アヴェレイジ・ホワイト・バンド『アヴェレイジ・ホワイト・バンド』

Average White Band(アヴェレイジ・ホワイト・バンド)の『アヴェレイジ・ホワイト・バンド』(AWB)は、スコットランド出身の彼らが当時のソウル/ファンクの最前線に正面から飛び込み、白人バンドという外見上の先入観を演奏の説得力で軽々と越えてみせたアルバムです。
結果としてこれは、単なる“英国のファンク・アルバム”ではなく、1974年の大衆性と黒人音楽への敬意が高い精度で結びついた作品として受け止められました 。
コンセプトと立ち位置
本作はバンドの2作目で、Atlantic移籍後の最初のアルバムです。
70年代の多くの英国バンドが過去の黒人音楽をロック寄りに解釈していたのに対し、AWBは同時代のソウル/ファンクへ直接接近し、商業的成功にもつなげました。
つまりこの作品の核にあるのは、「黒人音楽を外側から借りる」のではなく、「その現場のグルーヴに参加する」という姿勢だったと言えます 。
音楽性とサウンド
サウンドの要は、切れ味のよいリズム隊、タイトなホーン、そして過不足のないアレンジです。
レビューでは、本作が「breeziest, greasiest funk statements」と評され、アリフ・マーディン(Arif Mardin)のプロデュースのもとで、滑らかさと土臭さが同居するケルティック・ソウル(Celtic soul)として仕上がったとされています。
特に「Pick Up the Pieces」は、J.B.’s系統の太いリフとホーン主導の推進力で、彼らの代表曲であると同時に、アルバム全体の顔にもなっています。
また、この盤の面白さは、攻撃的なファンクだけで押し切らない点にもあります。
「Got the Love」や「Nothing You Can Do」には、よりメロウで都会的な温度があり、アルバムの中に緩急を生みます。
この“硬さ”と“柔らかさ”の共存が、AWBを単なる踊れる作品以上のものにしています。
制作時の背景
バンドはもともとイギリスで活動し、1973年にはエリック・クラプトンの復帰公演の前座を務めました。
その後、初期作『Show Your Hand』は商業的に振るいませんでしたが、マネージャーのブルース・マッカスキル(Bruce McCaskill)が彼らを米国へ連れて行き、Atlanticとの契約につなげたことで流れが変わりました。
『AWB』は、そうした移動と再出発の末に生まれた、いわば“アメリカで勝負するための最初の本命作”だったわけです。
制作面で大きかったのは、名プロデューサーのアリフ・マーディンの参加です。
彼は楽曲の骨格を壊さずに、ホーンやリズムの輪郭を見事に整理し、ラジオでもクラブでも映えるバランスに整えました。
生演奏の熱量を残しながら、音像はかなり洗練されており、そのバランスが本作の強みになっています。
参加ミュージシャン
初期編成としては、アラン・ゴリー、マルコム(モリー)・ダンカン、オニー・マッキンタイア、ロジャー・ボール、ロビー・マッキントッシュらが中核にいて、途中でハミッシュ・スチュアートが加わりました。
とくにダンカンとボールのホーン隊は、曲に独特の押し出しと色彩を与える重要な存在です。
ソウルやファンクの「ノリ」を、単なる模倣ではなくバンド・アンサンブルとして成立させている点に、彼らの実力があります。
アヴェレイジ・ホワイト・バンド
- アラン・ゴリー(Alan Gorrie):リードボーカル、バックコーラス、ベース、ギター
- ハミッシュ・スチュアート(Hamish Stuart):リードボーカル、バックコーラス、リードギター、ベース
- ロジャー・ボール(Roger Ball):キーボード、アルトサックス、バリトンサックス
- マルコム(モリー)・ダンカン(Malcolm "Molly" Duncan):テナーサックス
- オニー・マッキンタイア(Onnie McIntyre):バックボーカル、ギター
- ロビー・マッキントッシュ(Robbie McIntosh):ドラム、パーカッション
ゲスト・ミュージシャン
- ラルフ・マクドナルド(Ralph MacDonald):コンガ、パーカッション
- マイケル・ブレッカー(Michael Brecker):テナーサックス
- ランディ・ブレッカー(Randy Brecker):トランペット
- マーヴィン・スタム(Marvin Stamm):トランペット
- メル・デイビス(Mel Davis):トランペット
- グレン・フェリス(Glenn Ferris):トロンボーン
- ケン・ビシェル(Ken Biche):メロトロン
トラック・リスト
Side 1
- ユー・ガット・イット(You Got It) - 3:38
- ガット・ザ・ラヴ(Got the Love) - 3:52
- ピック・アップ・ザ・ピーセズ(Pick Up the Pieces) - 3:58
- パーソン・トゥ・パーソン(Person to Person) - 3:38
- ワーク・トゥ・ドゥ(Work to Do) - 4:21
Side 2
- ナッシング・ユー・キャン・ドゥ(Nothing You Can Do) - 4:06
- ジャスト・ワナ・ラヴ・ユー・トゥナイト(Just Wanna Love You Tonight) - 3:57
- キーピン・イット・トゥ・マイセルフ(Keepin' It to Myself) - 3:52
- アイ・ジャスト・キャント・ギヴ・ユー・アップ(I Just Can't Give You Up) - 3:24
- ゼアズ・オールウェイズ・サムワン・ウェイティング(There's Always Someone Waiting) - 5:38
反響と成功
本作は米国で大きな成功を収め、Billboardのポップ・アルバム・チャートとブラック・アルバム・チャートの両方で首位を獲得しました。
シングル「Pick Up the Pieces」も大ヒットし、R&Bチャートで1位、Hot 100でも首位に達したと紹介されています。
白人のスコットランド人バンドが、ソウル/ファンクの本場アメリカでこれだけ受け入れられたこと自体が、当時としてはかなり驚きでした。

特筆点
『AWB』の特筆点は、まず“白人バンドが黒人音楽を演る”という話題性を、見せ物に終わらせなかったことです。
演奏の本気度が高く、しかも楽曲が強いので、聴き手は出自よりもグルーヴの説得力に引き込まれます。
さらに「Pick Up the Pieces」が象徴するように、インスト曲がポップ・ヒットになり得ることを改めて示したのも重要でした。
もう一つ見逃せないのは、このアルバムが後年まで“サンプリングされるバンド”としてのAWB像の原点になったことです。
現在でも彼らはソウル、R&B、ジャズ・ファンクの重要バンドとして語られ、影響力の大きさが繰り返し指摘されています。
『AWB』は、70年代ファンクの名盤であると同時に、ジャンルの境界を軽やかに越えた実演記録として残っています。
Citations:
[1] https://music.apple.com/us/album/awb/300967684
[2] https://jbonamassa.com/average-white-band-soul-with-a-splash-of-funk/
[3] https://www.bbc.co.uk/music/reviews/mdbd/
[4] https://www.youtube.com/watch?v=73-omA18bVc
[5] https://en.wikipedia.org/wiki/AWB_(album)


