シャーデー『プロミス』

シャーデー『プロミス』
シャーデー(Sade)『プロミス』(Promise)

Sade(シャーデー)の2枚目のアルバム『Promise』(プロミス)は、1985年11月に発表された作品で、デビューアルバム『Diamond Life』の成功を受けて制作されました。

『Promise』(プロミス)のコンセプト

タイトルは、シャーデー・アデュの父親が癌からの回復を願って送った手紙の中の「希望の約束(promise of hope)」に由来しています[1]。このアルバムは、前作『Diamond Life』の成功を受けて、バンドが自らのクリエイティブなビジョンをより自由に追求できるようになった時期に制作されました[6]。

音楽性とサウンドの特徴

『Promise』のサウンドは、前作のソウル・ジャズ・ポップのテクスチャーを自然に発展させたもので、愛と喪失をテーマにした楽曲が多くを占めます[8]。ナイトクラブ・ジャズ、スムース・ソウル、ファンク、ポップ、ソフトロック、ニューウェーブなど多様なジャンルの影響を受けつつも、全体的には落ち着いたライブ感のある演奏と、洗練されたアレンジが特徴です[4][7]。

特に注目すべきは、サウンドの透明感と奥行き、そして「Tubey Magic」とも称される温かみのある中域の質感です。Sadeのヴォーカルは、しばしばミックスの中で控えめに配置され、息遣いまで感じられるほど繊細に録音されています。リズムセクションはタイトで、ベースとパーカッションが楽曲をしっかりと支え、全体に立体的な空間を生み出しています[2]。

技術面では、エレクトロニック・ドラムパッドやサンプリング技術の導入、YAMAHA DX7などのデジタルシンセサイザーの積極的な活用が見られます。例えば「Is It A Crime?」では明るく響くシンセ音が斬新に使われ、バンドの新しいサウンドを印象づけました[10]。

制作時のエピソード

レコーディングは1985年2月から8月にかけて行われ、主にロンドンのPower Plant Studiosで進められました。一部はフランス・プロヴァンスのStudio Miravalでも録音されています[1]。アルバムの多くはライブ録音に近い手法で制作され、特に「Is It a Crime?」は全員が同じ部屋で一発録りされたことで知られています[6]。

制作中にはユニークなエピソードも多く、例えば「The Sweetest Taboo」では、リズムボックスやパーカッション、ワイングラスや灰皿を叩く音、ペリエのボトルを吹く音など、さまざまな“変わり種”のサウンドが取り入れられました。また、サックス奏者スチュワート・マシューマンの愛用していたSelmer Mk VIが事故で壊れ、代わりに日本製YANAGISAWAを使用したという逸話もあります[3]。

参加ミュージシャン

Sadeメンバー

  • シャーデー・アデュ(Sade Adu):ヴォーカル
  • スチュワート・マシューマン(Stuart Matthewman):ギター、サックス
  • アンドリュー・ヘイル(Andrew Hale):キーボード
  • ポール・スペンサー・デンマン(Paul Spencer Denman):ベース

ゲスト・ミュージシャン

  • デイブ・アーリー(Dave Early):ドラムス、パーカッション
  • マーティン・ディッチャム(Martin Ditcham):パーカッション
  • テリー・ベイリー(Terry Bailey):トランペット
  • ピート・ビーチル(Pete Beachill):トロンボーン
  • ジェイク・ジャカス(Jake Jacas):ボーカル(tracks 8, 11)
  • カルロス・ボーネル(Carlos Bonell):ギター(track 9)
  • ニック・イングマン(Nick Ingman):ストリングスアレンジ(tracks 9, 10)

プロデューサーはロビン・ミラー(Robin Millar、tracks 1–10)とベン・ローガン(Ben Rogan、tracks 4, 8, 11)、エンジニアはマイク・ペラ(Mike Pela)が中心となり、バンド自身も共同プロデュースに深く関わりました[1]。

発表時の反響

『Promise』はイギリスとアメリカの両方でアルバムチャート1位を獲得し、シャーデーにとって初の全米No.1アルバムとなりました。アメリカでは400万枚以上を売り上げ、4xプラチナ認定を受けています[1][5][9]。また、1986年のグラミー賞で「Best New Artist」を受賞し、国際的な評価を確立しました[8][9]。

批評家の評価は分かれましたが、AllMusicやPitchforkなどは「クールでレイドバックした歌唱」「豊かなムード」「ソウルフルで洗練された作品」と高く評価しています[5]。一方で、当時の一部批評家は「カクテル・ジャズ」「感情表現が控えめすぎる」といった指摘もありましたが、現在ではその控えめで洗練されたスタイルこそがSadeの個性として再評価されています[8][10]。

特筆すべきこと

  • シャーデーはバンドとしての一体感が強く、全員が作曲やアレンジに深く関わっています[7]。
  • アルバム収録曲「The Sweetest Taboo」「Is It a Crime?」「Never as Good as the First Time」はいずれも大ヒットし、今なお代表曲として愛されています[9]。
  • 当時としては先進的だったサンプリングやデジタルシンセの導入、ライブ感のある録音手法が、時代を超えて評価されています[10]。
  • 『Promise』はネオ・ソウルや90年代以降のR&Bに大きな影響を与えたとされ、Anita Bakerなど後続アーティストにも多大なインスピレーションを与えました[4]。

まとめ

『Promise』は、シャーデーというバンドの成熟と進化を示す作品であり、愛や人生の機微を静かに、しかし力強く描写するその音楽性は、今なお多くのリスナーに深い感動を与え続けています。控えめながらも豊かな表現力、洗練されたサウンド、そして時代を超えた普遍性が、このアルバムを名盤たらしめているのです[1][8][10]。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Promise_(Sade_album)
  2. https://ontherecord.co/2021/09/20/sade-promise-white-hot-stamper/
  3. https://www.muzines.co.uk/articles/a-promise-made/12716
  4. https://www.reddit.com/r/rnb/comments/17sdsmy/album_of_the_week_promise/
  5. https://www.wikiwand.com/en/articles/Promise_(Sade_album)
  6. https://number1albums.com/promise-sade-february-15-1986/
  7. https://insheepsclothinghifi.com/album/sade-promise/
  8. https://albumism.com/features/sade-promise-turns-35-anniversary-retrospective
  9. https://www.sade.com/music/promise
  10. https://dcsaudio.com/edit/revisiting-sade-s-1985-album-promise
  11. http://www.rootdownrecords.jp/used-vinyl/soul/sade-promise-2.html
  12. http://www.mryosuke.com/archives/1523383.html
  13. https://rep.club/products/promise-sade
  14. https://eastzono.seesaa.net/article/125793118.html
  15. https://optimisticunderground.com/2016/08/08/sade-promise/
  16. https://www.reddit.com/r/popheads/comments/1afj0pr/my_comprehensive_review_of_music_legend_sade_i/
  17. https://www.nytimes.com/1985/11/27/arts/the-pop-life-sade-s-2d-album-a-refined-fusion.html
  18. https://www.discogs.com/release/5106791-Sade-Promise
  19. https://silenciamusicstore.net/?pid=138712602
  20. https://business.walmart.com/ip/Sade-Promise-R-B-Soul-Vinyl/5815090093
  21. https://oresuki.dreamlog.jp/archives/74268499.html
  22. https://en.wikipedia.org/wiki/Promise_Tour
  23. https://en.wikipedia.org/wiki/The_Ultimate_Collection_(Sade_album)
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