テリー・キャリアー『ホワット・カラー・イズ・ラヴ』

テリー・キャリアー『ホワット・カラー・イズ・ラヴ』
テリー・キャリアー(Terry Callier)『ホワット・カラー・イズ・ラヴ』(What Color Is Love)

1972年にリリースされた『What Color Is Love』は、シカゴ出身のシンガーソングライター、テリー・キャリアーがCadet Recordsから発表した3部作の中核をなすアルバムであり、彼のキャリアの頂点とも評される作品です[2][8]。

『What Color Is Love』のコンセプト

本作のコンセプトは、愛の多様な側面や人間の感情、社会的現実へのまなざしを、詩的かつ哲学的な視点から描き出すことにあります。キャリアーは、愛の本質や社会の矛盾、個人の内面を深く掘り下げ、ストレートで率直なリリックとともに、普遍的な自己表現とポジティブなメッセージを追求しています[1][6]。キャリアー自身の人生経験や、60年代から続く社会変動の影響も色濃く反映されており、内省的かつスピリチュアルな世界観が全編を貫いています[1][8]。

音楽性・サウンドの特徴

本作の最大の特徴は、ソウル、フォーク、ジャズ、ファンク、クラシックなど多様なジャンルを横断し、壮大かつ繊細なアレンジでまとめ上げられている点です[2][7]。プロデューサーのチャールズ・ステップニーは、ロータリー・コネクションやミニー・リパートン、アース・ウィンド&ファイアーなどで知られる名アレンジャーであり、本作でもオーケストラルなストリングスやドラマチックな展開を駆使して、キャリアーの内省的かつ情熱的なボーカルを最大限に引き立てています[1][7][8]。

  • オープニングの「Dancing Girl」は9分に及ぶ壮大な組曲で、ストリートの現実や人間の孤独を描きながら、ジャズやフォーク、ビバップの要素が交錯します[1][6][9]。
  • タイトル曲「What Color Is Love」は、シンプルで美しいバラード。ステップニーのストリングスとハープ、控えめなパーカッションが、キャリアーの温かく包容力のある声を優雅に支えます[1][9]。
  • 「You Goin’ Miss Your Candyman」は、ファンキーなベースラインと高揚感あふれる展開が特徴で、キャリアーのディープなボーカルが情熱と脆さを同時に表現しています[1][6][9]。
  • 「Ho Tsing Mee (A Song of the Sun)」は、ベトナム戦争を背景にした反戦歌であり、社会への疑問や神への問いかけが込められたスピリチュアルな一曲です[1][7][8]。

全体を通して、キャリアーの声は温かく、誠実で、時に激しく、時に包み込むような優しさを持ち、聴く者の心に直接訴えかけます[1][9]。

制作時のエピソード

制作はシカゴのRCAスタジオで行われ、キャリアーとステップニーの創造的なコラボレーションが結実した作品です[2][8]。ステップニーは朝にバッハやベートーヴェンを流しながら録音に臨むことを好み、その影響がアルバムの透明感や緻密なアレンジに表れています[8]。

また、当初はより多くの曲が録音されていましたが、レーベルの買収にともなう方針転換で7曲のみがアルバムに収録されることとなりました。しかし、その7曲が凝縮された芸術的な完成度を生み出しています[3]。

キャリアー自身も、初めてストリングスのパートをスタジオで聴いたとき「別世界に運ばれるような感覚だった」と語っています[8]。

参加ミュージシャン

アルバムにはシカゴの一流ミュージシャンが多数参加しています[2]。

  • テリー・キャリアー(Terry Callier):ギター、ボーカル
  • チャールズ・ステップニー(Charles Stepney):ピアノ、エレクトリックピアノ、指揮、アレンジ、プロデュース
  • ルイス・サターフィールド(Louis Satterfield):ベース
  • フィル・アップチャーチ(Phil Upchurch):ギター
  • ドナルド・マイリック(Donald Myrick):アルトサックス、フルート
  • モリス・ジェニングス(Morris Jennings)、ドナルド・シモンズ(Donald Simmons):ドラムス
  • バッキングボーカル:キティ・ヘイウッド(Kitty Haywood)、シャーリー・ウォールズ(Shirley Wahls)、ヴィヴィアン・ハレル(Vivian Harrell)
  • その他、ストリングス、ホーンセクション、パーカッションなど多数[2][7]

発表時の反響

リリース当初は商業的な成功には恵まれませんでしたが、批評家からは高い評価を受け、後年に再評価が進みまし[2][5]。AllMusicは「音楽的万華鏡」と称し、キャリアーの幅広い影響と経験が融合した傑作と絶賛しています。また、BBCのCraig Charles Funk and Soul Showでは「史上最高のファンクアルバム40選」にも選出されました[2]。

近年では、「You Goin’ Miss Your Candyman」が映画『最強のふたり』(Intouchables)で使用されたことなどから新たなリスナーを獲得し、名盤としての地位を確立しています[7]。

特筆すべきこと

  • 本作は、ソウル、ジャズ、フォーク、クラシックなどジャンルの垣根を超えたサウンドで、同時代の他のアルバムとは一線を画しています[7][8]。
  • キャリアーの誠実で包容力のある歌声と、ステップニーの壮麗なアレンジが奇跡的な融合を果たしており、今日でも「完璧なアルバム」として語り継がれています[4][7]。
  • 社会的なテーマ(戦争、貧困、愛の本質)と個人的な感情表現が高いレベルで共存している点も、他に類を見ない魅力です[1][6][8]。

まとめ

『What Color Is Love』は、テリー・キャリアーとチャールズ・ステップニーの創造力が結実した、ジャンルを超えた芸術作品です。愛と社会への深い洞察、壮大なアレンジ、そしてキャリアーの魂のこもった歌声が、時代を超えて多くのリスナーの心を打ち続けています。

  1. https://albumism.com/features/terry-callier-what-color-is-love-album-anniversary
  2. https://en.wikipedia.org/wiki/What_Color_Is_Love
  3. https://insheepsclothinghifi.com/album/terry-callier-what-color-is-love/
  4. https://www.reddit.com/r/vinyl/comments/wgdup4/terry_callier_what_color_is_love_a_genuinely/
  5. https://en.wikipedia.org/wiki/Terry_Callier
  6. https://nicksvinylpicks.wordpress.com/2019/09/13/terry-callier-what-color-is-love/
  7. https://www.funkmysoul.gr/terry-callier-1973-what-color-is-love/
  8. https://magazine.waxpoetics.com/rediscovery/terry-callier-what-color-is-love/
  9. https://dereksmusicblog.com/2011/09/05/terry-callier-what-color-is-love/
  10. https://soundsoftheuniverse.com/sjr/product/terry-callier-what-color-is-love-1973
  11. https://www.musiconvinyl.com/products/what-color-is-love-hq
  12. https://www.groovenutrecords.net/products/detail/4120
  13. https://store.ververecords.com/products/terry-callier-what-color-is-love-lp
  14. https://www.youtube.com/watch?v=ODBO_qbq4tM
  15. https://www.onemickjones.com/d/31700-terry-callier-what-color-is-love
  16. https://www.allmusic.com/album/what-color-is-love-mw0000334361
  17. https://en.debaser.it/terry-callier/what-color-is-love/review
  18. https://musicboard.app/topgunmaber7k/review/album/what-color-is-love/terry-callier/
  19. https://rateyourmusic.com/release/album/terry-callier/what-color-is-love/

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