実験:「Love Fire」ではレゲエのリズムを取り入れ、バンドの音楽的探求心を感じさせます[2][5]。
  • 80年代的なプロダクション:Thompson Twinsなどプロデュースで知られるアレックス・サドキン(Alex Sadkin)が、シンセサイザーを多用したリッチなサウンドを作り上げています[5]。

また、アナログ盤の音質にこだわるファンからは「透明感」「臨場感」「チュービー・マジック」と呼ばれる温かみのある中域の豊かさが高く評価されています[5]。

参加ミュージシャンと制作エピソード

  • ミック・ハックネル(Mick Hucknall):リードボーカル、バッキングボーカル
  • フリッツ・マッキンタイア(Fritz McIntyre):キーボード、バッキングボーカル
  • ティム・ケレット(Tim Kellett):キーボード、トランペット、フリューゲルホルン、パーカッション
  • シルヴァン・リチャードソン(Sylvan Richardson):ギター
  • トニー・バウワーズ(Tony Bowers):ベース、パーカッション
  • クリス・ジョイス(Chris Joyce):ドラムス、パーカッション
  • ゲスト/共作者
    • モータウンの伝説的ソングライター、ラモント・ドジャーと共作した「Infidelity」「Suffer」は、ハックネルが憧れの存在とLAでピアノを囲んで制作したという特別な体験が語られています[5]。
    • 「Shine」は元々ダイアナ・ロスのために書かれた曲で、ハックネルのソングライターとしての成長がうかがえます[5]。

制作中は、前作の成功によるプレッシャーや、ハックネルがバンドの中心的なソングライターとなったことによる内部の軋轢もあったとされています。ハックネル自身、「Men and Womenは最も制作が難しかったアルバム」と後年語り、一時は脱退も考えたほどバンド内の政治的な緊張が高まっていたと述懐しています[5]。

発表時の反響と評価

  • チャート成績:イギリスのアルバムチャートで2位を記録し、世界的に好セールスを記録しました[4]。
  • シングルヒット:「The Right Thing」はUK11位、US27位をマークし、セクシャルな歌詞が物議を醸しシンガポールでは発売禁止となるなど、話題性もありました[5]。「Ev’ry Time We Say Goodbye」もヒットし、バンドの幅広い音楽性が評価されました[4]。
  • 批評家の評価:ロサンゼルス・タイムズ紙は「60年代ソウルの息吹に80年代の新鮮さを加えた」と評し、ミック・ハックネルの個性的な歌声とバンドの自信に満ちた演奏を高く評価しました[3]。

特筆すべきトピック

  • バンドのイメージチェンジ:本作から、ミック・ハックネルはボウラーハットやカラフルなスーツを身にまとい、よりスタイリッシュな装いに変化。音楽性だけでなくビジュアル面でも進化を遂げました[6]。
  • ライブ活動:本作を引っ提げて世界ツアーを敢行し、1988年にはサンパウロで8万人規模のライブも成功させ、グローバルな人気を確立しました[5]。
  • 後の展開への布石:本作の多様な音楽的アプローチは、次作『A New Flame』やその後のバンドのさらなる飛躍につながる重要な転機となりました[5]。

まとめ

『Men and Women』は、Simply Redが80年代後半の音楽シーンで独自の存在感を確立したアルバムです。ソウル、ファンク、ジャズ、レゲエなどの要素を洗練された80年代的サウンドでまとめ上げ、ミック・ハックネルのソングライターとしての成長とバンドの音楽的多様性が際立っています。制作時の困難を乗り越えつつも、世界的な成功を収めた本作は、彼らのキャリアにおいて重要な位置を占めています[2][3][5][6]。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Men_and_Women_(album)
  2. http://thisisdig-com-clone.nds.acquia-psi.com/feature/men-and-women-simply-red-album/
  3. https://www.latimes.com/archives/la-xpm-1987-03-15-ca-10500-story.html
  4. https://hellorayo.co.uk/magic/entertainment/music/simply-red-music-career
  5. https://ontherecord.co/2024/12/28/simply-red-men-and-women/
  6. https://en.wikipedia.org/wiki/Simply_Red
  7. https://vinylmusicmadness.co.uk/product/simply-red-men-and-women-lp-nr-mint-a4b2-soul-pop/
  8. https://www.simplyred.com/archive/men-and-women/
  9. https://wmg.jp/simply-red/discography/2881/
  10. https://takechas.com/?pid=112406107
  11. https://www.mameshibarecords.com/items/62606410
  12. https://www.youtube.com/shorts/wdRm5Y7s2dI
  13. https://www.discogs.com/master/25993-Simply-Red-Men-And-Women
  14. https://www.allmusic.com/album/men-and-women-mw0000650775
  15. https://www.discogs.com/release/1894064-Simply-Red-Men-And-Women
  16. https://www.discogs.com/release/421571-Simply-Red-Men-And-Women
  17. https://www.albumoftheyear.org/album/24456-simply-red-men-and-women/user-reviews/
  18. https://rateyourmusic.com/release/album/simply-red/men-and-women/
  19. https://www.nika.si/Izvajalci/SIMPLY_RED/
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